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連絡帳の終わりと不安の正体

夫と息子たちと共にお花見をした。年間快晴日数ランキング最下層の私の県では、満開の桜と快晴がセットで見れる期間は少ない。この日は文句なしの天候で、おかげで満開の桜を見ることが出来た。

お花見、と言ってもやんちゃ盛りの長男。大きな公園に解き放てば、あっという間に走っていき、それを夫が追いかける。長男は随分と逞しくなった。

この春、長男が年少に進級した。

0歳入園児はひよこ組。そこからリス組→ウサギ組を経て、今年度からコアラ組になった。

進級して変わったことがある。

連絡帳がなくなったのだ。

正確にはなくなったのではない。何か特別なことがあった時のための記載欄はある。

未満時の頃は、体温、睡眠時間、排便の有無、朝食の内容、そして自由記載欄。ここには家での様子を書くのだが、育児相談をすることも多かった。

保育園の先生からの連絡帳には、園での様子が丁寧に書いてあった。私の相談に対するお返事を頂く事も多かった。
夫婦ともに、連絡帳を見るのが楽しみだったし心配事を相談した日は迎えに行った車内で連絡帳を確認した。

それが、今年度からなくなった。

私の育休明けと同時に、0歳で入園した長男。フルタイムでの復帰。早朝保育に始まり、延長保育の最後の一人か二人で、長男は保育園の“主”だった。

お迎えに行くと、玄関で「ママは嫌だ、パパがよかったのに」と泣き叫ぶ。チャイルドシートは仰け反って抵抗する。でも家に着くと私から離れない。

「こんなに小さいのに預けて可哀想だろうか」

自問自答の日々だった。

朝は7時15分に家を出る。19時にお迎えに行き、19時30分に帰宅。
バタバタと家事をこなし、22時に就寝する。息子といられる時間はかなり少なかった。

だから、一日の大半をしめる園での生活を連絡帳の内容で伺い知ることができたのは有難かった。
私では事足り無い数々のことを、保育園で沢山経験させてもらったし、私が知らない長男を、いっぱい見つけて尊重してくれた。

最近気づいたことなのだが、息子はしばしば「大好きじゃない」という言い方をする。

「緑の野菜は大好きないの」

「怒ってるママは大好きないの」

「ゆうちゃん、歯磨き大好きないの」

嫌いなことはある。上に書いたものは私に言わせれば彼の中の“嫌い”な物。でも彼は“嫌い”という言葉を使わない。

「嫌いってこと?」

「ちがうよ。いまは大好きじゃないだけよ」

なるほど。今は大好きじゃない、後から好きになるかもしれない、だから“嫌いじゃない”と言うことらしい。

子供の持ってる感性って、大人になるにつれて消えちゃうのだろうか。
“大好きじゃない”は“大嫌い”と伝えるよりずっと棘がない。

「いいね。その言い方。ママはすごくいいと思うな」

そして言いながら気づいた。

あの慌ただしい日々に、こんな風に息子の感性に気付いてあげられた日が、一体何日あっただろうか。

その感性を認めて、褒めて、大切にしてあげられた日は、いくつあっただろうか。

もっと気づいてあげられた事はなかっただろうか。

「早くしなさい」「早く寝なさい」と時間に追われながら、大事なことを見落としてこなかったか。

多分沢山あった。私が取りこぼした数々を、保育園の先生たちが連絡帳を通して教えてくれていた。

進級にあたって、私の中にあった漠然とした不安のしっぽを、ようやく掴んだ気がした。自分の育児に自信がない。

だから。

“連絡帳がなくなって、私はこの子をわかってあげられるだろうか。”

私の不安はこれだった。

10月で次男の育休が終了すれば、私はフルタイムで働きに出る。また慌ただしい毎日がやってくる。仕事を辞めたいとは思わない。どんなにへこたれることがあっても、仕事は私のアイデンティティだから。(もう少し休みたいなあと思ったり、不満に思う事はあるけど)

保育園の先生にいつか言われたことがある。

「そのための保育園ですから!どんどん働きましょうね!」

復職したら、長男は保育園の“主”に返り咲くだろう。次男もそうだ。それは私が仕事をしている限りは変えられない。

だからせめて、「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」を沢山言おう。

朝早くから、遅くまで待っていてくれてありがとう。

元気でいてくれてありがとう。

連絡帳はなくなった。だからこれからは、今以上に沢山お話をしよう。息子の言葉に耳を傾けよう。今以上にもっと息子を見よう。たくさんの良い所を見つけよう。

自分自身の子育てと、息子たちに向き合ういいきっかけだ。答えにたどり着けば、不安はもうない。

ところで次男育休中の現在、早朝保育も延長保育も利用していないのだが、長男はそれが不満なご様子。

「もっと遊びたかったのに。ママ、もっと遅く迎えに来てよ。早すぎるよ」

だそうだ。なかなか辛辣ですね、と苦笑いする。

お花見に行った翌日、降った雨が桜の花びら達をさらっていった。きっと息子達との日々も、こんな風に瞬く間に過ぎていく。

ぼやぼやしている暇はない。かわいい息子たちの成長を一瞬も逃すまい。

足取りは軽い。


ゆうちゃん、進級おめでとう。


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