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「非日常感」を醸し出す――旅のコミュニティに要らないもの――

「旅は非日常」。
私は「旅宿」として、「非日常」の感覚を大切にしています。
そのため、コミュニティスペースに「テレビ」はありません。漫画本やゲーム類などの娯楽品もありません。個室も「寝るだけの最低限の設備のみ」です。
その代わり、観光関係の資料類は大量にあります。自分が10年以上かけて旅先で集めてきたものを所狭しと並べているので、量は「日本一」を自負しています。

「旅宿」に拘り、自分なりの基準をもってつくり上げている「コミュニティスペース」の、大きな特徴であり、個性です。

旅に出て民宿やユースホステル、そしてゲストハウスを利用する際に、自分が宿を選ぶ基準は「目的地へのアクセスが良い」「キッチンが利用できる」「収容定員が小規模」「テレビや漫画本がない(少ない)」――など。
特にゲストハウスで共有場所にテレビをがあると「せっかく『非日常』の旅を楽しみに来ているのに、会話が『日常的』になってしまう」ことがあるので、自分は好みません。

うちは「交流スペース」と呼ばず「コミュニティスペース」と定義づけているのも、こういった細かい拘りを持ってのことです。テレビがないほうが「旅のコミュニティ」は成り立ちますし、「旅」に関する資料類は「これでもか!」とばかりに充実させているので、旅を楽しみに来られている人を退屈させることはない、と自信を持って言えます。
実際、深夜まで旅話が弾んでいたことが何度もあり、一番遅かった人だと午前4時まで話し込んでいました。テレビがあっても盛り上がりはあるかもしれませんが「話題の軸が『旅関係』にならない」と思いますし、「非日常感」は醸し出さないでしょう。

うちに泊まる人の中には「家にテレビがない人」も結構いて、一人旅の女性にその傾向があります。1月に泊まられた農家のご家族も自宅にテレビがなく、子どもたちがそんな生活に慣れていることで「資類料ばかりで大人の旅人向けのものが主」のコミュニティスペースでありながら、「あるもので楽しむ」感じで夜遅くまで遊んでいたのが印象的でした。
「子どもたちに旅の素晴らしさを知ってほしい」という願いと、ご家族で水木しげるロードに来ているのに携帯ゲームに夢中になっている子どもなどを見掛けることもあるので、オープン時に「宿内での携帯ゲーム禁止」というルールを定めたのですが、うちを選ぶようなご家族は、その傾向は低く、杞憂でした。
個室の利用者も多くが「コミュニティスペースを活用する」のがうちの特徴で、客室に籠ったり、仲間内だけで楽しむ感じにはなりません(最近はそういうタイプの人のご利用が減っています)。

こういったことは、「ゲストハウス」を「安宿」と捉えるか「旅宿」と捉えるか、「都市型」を好むか「観光地型」を好むかなどで違いがあると思いますが、ホテルや旅館との違いとして「選択肢の一つとなるポイント」にしたいこと。「旅宿」としては、旅のコミュニティに「要るもの」と「要らないもの」を明確に見極めて、個性を表現しています。

テレビも漫画本もゲーム類もないけれど(「妖怪トランプ」と「妖怪花札」はありますが、遊び用というより“ネタ”の一つ)、ついつい腰を据えてしまうコミュニティスペース(特に冬は「こたつの誘惑」と葛藤する人も)。それが「旅宿」としての拘りです!

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