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逆噴射小説大賞2019感想戦その終
前提、すなわち位置づけ そんなわけで逆噴射小説大賞2019の自作感想戦の総括編でございます。逆噴射小説大賞2019とは何か?2019年10月にnote上で開催された800字小説の冒頭を書いて賞品のコロナビールを奪い合う、文章の銃撃線です。自作感想戦の総括編とは何か?私が逆噴射小説大賞に投稿した5作+没作20作をどんなことを考えて書いてたか、結果としてどんな感じになったかのまとめです。ちなみに、個々
もっとみる逆噴射小説大賞2019感想戦その4
逆噴射小説大賞の19~25本目のライナーノーツでございます。(1~6本目はこちら、7~12本目はこちら、13本目~18本目はこちら)。わーい!応募期間全日作品投稿達成!これで途中参戦したため全日投稿できず悔しくて死んだ昨年の私も浮かばれるというものです。今後の動きとしては、感想戦その終として総括記事をあげるかもしれません、あげないかもしれません。あ、本戦投稿作品はどれもnoteにあげた時点から本
もっとみる魔人清志郎大いに湯欲む
段々を一つ上る度に、落とした指の痛みが増し、人の領域から一歩外れる。何段上ればそこはお山か。気づいたときはもう遅い。 祖母の歌で聞いた通り、あちらとこちらを区切る境界線は不明確で、ゆえに誰でも踏み越えられる。超えたとわかるのは、こちらを値踏みする者たちの目の数がいずれも二つではないと気づいた時だ。
「あんたの腐れた指なんて何本あっても足りゃしない」
「……責任はとります」
「湿気た鉄砲玉に何が
夕暮れ爆弾はおそろしい
顔面をすりおろされた女の横で、弟はペットボトルに小便をしていた。
「竹郎にいちゃん、おわったんだけどさ、このひと誰だったの」
「『ふひひほひはひ』」
「なにそれ」
「知るかよ。ヤクの打ちすぎで呂律がアレだったんだと」
ふうんと弟は首をかしげ、指についた小便を舐めた。
「梅郎の頭に包丁叩き込んだのが俺の人生で一番の成功だよ」と親父は言う。癇癪持ちで頭が悪い。作るラーメンはドブみたいな味がし
ホテル203号、恐怖症
「お前が一番怖いものは何だ」
質問は右横から。焼けた声。俺を囲み腹に靴先をねじ込んだレンゲとかいう名前のヤクザ。頭部に衝撃。殴られたのだ、と遅れて知覚する。
「もう一度聞くぞ。五秒以内。右腿の肉、いくからな」
「レンゲさん、ガムテープ」
ああそうか、とレンゲは呟き、直後、唇に痛みが走った。
「……雀蜂です」
数時間ぶりに吸う新鮮な空気にむせこみながら私は答える。
「子供の頃、刺さ
ミルクランチ家の女たち
願えば音より早く走り、信じれば空だって飛んで見せる。魔女ってそういうものなのよ。もういない妹の言葉を思い出しながら、私はフィゼリ通りの上空を跳んでいた。目標は跳ね回るカカシ。パン婆さんのところの商品だ。起き上がったのは今朝。屋根から屋根へ跳んで逃げ、洗濯物をひっくり返し、通りすがりのカラスを驚かした。
「こっちだよ!」
叫んだのは母だ。カカシが慌てて跳ねる。隙。私は全身を縮め駅の屋根を蹴っ
リョコウバト殺すべし
渡り鳥の群れが連れてきたものは、糞の山と疫病と、二十日経っても明けない夜だった。何万何億羽分の鳴き声と羽ばたきに、この島に暮らす人間の耳はあっという間に馬鹿になり、皆、怒鳴り声を上げて喋るようになった。奴らの羽根に陽光を遮られ、あらゆる農作物がやせ細った。死骸と糞のスープになった海には腐った魚があばたのように浮かんだ。しかし飢えることはなかった。空は肉で埋まっている。
最初に死んだのはミヨ婆
極楽直通軌道エレベータの殺人
慈悲に重量制限を設けるなクソッタレ。釈迦の野郎を罵り、神田の頭蓋骨を凹ませる。ヤクでラリって集団下校に突っ込み事故死。生前の刑は当然死刑、こっちの刑は針山・人呑・釜茹でのフルセット五百年。おありがたい御仏の慈悲とやらがどういう決まりで亡者を選んでいるのかは知らないが、こんなクズを極楽に連れてゆく必要がどこにある。そりゃあ俺だって強姦殺人かまして死んだクズだ。だが、神田のクソよりはマシだし、何より
もっとみる逆噴射小説大賞2019感想戦その3
逆噴射小説大賞の13~18本目のライナーノーツでございます。(1~6本目はこちら、7~12本目はこちら)。21日現在ちょうど書きだめのストックが尽き、ただし構想は投稿期間最終日分まで完成しているという状況。なので、5本目の投稿作は残る10作の中から1本選ぶことになりますね。構想時点で既にある程度決めているのですが、書いてみたら微妙になったり、想像以上におもしろくなったりするので色々読めません。殺
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