秀吉、諦めない
森の中は昼間でも薄暗い
おいしげる雑草をかき分けて前に進む
木の実の方へと5分、10分、30分、1時間と歩いた
しかし、道からはすぐそこに見えていたはずの木の実がどんどんと遠くへ離れていく
「まやかしか!」
とうとう藤吉郎は木の実がまやかしによるものだったということを悟った
それでも諦めることが出来なかった少年は引き返すことなく追って行った
だが6歳の子どもではそう長く山の中を歩けるものではない
しだいに歩く速度が遅くなり、ついには山中に倒れてしまった
「お前はちょっと馬鹿だな。まやかしだって気づいたら引き返せよ」
消えゆく藤吉郎の意識の中にかすかに声が聞こえてきた