見出し画像

『おちょやん』94 満洲にいたあの人

 昭和23年(1948年)、満洲から戻った寛治は、あのビー玉を千代に渡すのでした。

満州・新京にいたその店長

 ジャーンと銅鑼の音が鳴り、満洲国という地図が映ります。昭和日本人の中国を感じる音って、この銅鑼ですわな。横光三国志のジャーンジャーンでおなじみの。
 満洲・新京とテロップは出ますが、たぶん大阪で撮影しているわけですよね。それでもSE、音楽、衣装で満洲を再現しようと頑張ってはります。2019年大河よりええ出来や。
 寛治が博打で負けてチンピラに絡まれているところを、店長が助けました。この店長は家庭劇を知っとって、しかも千代の話を聞きたがります。寛治もそこは照れ屋さんなので、ルリ子、香里とあげて最後に千代の名前をあげています。昭和の男やな。
 寛治は昭和男らしく、仕送りの約束を破って女と博打に使っている、戻られへんといいます。ほんまアホやなぁ。けど、ヨシヲは許してくれると言い、二人は朝まで飲みました。千代の話を聞きたがったそうです。それからずっと寛治の世話をしてきた店長さんですが、戦争が終わる前の日、日本が降伏すると告げてきたのです。

 軍隊から聞いたからほんまのこととヨシヲはいうわけですが。そうそう、満洲の関東軍は国民を守ると言いつつ、自分らだけ先に逃げたことが非難轟々でして。満洲描写ならこの先に逃げる関東軍は定番ですわな。
 ただ、これもまちまちではある。そもそもが百万といっていた関東軍が戦況悪化で南方に動員されていた事情もあるし、踏みとどまって戦った部隊もおります。ろくに武器のない現地召集国境守備隊が主力ですと、ソ連と装備がちがいすぎて戦いにもならなかったと。
 ヨシヲは世話になった人のためにまだ残ると告げる。そして寛治にビー玉を託します。寛治は彼が千代の弟だと悟るのです。ヨシヲはねえやんなら笑って許してくれると言って、「行け!」と寛治を促すのでした。

満洲引き上げの苦難と犠牲

 寛治は何日も飲まず食わずで逃げました。雨ざらしの列車。これも満洲引き上げの苦難で、屋根のない列車で寒く、そのせいで命を落とす人も多かったのです。寛治はビー玉を託すために、生き延びようと思えました。
 そして収容所に入ると、ヨシヲの店の常連から聞きます。ヨシヲは逃げ遅れた女の人を助けようとして、撃たれて亡くなったと。
 寛治は誓いました。誰かの役立つために満洲にいった。ヨシヲさんみたいに人の役に立ちたい。収容所の人を助けようと。
 そうして帰ってきた寛治によう帰ってきたと千代は涙し、一平は何か考えているようです。
 その夜、父母の写真の前にビー玉を置いてすすり泣く千代。一平は『お家はんと直どん』の台本を見返し、万年筆を手にとります。
 千代が外に出ると月が見える。
「明日も晴れやな……ヨシヲ」
 千代はそう言います。

戦地はどちらへ

ここから先は

1,414字
2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.c…

よろしければご支援よろしくお願いします。ライターとして、あなたの力が必要です!