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【読書】ペンギンの国のクジャク

 ペンギンたちはこう思った。
 ジャック(クジャク)なら、立派なペンギンになれると。

 遠くないむかしに、組織の海に浮かぶ島の多くをペンギンたちが支配していました。ミスもあるし、いつも人気者ではないけど権力を握っているのはペンギンたちでした。
 多くの組織は似たりよったりで、経営陣や管理職は、ペンギンスーツに身を固めていた。
 いっぽう、手足となって働くさまざまな鳥たちは、それぞれの仕事とライフスタイルを反映した色彩と羽をまとっていました。
 そして、組織の中でのし上がりたい鳥はできるだけペンギンに近づくことを奨励されていました。すなわち、歩幅を狭くしてペンギン流のよちよち歩きをして、ペンギンスーツを身に着けてリーダーたちをお手本にすることに。
 従業員養成課は集中セミナーを設けて正しいペンギン流の行動を教育しました。
 ペンギンたちはさりげなく、もしくはあからさまに、

「これがここのやり方だ」
「成功したければ、わたしたちとおなじようにしたまえ」

 組織の中で出世の階段を上がりたいと思う鳥たちは、ペンギンの姿、行動をまねできるようになりましたが、そんな鳥たちでさえ、自分たちはどこまでいっても幹部になれっこないと気がついていました。
 誰もがこう思い込んでいました。
 ペンギンたちこそ、天性のリーダー、一糸乱れぬ、結束の固いすぐれたチームプレイヤーだと。ペンギンたちは故人や家族のことより、真っ先に組織のためを考えるにちがいないと。
 それに比べて他の鳥たちは、羽のむくまま気のむくままで頼りにならないと思われていました。
 もちろんだれも公然とそう言ったり書いたりしません。
 なぜなら、あらゆる組織の支配層の例にもれず、ペンギンも自分たちを公平な考え方をもっていると見せたいと思っていたからです。
 才能と勤労とその成果にもとづいて従業員を昇進させているように。
 けれど、だれもが知っていました。
 いつだって権力を握っているのはペンギンたちで、これからもペンギンたちの天下はつづくはずだと。
 みんながペンギンのルールに従うかぎり、ペンギンの国の暮らしは丸く収まっていました。

 ところがあるとき、ペンギンの国の事情ががらりと変わるきっかけが起きました。
 幹部ペンギンたちはたびたび他の島をおとずれました。まだ見ぬすぐれた鳥たちと出会うために。
 経営能力、経験、そして業績。めぼしい鳥を見つけると、幹部ペンギンたちはこんなふうに考えました。
「この鳥たちはペンギンじゃない。でもわれわれペンギン流に仕込んでやれば、ペンギンにしてやれることができるかもしれない」
「見たこともない鳥だが、これだけ立派にやれるんだから、ペンギンの国にだって慣れてくれるだろう。彼らの才能があれば、われわれはいま以上に繁栄するはずだ」

 これがクジャクのジャックがペンギンの国くるきっかけでした。
 ジャックはペンギンと似ても似つかない鳥です。ジャックはペンギンの対極にありました。
 ジャックはクジャクで、クジャクは華麗にしてカラフル、そして寡黙とはほど遠い鳥です。
 ジャックは才能豊かなクジャクで立派な業績をいくつも残していました。
 筆もたち、予算管理の腕も抜群、想像力もあり、発想も豊か、実利的で分別もありました。
 故郷の島では人気者でした。

 幹部ペンギンたちはクジャクのジャックに会って大いに感心しました。
 たしかに彼はペンギンとは違っていますが、業績たるや大したものです。履歴を見る限りジャックは前途洋々でした。
 ペンギンたちは、ジャックなら立派なペンギンになれると思いました。

 ジャックはジャックで、偉大にして強力な組織社会の一員になれることを喜びました。ペンギンの国は豊かで、すべての鳥たちは高給とりでした。ジャックは明るい未来がありそうなペンギンの国に行くことにしました。
 こうしてジャックはペンギンの仲間にはいり、全員一丸となって大きな業績を成し遂げるのだとペンギンたちとジャックの意見は一致しました。
 はじめのうちはみんなご機嫌で、ペンギンたちもジャックをちやほやしました。ジャックも注目の的で極彩色の羽を広げてディスプレイしてみせたりしました。
 ジャックもペンギンたちのモノトーンのスーツの厳粛さに感激しました。とくにミーティングやイベントで集合すると壮観でした。
 ペンギンたちの規則を重んじ、行儀にこだわる姿勢は、ジャックが見てきたどの鳥たちにもないものでした。
 ジャックはしばらくの間、クジャクらしさをおさえ、ペンギンのしきたりにあわせようとしました。ジャックはぺんぎんたちは満足のいく業績を上げれば、いつかジャックを受けれてクジャクの羽を広げることができると信じていました。
 時がたつにつれて次第にジャックの物言いが耳障りだという声が聞こえてきました。ペンギンは物静かで控えめに話すのに、クジャクの高笑いや突拍子もない声にペンギンたちは度肝を抜かれました。
 業績を上げるようになったジャックは本性を現すようになりました。仕事ではめざましい結果を出していることには異論はありません。しかし、派手で目立つやり方に一部の幹部ペンギンは眉をひそめていました。

 こんなふうにペンギンの国にもとめられ、業績を出していたはずのクジャクのジャックは、自由に自分らしさを出せるどころか窮屈な指示をされます。ペンギンスーツを着るように言われたり、声の調子を落としたり、歩幅を短くしろと言われます。そう、ペンギンとそっくりになるように努力しろと言われるのです。

「どうして、ありのままのぼくではいけないんですか?どうして自分を変えなければあなたたちに受け入れてもらえないんですか?」
「それが、ここのやり方だからだよ」「組織の海ではどこもそうしている」

 それからジャックは自分と同じようにスカウトでやってきたペンギン以外の鳥たちと相談することにしました。
 そこにはペンギンスーツを着させられたワシ、タカ、モノマネドリ、ハクチョウがいました。彼らはそれぞれの本性が年寄りペンギンたちの気に触り、息苦しい生活をしていました。そこで彼らはそれぞれに様々な作戦を行います。それはみんなが思いつく上司に気に入られると思われる作戦ですが、どれもうまくいきません。
 ペンギンは多様性を求めてスカウトしたはずの鳥たちを結局排斥してしまっていました。そんな中、ジャックはいち早くペンギンの国を出ていきました。

 本書は、ペンギンの国というまさに官僚的な会社組織に、能力が高いが個性の強い優れた人物は受け入れらず、徹底的に排斥されてしまうことを描いたビジネス寓話です。
 この寓話の興味深いところは素晴らしいアイデアがあっても官僚的な社会も変化しないところでしょう。ペンギンの国は多様化に成功しました、とはなりません。それくらい官僚的な組織というのは強固で変化が難しいことを寓話で語っています。
 みなさんが思いつく変化の方法は、ペンギン以外の鳥たちがほとんど試してみました。しかし、それは徒労に終わります。
 でもそれが現実的なオチでしょう。簡単に官僚組織を変化させる方法があれば、とっくに官僚的な組織はなくなっているはずです。ましてやそんな方法を行っている人物は組織から追い出されてしまいます。
 ジャックはペンギンの国ではないところに、自分の持ち味を活かせる場所を見つけます。他の鳥たちもジャックに誘われてそこへ行き、自分の特性を活かして活躍します。
 彼らの物語はそれでいいのですが、結局ペンギンの国という官僚組織は、本人が多様性を求めるといいながら、多様性が入ってきたらきたで眉をひそめ排斥するという皮肉をこの物語は教えてくれます。それほど官僚組織を変化させるのは難しいし、本人たちが変えたいと言っていても、いまの秩序を守りながら、変化を受け入れることはできないのです。
 そのために本書は、今いるところはペンギンの国ではないか、自分の中にもペンギンはいないかと読者に問いかけます。さらに本書の終わりの方ではこの本を教育に使った企業名や大学や組織が実名で掲載されています。それくらい会社や組織にこの本は必要とされていたわけです。
 それらの企業や組織は、いかにペンギンの国ではないようにできるかや個性を活かすにはどうすべきかを考えているわけです。どうしても会社や組織は、長命だったり大きくなったりすると官僚組織化していきます。それを意識的にどう変えていくかを、本書を通じて組織全員でペンギンにならないようにするにはどうするかを考える機会にするといいでしょう。
 本書は、クジャクのジャックのような個性的な優秀な人に向けた本ではなく、ペンギンたちに、特に幹部ペンギンや年寄りペンギンにむけた寓話だと言えます。
 ぜひ、本書を通じて、官僚組織を変えることの難しさを実感してみたらいかがでしょうか?オススメです。


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