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青天家康というエコーチェンバー計測装置

誰かに一番好きな大河の家康は誰かって聞かれたら、戦国じゃなくて幕末明治の青天家康って答えちゃえ!

 こういうツイートを見かけて、ため息をついたものでした。ファン同士では楽しそうに盛り上がるかもしれないけど、ファン以外がみたらむしろ不気味なのでは?
 テスラ缶自作界隈を観察しているような気持ちと重なって、ゾッとしてしまったものでした。

追記:『河瀬直美が見つめた東京五輪』

 大河最終回放映び、『河瀬直美が見つめた東京五輪』というNHK番組内において、五輪反対デモ動員に金が出ているという旨のことが放送されたそうです。悪質な扇動をすることに躊躇がない放送局だとまた証明されました。

 大河ドラマ『いだてん』、朝の連続テレビ小説『エール』はオリンピックムード盛り上げ番組でした・いろいろ腑に落ちませんか?

データに仁はない

 そして視聴率データ解析をみると、私にとっては予想通りの結果がありました。

『青天を衝け』視聴率半減の真相~大河で見たいのは“偉人伝”でなく“人間ドラマ”~(鈴木祐司) https://news.yahoo.co.jp/byline/suzukiyuji/20211227-00274608
制作陣の誤算は北大路欣也扮する徳川家康による解説コーナー。ここで多くの人が視聴をやめていた。SNSではこの演出を面白がる声が多かったが、サイレントマジョリティは必ずしも評価していなかったのである。

 そうだろうなと。
 だいたいそもそも、そんなに北大路さんの家康が好きなら、もっと『江 姫たちの戦国』に優しくしましょう、なんなら再評価しましょうよ! 私はごめんですけど。

 あのコーナーは、序盤こそ家康が複雑な幕末情勢を国際関係を含めて解説していました。士農工商は実は存在しなかったとか、最新の歴史研究を踏まえたことを解説するときもあった。
 しかし、だんだんとそれがおかしくなっていきます。

SNSの盛り上がりを信じてはいけない

 劇中に家康が開設した方がよさそうな箇所があっても、そうしない。タブレットをわざとらしく手にしていたり、オンライン会議の分割のように画面が割れたり。そうしたギミックで遊び呆けるだけで、本編には全く関わりがなくなってゆきました。
 ただただ、SNSでバズらせることを狙い、そのツイートを引っ張ったコタツ記事を書かせるだけ。そんな装置になっただけであったのです。
 それでもSNSではファン(だけ)が盛り上がってはいたのですが……それに引っかかってそういうネットニュースもあったものですが。

「青天を衝け」が“タブレットを持つ徳川家康”で伝えたかったもの | オトナンサー https://otonanswer.jp/post/104334/
 このアイデアを思いついたのは脚本を手掛けた大森美香さん。12月10日放送の「あさイチ」(同)では、難しいと言われる幕末モノを分かりやすくするための工夫だったと明かしました。

 つまり、視聴者とドラマを結びつけるような存在を探すうち、「幕府を始めた人が幕府を終わらせる話をしてくれたら、スッと届くんじゃないかな」と考えたそうです。

 なお、この家康はタブレットを眺めながら登場したりもしました。これは演出側のアイデアだったようで、大森さんも「あれは私もビックリしました」とのこと。400年以上も前の英雄が令和のアイテムを持つ姿は歴史を身近に感じさせました。

 届いてないどころか、大勢の視聴者が脱落していたんだなぁ。なぜ、データ解析をしなかったのか? SNSだのなんだのではなく、数字と向き合っていれば、あんなしょうもないコーナーは終わりにできただろうに。持て余していましたよね。

 ものすごく悪趣味だと思いますし、歴史に興味がない人ならではの発想だ。幕府を始めた人が、あまりに不甲斐なく、日本史上屈指の無責任、最低最悪の遁走をした慶喜を褒めまくる。そういう外道行為を「スッと届く」と言い切れるあたりがちょっと意味不明ですね。
 たとえば崇禎帝の生涯を語る洪武帝のドラマなんて、想像しただけで吐き気がしますが……。

 そもそもがですね。
 家康が渋沢栄一、徳川斉昭、慶喜を誉めて見守る時点でわけがわかりません。
 渋沢栄一は討幕は当然だと言いふらいていた尊王攘夷派。保身のために平岡円四郎に拾われて一橋家に入っただけ。斉昭は「あいつのせいで討幕に繋がった」と幕臣がこぼす政治犯。
 慶喜に至っては、馬印を残して妾連れ軍艦逃亡した恥晒し。命惜しさに幕臣や奥羽越列藩同盟を捨てて無血開城したひとでなし。

 こんな不出来極まりない連中を、なぜ家康がうれしそうにかばうんでしょうね。
 あの悪趣味極まりないうえに、『江 姫たちの戦国』家康、『花燃ゆ』のそうせい侯と同じ顔をしたアレを“是”とするのはなぜなのでしょうか?

 タブレット演出云々よりも、そんなことより旗を逆さまに持たないよう気配りできなかったと言いたい。タブレットは逆さまに持ってもいいけど、国旗はそうじゃないんですよ。

NHK大河「青天を衝け」、英露など3か国の国旗を上下逆さまに放送…考証担当者への確認怠る : エンタメ・文化 : ニュース : 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/culture/20211113-OYT1T50162/
 NHKは13日、大河ドラマ「青天を 衝つ け」の7日放送の第34回で、オランダとロシア、イギリスの国旗を上下逆さまにして放送したとして、番組の公式サイトなどで謝罪した。同局によると、国旗考証の担当者への確認を怠っており、その担当者からの指摘で判明した。同局は「映像を修正するとともに、視聴者の皆さま、関係者の皆さまにお詫び申し上げます」とのコメントを出した。

 何を伝えたかったかより、なぜ数字が下落したのか考えた方がよかったんでしょう。軍師ならそうするだろうに。こんなの、『信長の野望』だったら数ターンで滅亡する勢力のような行動パターンだ。歴史好きならそう思いませんかね?

大本営発表? フェイクニュース? 需要に対する供給です

 こういう記事もなあ。編集部が「成功した前提でお願いします!」と依頼したなら、まあしょうがない。こういうことには呼び名がありましたね。
「大本営発表」。
 それだと流石に時代がかっているか。アレだ、そう。アレ。
「フェイクニュース!」

 ちなみに同じライターさんは昨年こんなことを書いていたっけ。

『麒麟がくる』門脇麦の「駒」が不要と言われてしまう理由 出演女優たちの「明と暗」 https://dot.asahi.com/dot/2021011600007.html
 これが信長を夫に持つ帰蝶ならまだわかるが、駒は医師に仕える薬作りの町娘にすぎない。まして序盤では、門脇いわく「(光秀に)絶賛片思い中」という乙女だった。それが終盤では将軍の愛人のような立場になったりして、そのぶん、主人公との距離も遠ざかることに。おかげで、そのヒロイン性にブレが生じたのである。

 駒は町娘でも、義昭の愛人でもなく、明由来の医学を修めた名医のもとで修行を積んだ名医です。それをこう誤認されたところで、何をか言わんや。駒は序盤から最終盤まで、人の命を救うことをめざしていた仁ある医者なのに。
 そういうキャリアある女性が大嫌いな読者がいて、需要があるからこういう誤認記事も出てくるんでしょうね。ほんとうに日本って、キャリアを積む女性が嫌いで嫌いで嫌いで仕方ないんですね。

 さて、『麒麟がくる』から『青天を衝け』に話を戻しまして。

NHK大河「青天を衝け」最終回 栄一の激走締め 徳川家康「いやぁ~寂しい限りだ」SNSでも惜しむ声(スポーツ報知)https://news.yahoo.co.jp/articles/35111e0e8ff4499831c7cf3c58aa6f6eaf1b318e

 この記事は、家康につられると色々と見落とす。そんな人間の心理が凝縮されていて必見です。

徳川幕府が結んだ安政の不平等条約については知らんぷり。文句なしに主要キャストで、番組躍進の立役者だった。

 徳川幕府が結んだ時点で、実はそこまで条件は悪くありません。若き日の渋沢栄一と気が合いそうな、尊王攘夷にイカれたテロリストどもが外国人殺傷を繰り返し、そのたびに条件を悪くされていってどんどん不平等になったんですね。幕末史をそれなりに学べばわかりますが。筆者はそうではなく印象論で語ってしまうのでこうなると。

 でも、もうそれも終わりです。

 いくら屁理屈をこねようが、家康が数字を落とす疫病神だった。
 つまり、青天家康を無理矢理ほめることって、こう言うのと同じでしょう。

「あのマスクでブロッコリースプラウトを栽培しました!」
「あのマスクを産着にしました」
「あのマスクを世界に一枚だけのものとしてナンチャラカンチャラ……」
「テスラ缶を正規で買うなんてどうかと思う。そこはメルカリで買ってこそのテスラ缶!」
「いや、そこはDIYでテスラ缶!」
「もういっそ缶がなくてもテスラ缶!」
「テスラ缶アクセ作っちゃいました〜」

 そんな盛り上がり方では?
 そんなしょうもない理屈だろうが、仲間内が気持ちよくなってしまえば、理屈は後付けでついてくる。ライターに「あの青天家康を褒める記事をお願いします」と発注かければいいだけのことですので。

この家康については重大なターニングポイントになるのではないかという気がしています。
 SNSでいくら盛り上がっていても、数字には反映されない。むしろSNSばかりを狙っていると、サイレントマジョリティが離れてしまう。
 SNSのノイジーマイノリティを狙うか? サイレントマジョリティを狙うか?

 前者を選択し、せっせとコタツ記事を作った『青天を衝け』ですが。成功したとは言えないうえに、胡散臭さがつきまとっています。
 思えばNHKは、せっせとネットを舞台にした工作をしてきたとは思えるのです。
 2011年『平清盛』ではハッシュタグ「盛絵」を神社に奉納し、ファンダムは熱気があるとアピールをした。
 2019年『いだてん』でも、「最低だけど最高じゃんねー」とアピールした。
 そして2021年、「SNSの声」は当てにならないどころか、胡散臭いと証明された。

 そもそも論として、NHKがそんなに綺麗な組織とも思っておりませんので。全部が駄目とは言い切れないし、内部暗闘もありそうですけど。
 とりあえず、2015、2018、2019、2021大河は題材からしておかしいと思いますけどね。

岸田よ、ただで済むと思うな…孤立する「安倍晋三」の最後の闘いがはじまった(現代ビジネス)
#Yahooニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/9d7d1b3565ec09273953cabce8ab57fdee923f83
 合間を縫って、麻生氏への日参にも余念がない。12月初旬には「隠し球」を同伴していたことが、党内で話題となった。

 「懇意のNHK記者・岩田明子さんです。岩田さんはこのところ頻繁に安倍事務所を訪れていて、麻生さんの事務所にも二人連れで出入りしていた。何か番組をやらせるのか、それとも岩田さん本人を選挙に出すのか」(同前)

2020年代の情報弱者にならないためには

 かつてはテレビ頼りの親たちを「情報弱者w」と嘲笑っていた世代も、歳をとりました。インターネットの使い方もどんどん研究が進んでゆきます。当初あった自由な言動発信の場であるどころか、それこそフェイクニュースでバンバンと洗脳できると証明されつつあります。
 かつては「情報強者w」のツールであったソーシャルメディアは、どこかあやういものになりはてた。スマホを放せ。耽溺するな。そうさんざん言われるようになった。
 2020年代の情報弱者とは、スマホを握りしめてぽちぽちする層のことかもしれない。
 そう暴いてくれた青天家康には感謝です!

 『花燃ゆ』と『西郷どん』をぶっ叩いておいて、『青天を衝け』を「『八重の桜』といい、佐幕派大河は当たりだね!」なんて言われたら、それこそ「おんつぁげすがよ!」コースですから。
 ファンもいる大河を貶すなってことなら、『花燃ゆ』と『西郷どん』叩いてたのはどうなりますか?
 徳川慶喜を会津が好きかと思っているんだとすれば、幕末史のことをもう一度考え直してください。会津藩出身者は慶喜に冷淡です。経緯を考えれば当然です。会津藩や新選組ファンは、黙っていても『青天を衝け』に怒っていても何ら不思議はありませんので。

 さて、嫌味はこのへんにして。どうすればエコーチェンバーにはまらないか? 自衛手段はあります。

「ネットの声」
「***が***なワケ

 こういう見出しの記事には騙されないこと。

 ハッシュタグを利用しないこと。

 スマホを触る時間を減らすこと。
 
 紙の書籍を読むこと。

 ファンダムで遊ぶこともほどほどにしておくこと。

 ネットステマの費用対効果を踏まえると、『青天を衝け』は失敗したとみなした方がよさそう。この原資も受信料だと思うと腹が立つばかりですが、それはさておき。
 今後、コタツ記事の発注も減る可能性は考えられます。作品評価も、5年後10年後まで踏まえることが大事でしょう。
 キャストなり出演者のキャリアがどうなるか。そこも大事。長期的にみて成功であったかどうか。それは実際のところ、まだこれから先を見据えねばならないのです。

 ま、家康は大失敗であり、再評価はないでしょう。ネットの声を鵜呑みにして失敗した悪しき先例として、歴史に刻まれそうですけどね。

おまけの課金コーナー

 私の大河レビューについて、引用RTをして読了報告をしてくれた方がいます。引用RTなんて素敵、まるで自宅に素敵なゲストが来たみたい! おもてなししなくちゃ!

 といいつつ、金をふんだくるのは気が重い。もとい極悪っちゃそうだけど。ま、私はそもそもが性格悪いってみんな知っていることでしょうし。

 ではK氏の引用RTを分析してみます。


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