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面白さへの憧れ

「お笑い番組を見るのが好き」と言うと、付き合いの短い人には「え!意外!」と言われる。昔からそうだった。私は真面目そうとよく言われたし、実際に大真面目だし、普段冗談も言わない。

大真面目なのに失敗が多い、ということで、学生時代の友達は私を面白がってくれることもあった。でも、それは私が面白いわけではなく、私の中の面白さを見つけられる友達が面白いのだ。

だから、私は面白い人をとても尊敬している。

中学生くらいのときに、「サムイ!」という言葉が流行った。ダウンタウンの影響だろうか。誰かが冗談を言うと、なんでもかんでも「サムイ!」と言う。私はこれが気に入らなくて、「サムイ撲滅運動」をして、この言葉にいつも難癖をつけていた。

誰に頼まれたわけでもないのに、面白いことを言って場を盛り上げようとしてくれた人に、「サムイ」とは何だ。しかも、何にも考えずに後から「サムイ!」と言った人の方に笑いが起こる。何の努力もせずに、人の考えた冗談をくさして、賞賛されるとは、なんたる理不尽。

「じゃあ、つまらない冗談のあとに、何て言えばいいの」。私の持論に、友達が質問した。私は考え…「それを上回るつまらない冗談を言って、一緒に自滅する」と答えた。当然、友達には「それは地獄」。と言って却下された。

その後、ダウンタウンが、「サムイ」に飽きたのか、「クサイ!」という突っ込みを言っていたときが、短い期間だが、あった。私はこれは大変だ、もっとひどい言葉が流行るぞ、と構えたが、幸いなことに、この言葉は流行らなかった。

まあ、テレビで芸人さん同士がやっている分にはいいのだ。そうではなく、こちとら素人だ。素人が、ない知恵をしぼって冗談を言っているのだから、もうちょっと周りにも愛があってもよくないか。

面白いとか面白くないとかの前に、面白いことを言おうとする、その姿勢に、私は感謝したいのだと思う。

お笑い番組が好き、というと、テレビを見ながらゲラゲラと笑っているイメージがあるのだろうか。私は、たいして笑わずにテレビを見ている。もちろん、ちょっとニヤニヤしたり、思わず吹き出すこともある。でも、どちらかというと、ものすごく気の利いた面白い発言やネタに、「うわー!」と圧倒されて感心して、感動するのが好きだ。

自分を圧倒的に上回る天才を見て、いいもの見たー!と思う感じ。本当に、世の中にはすごい人がたくさんいるものだ。次から次へと現れる「お笑い芸人」の存在に、ただただ感心している。

ダウンタウンの大ファンみたいになってしまうので、本当のファンに申し訳ないが、まだもう少し書きたい。

松っちゃんが、若者同士の喧嘩が行き過ぎて、殺人にまで至った事件について、「これは探偵ナイトスクープに依頼したらよかったんですよ」とコメントしたことがあった。このとき、松っちゃんはまだナイトスクープの局長ではなかったが、私もずっとナイトスクープのファンだったので、ものすごく納得がいった。

日常で、ものすごく行き詰まって、もうこれは解決のしようがない!と思った時、一つ笑いが入ることで、サアッと全てがどうでもよくなるようなことが、本当にあるのだ。

実際に、ナイトスクープでは、とんでもなく深刻な相談が来ることがあって、番組では、それをとても馬鹿馬鹿しい方法で解決しようとする。

私にその武器があったら、どんなにいいか!

育児ブログなどで、人気があるのは、その手のものが多い。大変な状況を笑いに変える。どんな惨状も、笑ってしまうことで深刻さを失う。私もそういうものを読むのが大好きなのだが、私にはとても書けない。笑いに変える知恵と技術がない。

そう思うと、我が家はツッコミ不在のコントグループという感じがする。当然だが、こどもは3人毎日ボケまくる。夫はかなりピントがずれているし、私は毎日泣いているだけ。

誰か!この状況を何かにうまく例えて!つっこんで!

残念ながら、家庭という閉ざされた空間に、突然「面白い人」は乱入してこない。だから、自力で笑うしかないのだけれど。

一番上のいっちゃんは、私の影響があるのかないのか、お笑い番組を見るのが好きだ。賞レースなどは、2人で録画して楽しみにしていて、誰が良かったかなど、感想を言い合ったりする。

今のところ、笑いに前向きなのは、私といっちゃんしかいない。レベルはとても低いので、テレビで流行っているフレーズを、丁度いい場面で真似するぐらいのことしか出来ないが、これから研鑽していきたいと思っている。いや、研鑽していきたい、とか言っているところがもうツッコミどころなのだろうけど、もう生真面目で生真面目で、自分でもどうしようもないのだ。

最近2人の間で流行っているのは、NON STYLEの「◯◯やってよ」「断らぬ〜!」というやりとり。「ミコに牛乳のおかわりあげてくれる?」と頼むと、いっちゃんが「断らぬ〜」と言ってやってくれる。私は面白さよりも感謝が上回って「えらいねえ」と言ってしまうのだが、この前、いっちゃんに「『断らぬ〜』って言うと、おかあさんにいつも褒められるんだけど、私は笑ってほしい」と真顔で言われてしまった。まだまだ研鑽が足りない。

今のところ、家族全員でスベり続けている現状だが、うちには、ニンタとミコという未知数の存在も控えている。年齢ゆえに、今はボケに徹している幼児2人が、切れ味鋭いツッコミに進化してくれることを、願ってやまない。

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