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夜、四男が見たもの

ある日のこと、四男が神妙な面持ちで私にこう言った。
「でぃーしゃん、四男見たねん。昨日の夜、とと(夫)がiPadで動画見てた」
「そら、そんなこともあろう。それがどうした」

そう返事をすると、彼は不思議そうな表情でこう続けた。
「大人のヒトが二人おってな、ほんでな…」


???…!!!

待て待て待て。
待ちたまえ。
母は、いや、妻はまだ心の準備ができておらん。

-私が今まで見ていた夫は仮の姿で四男が見たものが夫本来の姿なのではないだろうか-
-結婚して10年以上経過したが、まだまだ私の知らない夫の一面があるのではないか-

一瞬にして色んな思いが錯綜した。

が、目の前には曇一つない澄んだ瞳で昨日見た不思議な光景を問うてくる可愛い四男の姿がある。
彼の疑問を解決してやりたい。

妻の気持ちvs.母の気持ちは母の気持ちに軍配が上がった。
私は勇気を出して恐る恐る彼に聞いてみた。


「ほんで?」


すると四男は、相変わらず不思議そうな面持ちでこう言った。

「真ん中にマイクがあった。とと、めっちゃ笑ってた」

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・。

四男…、そら漫才や。
もっと言うならM-1の決勝やーーー!!!

「マンザイ?エムワン?ナニソレ?」

と、相変わらず澄んだ瞳で真っ直ぐな質問を投げかけてくる四男に「日本で一番面白いコンビを決める大会があってな…」と母は真摯に回答した。

前日の夜、四男が見た夫の姿は、私が10年以上見てきた夫の姿そのものだった。

色んな思いが私の中を駆け巡ったが、夫が健全な関西の中年男性だということが判明し、同時に関西の、いや日本の大事な文化を四男に教えることができたので今回はこれで良しとしよう。

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