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大河ドラマとVFX(武)

 そこは絶対に、作り手も考えているだろうし、積極的にやらなければならない。

 にも関わらず、あまり注目されていなさそうなモノ――VFXではないかと思うのです。

大河ドラマに欠かせないVFX

 大河ドラマに興味がないと言いつつ、実は大河とVFXについては講演会を聞いてしまったことがあります。

 まずは『風林火山』。オープニングは武田家らしく、騎兵が走ってゆきます。騎兵運用の話はとりあえず忘れてください。問題は、あの騎兵はクローン状態だということ。要するに、実際には一頭しか走らせていないものを、複数コピー&ペーストしているとのこと。
 船や騎兵は、そういうことをするといろいろ節約ができます。

 そして近年、VFX面において出色の出来である『八重の桜』です。これはかなり気合いを入れておりました。帆船、アメリカの街並み、鶴ヶ城の屋根瓦、砲撃、崩れる城……随所においてVFXを使っています。NHKでも、VFXメイキング映像を公開していました。

 乱戦背景に映る兵士は、モーションキャプチャを使ったものもあります。モーションキャプチャで取り入れた動きにCGを貼り付けることで、いくらでも兵士を増やせます。幕末の戦闘の場合、銃器を使うこともあり、霞んだエフェクトが使いやすいのです。VFXさえあれば幕末ものの戦闘シーンはバッチリだ!

 実際、かなり映像ストックもできたのでしょう。NHKの歴史番組では、『八重の桜』のストック映像をよく使っていることがわかります。あの作品は、そういう意味でも優等生でした。

 『八重の桜』は、合成もうまい。
 ブルーバックを使い、VFX合成をすることで、屋内の場面でも奥行きを出していました。予算も削減できるし、これで大河の未来も明るい……と思っていたのですが。

 2015年と2018年では、幕末なのにVFX技術が後退していた挙句、素直に使えばよいであろう『八重の桜』ストックを使っていないように見えたのは何だったのでしょう? 衣装やエキストラの動きも無茶苦茶だったので、何か異常なことがあったのでしょうけれども。

ロケより金がかからないVFX

 ここでキッパリと言っておきます。
「やっぱり本格的な映像は、ロケだよな」
「シージー? なんかファミコンみたいなのだろ。そういうのはやめてほしいんだよな」

 誰かこういうすっとぼけたことおっしゃっておられる方、大河班なり、その上層部におりませんか?

 本格的な映像はロケだ! それは『独眼竜政宗』か、あるいは往年の東映あたりのイメージで語っておられるのでしょうか。日本にはもうそんな金はありません。かつては『戦国自衛隊』で、合戦とヘリというすさまじい映像を展開できましたが。そんな時代ではありません。

 馬も、エキストラも、甲冑も足りないんですよ。無理を言わないでいただきたい。ロケ地選定ひとつにしたって、季節感や外来種が茂っていないのか、電線や鉄塔が映らないか、チェックがありますし。
 実はもう、海外だろうと合戦シーンはVFXありきで動いています。そのほうが効率的ですし、今はもう実写と見分けがつきません。

 CG? ファミコン? あるいはプレステ? 20年前のイメージで止まっているとか? かつて、CGといえばこれみよがしにわかるものを使いました。天を飛んでいく馬とか。水が馬の形になって走り出すとか。

 今はむしろ、パッと見てわからないように使います。そういう時代ですから。ちなみに『真田丸』のオープニングは、わかりやすいCGでした。それでも実写だと思っていた方は少なくない数いたそうです。

これからの大河、時代劇とVFX

 2020年の『麒麟がくる』では、かなりこなれてきました。VFXを使っていても、そうはっきりとは認識できていない可能性はありますね。きっちりと認識できたのは、桶狭間での今川義元が討たれる時のワイヤーアクションと瞳孔に映る人影でしょう。

 『柳生一族の陰謀』、それに『十三人の刺客』リメイク。NHKは、時代劇を復活させ、1970年代以前の要素まで取り入れたいのだと思います。ゆえに、重々しく、派手ではなく詩的な殺陣も使っている。武器を振り回しながら、感情をぶつけ合い、運命を象徴させるような立ち回りが圧倒的に美しい。斎藤道三にせよ、今川義元にせよ、足利義輝にせよ、死の間際までその人らしさを演出する意図を感じたものです。

 この調子で、本能寺まで駆け抜けて欲しい。そう願いたい今年の大河です。意図的に、革新的な出来を目指していると思える『麒麟がくる』。もう大河ブランドだけで数字が取れる時代ではありません。

 それでも日本人は、技術継承として時代劇を作らねば。そういう使命感があると思えます。殺陣も、VFXも、さらなる進歩を期待しています。

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