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あらゆる障壁の中でクリエイティブであり続けるために 【Awwwards Digital Thinkers Conference Tokyo 2020 レポート】

世界最大級のWEBデザインアワード「Awwwards」が主催するカンファレンスイベントが、1月23日・24日に東京・イイノホール&カンファレンスセンターにて開催されました。

これまでニューヨーク、アムステルダム、パリ、ロンドンなどで開催されてきた同カンファレンス。アジアで初開催となる今回、フォーデジットはオフィシャルスポンサーとして参加させていただきました。

世界各国で活躍するデザイナー、デベロッパーから沢山の刺激を受けた2日間。参加メンバーからレポートをお届けします。

Awwwards Digital Thinkers Conference とは

Awwwardsは全世界から選ばれた優れたクリエイター達が審査員となり、WEBサイトの「デザイン」「ユーザビリティ」「クリエイティビティ」「コンテンツ」「プログラミング技術」を評価するデジタルデザインアワードです。年間約5千件、累計65万件以上のWEBサイトが世界中から登録され、優れたクリエイティブにアワードが授与されています。

そんなAwwwardsがデジタルクリエイティブ業界の交流と発展を目指し、毎年世界中の都市で開催しているイベントが「Awwwards Digital Thinkers Conference」。今回もゲストスピーカーを招いたトークセッションやワークショップ、世界中のクリエイターと交流できるパーティーなど、さまざまな催しが行われました。

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世界で活躍するクリエイターによるトークセッション

2日間で全24名に及ぶスピーカーのトークセッションは、どれも個性的で、多くを学ぶことができました。どのような価値観でものづくりに取り組んでいるのか、アウトプットの質を追求するプロセスなど、それぞれのクリエイティブへの姿勢が見える内容でした。

中でも特に印象深かったセッションを、参加メンバーからご紹介します。

● 魂を失わずにデザイナーを続ける方法

How to continue being a designer without losing soul
by Keitaro SUZUKI
 - Design Director & Designer at Shiftbrain

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「いいものはなぜ言語を超えるのか?」「感情的なつながりを作るためのデザインとは?」という内容。近年の日本のデザイナー、特にwebデザイナーが抱えているであろう感情とロジックのバランスについて、国の違いや文化の違いを念頭に置きながら、図解を交えて鈴木さんの考えを述べていました。

映画制作スタジオであるジブリとピクサーを例に、制作文化の違いを「個の創造性」を尊重する日本と、「チームの多様性」で制作するグローバルではないかと仮定。「個の創造性」は Philosophy / Valuesと、「チームの多様性」はFact / Systemとそれぞれ相性が良いとし、理想を求めて未来からデザインする「創造性」と問題解決のために過去からデザインする「多様性」、両方のアプローチができるデザイナー像がこれから強く求められていくとしました。

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Nawa「僕も鈴木さんと同じことを常に考えていて、それを言語化・視覚化してもらっているようでした。自分の考えてきたことは間違いではないと改めて感じました。そして鈴木さんの言語化・視覚化のスキルに圧倒されました。
相反する2つの要素をつなぎ合わせること。イノベーションが自身の中でも重要だなと。フォーデジットのデザイナーにはこの“矛盾した感覚”が備わってていて欲しいです。」

● 悪役のようにデザインする: カオスと創造性への叙情詩

Design Like a Supervillain: An Ode to Chaos and Creativity
by David Navarro
- Executive Creative Director at Ueno

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クリエイティブはカオスでありダークサイドであるという、面白い切り口のセッションでした。

デザインには大きく分けて、Order(秩序) / Chaos(混沌) があり、Orderにはトレンドやツール、ベストプラクティスなどが含まれている。一方でChaosは様々な障壁にぶつかり失敗をしても、チャレンジしアウトプットし続ける不屈の精神のようなもの。DavidはそのChaos精神の例えとしてSupervillan(悪役)を用いました。

マジンガーZの悪役であるDr.ヘルは負けても負けても新たなビーストを作り続け、100以上のビーストを生み出したことを紹介し、そのスタンスこそがクリエイティブには必要で、ダークサイドに落ちましょうと(笑)。ダークサイドとクリエイティブに対する考えが、様々な映画の悪役キャラクターとともに紹介されました。

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Nawa「彼がここでいうChaosとは、失敗を恐れないチャレンジ精神とアウトプットであり、それを持てば生涯成長し続けることが可能であると言われている気がしました。ダークサイドという面白い切り口や、講演の笑いも織り交ぜたうえでちゃんと伝えるテンポ感など、受け入れ易い状態に持っていく話法もとても勉強になりました。ただただ面白かった!
彼のトークだけではなく、他のデザイナーの方々も、失敗を恐れずチャレンジし続けることが大切であると何度も言っており、日本人にはやや欠けているメンタルで、すごく大事な部分であると感じました。」

● 魔法を創る - ロボットではなく人間のためのプロダクト

Creating Magic - Products for Humans not Robots
by Peter Smart
- Head of Product Design at Fantasy Interactive

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人間のためのプロダクトをつくる際には、Experienceが重要という内容を高級フェリー「Ferry Entertainent」のサービスデザイン事例をもとに紹介。その中でも、Peterの会社Fantasy Interactiveのデザインに関するExperience Principleの説明が印象的でした。

1. Context is Everything
「ユーザーはどんな人?」「どんなサービスを提供したらいい?」すべて考えられないと良いサービスにはならない。
2. Show us a Hamburger menu and You’re fired.
ハンバーガーメニューのような安易で安価なサービスデザインは不要で、きちんとコンテキストやシーンに合うことを考えるのが大切。
3. Support Decision Moment
「決める、選ぶ、理解する」といった決定的な瞬間を簡単にしてあげられるのが人間にとっての良いサービスと言える。

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Vanna「話し方がとても分かりやすく、ビジュアル化にも感動し、Visual Designerとして見習いたい点がたくさんありました。最後に彼は ”If it make you feel alive, It will make other too.”と言っていて、このセリフにはとても共感しました。ただ綺麗なだけでは使われないので、改めてExperienceの大切さを実感し、カッコいい且つ良いExperienceを作りたい!というモチベーションが上がりました。」

● イノベーションへの転換 - デザイナーの苦悩の対処法

Pivoting to innovation - or how to manage a designer’s pain
by Jonas Lempa
- Co-Founder at Taikonauten

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彼らの実体験に基づいた、イノベーションの場での苦悩をシェアしてくれました。デザイナー(ここでのデザイナーは広義に設計者、プロダクト・プロジェクトを作るあらゆる人々)の抱えるであろう辛さを緩和する方法・考え方の提案でもありました。

1. The untouchable opinion of the client
クライアントから曲げられそうにない要件をもらったが、その要件をそのまま作っても絶対いいものができない時は、知識やリサーチから得られる意味のあるデータを基に話をする。またそれらの裏付けを一緒にしてくれる共犯者を見つける。
2. Don't bite the hand that feeds you
ユーザーからのあらゆるフィードバックは常に確認し、評価する必要がある。
3. It's just a matter of sight
短期間(あるいは連続した流れの中)で類似の案件が何個も続いた時は、個々にフォーカスしすぎず、少し引いて視野を広くして見る。そうすると、何が共通していて、何が必要とされているのかというようなことが見えてくる。そういった不確実だけどぼんやり見えてくるものが、新しい仕事のチャンスになり得る。
4. Always share your experience!
いつでも自分の経験をシェアする。

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Sakimoto「国や制作物が違っても、ものづくりをする人たちは似たようなことをやっているのだと実感し、心強いような気持ちになりました。自分はまだDeveloperという1functionでしか機能できていないけど、クリエイティブの上流に踏み出していくにあたり、こういった考え方は改めて自分の中でも当たり前にしていきたい。
アフターパーティでJonasと交流することができたのですが、とにかく話がうまく見習いたい点がたくさんありました。」

● 「無駄づくり」から見るウェブコンテンツの作り方

How to show Useless stuff on the internet
by Marina Fujiwara - Content Creator

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今回のカンファレンスはWebやアート分野の方の登壇が多い中、藤原さんは唯一のエンタメ系クリエイターでした。

札束で顔をビンタしてくれる機械、Twitterで誰かが「別れました」とつぶやくと光るライト、小銭を踏むと音が鳴る靴など、明らかに世の中には必要のない、藤原さんが作った「無駄なもの」の紹介。その中から視覚障害者の方へ作った「痛がる白杖」をピックアップしていました。「白杖を使っているが、みんなスマートフォンに夢中で蹴られてしまうことがある。もっと目立つようにならないか。」という相談を受けて作ったもの。テックも詰まった様々な面白いアイディアを、堂々と淡々と且つきちんとオチをつけて話され、会場は終始笑いが起こっていました。

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Nagai「さすが元芸人さんで、よくあれだけ面白いアイディアが浮かぶな、と感動しました。詰め込まれている様々な技術はどこで学んでいるのか気になります。
小さい頃、洗濯バサミや輪ゴムなどで数え切れないほど無駄なものをつくって遊んでいましたが、大人になった今たまにはそういうものをつくってみようかな、と思いました。普段は目的があり要件やデザインも決まっていて…というものをつくっていますが、そういうものが何もない本当にフリーなものづくりの中に、新しい発見がある気がします。あらためてものづくりの面白さを思い出しました。」

● クリエイティブな交際関係

Creative Companionship
by Leta Sobierajski & Wade Jeffree
- Designer & Art Director at Leta Sobierajski & Wade Jeffree Studio

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夫婦で活動しているデザイン・アートユニットのお二人。

かつての港町に海からインスピレーションを受けたオブジェをつくったり、バレンタインイベントをどうやってカップル有無問わず、楽しんでもらえる空間にするかといった、インスタレーションやパフォーマンス作品と、それぞれのプロセスの紹介。タイトルの「どうやって夫婦2人でクリエイティブを高めあっているか」をメインに話すのではなく、作品とそれぞれの趣旨、制作プロセスの紹介に、そのエッセンスが散りばめられていました。

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Nishigaki「取り組まれているアウトプットが実用に即したものではなく、エモーションに訴えるものがメインのため“アート”と解釈もできるが、クライアントの依頼があり、体験者ありきのワークなので“デザイン”だな、と思いました。求めている結果、評価、表現、手法の異なるデザイン。
アウトプットの大半がインスタレーションだったりパフォーマンスだったりして、デジタル領域で制作する我々とは全然違うものの、デザインという共通部分もあり、どうエモーションに訴えるかを追求するスタンスは刺激的でした。」

最前線のクリエイティブに刺激を受けた2日間

会場は半分以上がが海外からの参加者のようで、英語でのコミュニケーションが飛び交うオープンな雰囲気でした。トークセッションの合間にはコーヒーブレイクやランチ、アフターパーティなど交流の時間がたくさん取られていて、国や制作物は違えど、クリエイティブに真剣に向き合う参加者同士はお互いに興味を持ち、自然とコミュニケーションが生まれていました。

コミュニケーションのきっかけとなるギミックも。参加者全員に用意されたネームタグは右下にキャラクターが描かれ、同じキャラクターの人を見つけるとギフトがもらえます。初対面の参加者同士でも話しかけやすい工夫がされていました。

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フォーデジットから参加したメンバーも、様々な国のデザイン会社の方と情報交換をし、世界のトレンドを知るきっかけや、成長し続ける組織づくりのヒント等を得られました。改めてクリエイティブの楽しさを実感し、モチベーションも上がり大満足だったようです。

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今後もぜひこのようなイベントに積極的に参加したいと思います!Awwwards Teamのみなさま、ありがとうございました。

Photo by Awwwards Team. Thank you !