実写映画版『ゴールデンカムイ』は見るべきだと思う
見てきました。結論からいえば、白石を見るだけでも元は取れます。
私は原作の白石にそこまで思い入れは強くありませんでしたが、実写版は間違いなく至上の出来といえる。ある意味うっすらと原作を超越し得るものを見せてきた。白石の凄さはケミストリーにある。杉元とアシㇼパだけのチームでは、まだぎこちなかった。それが終盤、白石が加わってトリオとなることで、物語が超高速回転を始める。
杉元と白石が冬の川に転落して、焚き火にあたるまでの場面は、なまじ実写ゆえにリアリティラインがあがり、死なないのがおかしいとは思いました。そういう疑念すらすっ飛ばす白石の剛力っぷりが凄まじい。白石はなまじ鍛えていないうえに軍人でもない一般人です。それなのにあの過酷な状況をどうやって生き延びるのか、原作時点でよくわからなかった。映画ではその不可解さが増幅し、明治末日本のチンピラが持つ生命力が乗り移っていました。結構あの時代の人の話はえげつないんですってば。
白石語りだけで延々と続けられそうですが、まあそれはさておき。本題に入ります。
これはマーケティングの問題なのだ
予告編とポスターがよろしくないと思います。ポスターは、どこか既視感があって、むしろ個性が伝わってこないんです。北海道の大自然をもっと全面的に出してもよかったと思いますね。杉元、アシㇼパ、白石が大雪原に佇むところを上から撮影したようなポスターでもよかったんじゃないかな。
そしてこれが根幹なので、有料エリアがほぼなしで公開しますけど。
やはり、原作者インタビューがまずかった。
映画を鑑賞すると、アイヌの工芸品や衣装だけでも見て良かったと思える。アイヌ料理も素晴らしかった。アイヌのコタンで人々が暮らす様も、見て良かったと思えました。博物館のガラスケース越しに見るものとは異なるのだとしみじみと思えました。
でもそういうことを「適材適所」というと、どうしても差別にひっかかりますよね。アイヌの方は偏見にさらされ、出世ルートが閉ざされたり、学問や研究から弾かれることがありました。工芸がアイヌに向いているととらえられかねない言葉は、やはり不用意だったとは思います。
とはいえ、そこを厳密に言うのもまずいかなと。喋った側の気持ちも、今はちょっとわかります。野田先生は自分の仕事に誇りがある人だ。それを口に出せる人は嫌いじゃないどころか、私は羨ましいと思う。その結果、反感を買うというのもよくあることだ。誇りある人を叩きすぎるのはよくない。
ただ!
インタビューを活字にして、チェックする段階でちょっとでも丸める気遣いがあれば、そんなに燃えなかったんだろうと我ながら思いますもん。
そりゃ『サーミの血』や『セデック・パレ』と比べたら遅れていると思いますよね。ただ、『セデック・パレ』と並べるべきならば、シャクシャインあたりを題材にすべきではあるんですよね。
『アンという名の少女』くらいの配慮が、『ゴールデンカムイ』の求められるハードルの気がします。それとアイヌの場合、東洋人同士だからキャスティングを厳密にできないというのはあるかもしれない。
難しいですね。私としては、子役にアイヌルーツを条件につけたオーディションを行えばよいのではないかと思います。チカパシとエノノカですね。
以下、余計なことながら
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