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費用削減になりがちな管理部門の成果の定義方法、KPIの設定方法について考えたプロセスを書く

管理部門の責任者になり、管理部門の成果の定義をする方法を1年ぐらい試行錯誤している。現時点でのまとめを書く。このツイートが要約。

管理部門が費用削減ばかり注目される理由は、大多数の社員が「売上-費用=利益」をベースに仕事をしているから

・会社の中のほとんどの社員は「売上-費用=利益」をベースに仕事をする
・「売上」がない管理部門は「費用」を削減して、利益を出せといわれがち
・それ以外の「成果を定義するコンセプト」が必要

管理部門の成果を定義するコンセプト:「会社の資産をつくる」。会社の資産とは、将来はいってくるお金の量をプラスにするもの。

・ここでいう「会社の資産」は、バランスシートと呼ばれる会社の財務諸表に掲載される「資産」より、もっと幅広く捉えたほうがよさそう
会社に将来入ってくるお金の量をプラスにする「(広義の)会社の資産」のうち、財務諸表にのせられるものは一部であることは、直感的にも理解してもらえると思う
・この「見えない会社の資産」を見えるようにすることが、管理部門の成果の定義の第一歩だ

総務部の成果の定義をするのは、総務部長ではない。総務部長の上司(管理部門長)だ。

・私が人事部長だったとき、人事部の成果の定義を自分でしていたので誤解していた。
・管理部門の各部長に自分で考えてもらおうとしたが、上手くいかなかった。よく考えたら確かにおかしい。
・何か会社の方針があって、それに基づいて自分たちの成果を決めるわけだ。「会社の方針」と「自分の部署の成果」をつなげるロジックを考える役割は、管理部門の各部長ではない。その上司(ここでは管理部門長とする)からの「オーダー」があってこそだ。
・本来「成果の定義」をすべき管理部門長がそれをしておらず、それによって、管理部門で働く人達がもやもやしている状態は、いろんな人と話した結果、いろんな会社で起きてそう
・この原因が管理部門長であるということをちゃんと指摘している会社もそんなになさそう。管理部門長の能力不足というより、当事者が自分の役割だと認識していない会社も多いのかな。

以下、管理部門の成果を定義するときに使える方法論

ここからは具体的にどうするのかを書いていく。あなたが管理部門のどのポジションにいるか、社内のヒエラルキー的なもの、ポジションにかかわらずどれぐらい自由に動けるかで変わってくるだろう。

最初に成果の定義に使える方法を書き、その後に「広義の会社の資産」を考える方法や、KPIの話を書く。私がいる環境は、結構曖昧な状態からはじまった。なので、曖昧な状態からどうはじめるか、という方法が多くなっている。

成果の定義に使える方法①:ロードマップをつくる。曖昧なものは曖昧なまま成果を定義できるのがメリット。

・ロードマップは管理部門の成果の前に、会社の将来的な目指す姿が曖昧なときにも使える。管理部門として「会社の資産」をどのようにつくっていくか、も表現できる。
・ロードマップは、「未来予想」ではない。「偶発的成功」と「意図的計画」を融合させるためにある。最終目的地までの道筋の仮説を共有するもの。そしてその仮説は、過去の実績等から演繹的に出せるものではない。不確実性も高くてよい。未来は既に確定しており、それを推測するためのものという立場にはたたない。
・ロードマップのいいところは、曖昧なものは曖昧にしたまま、みんなと共有できるところだ。決まったら修正すればいい。本当にこれが便利だ。
・あなたが管理本部長的な人ならば、会社の方針のうち決まっているところと決まっていないところをメンバーに伝えるために、ロードマップを頻繁に修正して、共有しよう。

詳細は別で記事がある。

成果の定義に使える方法②:クラフティング、という考え方。成果の定義は「ガイドライン」であり、逸脱も許される。該当部署のあらゆる行動を網羅した「成果の定義」をつくらなくていい

・クラフティングとは「工芸」とか「手工業」。粘土をこねて「方針」をつくっていくイメージ。
・チームをまとめる人がやることは以下

1.ガイドラインを示し「ここから先は自分たちで考えてね」と任せる
2.メンバーが実行したものを見て、以下の3つの行動のどれかをする。
2-1.ガイドライン通りなのでそのままどうぞ
2-2.ガイドラインと異なるが、今後新しいことが起きそうなので、放置する。そして、何か良い感じになったら、その方針を「ガイドライン」に取り込み、メンバーに周知する。公式化する。
2-3.ガイドライン違反で、「雑草扱いで引っこ抜く」。行動をやめさせる

・該当部署のあらゆる行動を網羅した「成果の定義」はつくれない。だから、提示した成果の定義はあくまで「ガイドライン」であり、逸脱はOKだ。むしろその逸脱行為が推奨すべきものなら「成果の定義」に取り込むほうがよい。

これも記事がある。

成果の定義に使える方法③:会社を「お金で表現する方法」に詳しくなる。すると「会社の資産をつくる」とは何か?を自分で考えて、成果を定義できるようになる。

・管理部門の責任者はCFO的なひと、財務に詳しい人がやることが多い。会社の全体像は「財務会計」とか「管理会計」という分野で把握し、それによって成果を定義することが多いからだ。私はまったく詳しくないから困った。
・だから学ぶ。学び方が難しい。良い本や師匠に出会えればいいのだが、良い本とは何か。その定義があったので、まずは紹介したい。

一般にどの分野でも、完全な初歩向けに優しい用語解説から始める入門書と、専門用語で埋め尽くされた高度な専門書は数多く出ているのだが、そこをつなぐ中間レベルの本というものがひどく少ないのである。
経済というものが全くわからず予備知識もほとんどない(ただし読書レベルは高い)読者が、それ一冊を持っていれば(中略)大筋をマスターできる。

どちらも「現在経済学の直観的方法」という本からの引用だ。この本は最高に面白いけど、今回は関係ない。ただ、「良い本」というのは、読書には慣れている人が未知の分野を学ぼうとしたときに、初心者向けの本をある程度読んだ前提で、「中間レベルのこと」を説明してくれる本なのだ。人事とか、管理部門ぐらいのジャンルでいつかこういう本を書きたい。いや本である必要はないな。ブログでいい。
・会社を「お金で表現する方法」に詳しくなるための「中間レベル」の本はこれ。これもある人から教えてもらった。

・完全に素人の自分にとって、「なるほど感」があったところだけメモしていく。ダイジェストで「(広義の)会社の資産」と「管理本部の成果の関係」を知りたい人向けだ。間違ってたらごめんな!
経営の優劣は「経常利益/資産合計額」でわかる。そしてこれは他社比較ができる。会社がもってる資産が10億円だとして、そこからどれだけの利益を生み出しているかで「効率」がわかる。株主視点だと「利益/自己資本」だけど、そうじゃなくて「経常利益/資産合計」だというのもなるほどだった。私が知りたかったのは、「会社というものは、あつめた資産を活用して、利益をつくるものだ」という切り口の考え方だった。ここから管理部門の成果の定義をこれを軸につくるのがよさそうだ、と思いついた。
経費分配率という考え方。「売上総利益(粗利)」から、人件費(労働分配率)、不動産/設備費(不動産費分配率)、販促費(販促分配率)、一般管理費(管理分配率)。残りが営業利益。人事部と労働分配率、というように、管理部門側で意思決定できそうなものが出てくる。自分たちの行動と経営の状態が結びついた「お金にまつわる指標」がつくれそうな雰囲気になってきた。「あつめた資産で獲得した粗利を、どのように分配して何に使うか、そして残りが利益」というところまで見えた。
日々の活動とつなげて目標設定するためには「一人あたり」「一坪あたり」などに分解する。「◎◎あたり」の指標を改善するときに、管理部門ができることは、「(広義の)会社の資産」をつくって有効活用してもらうこと、なのではないか。「◎◎あたり」まで分解していくと、具体的に見えるものがある。「一人あたりの売上総利益」は労働生産性と呼ばれていて、例えばこれが800万なのに、平均年収800万円にはできないよな、みたいなことがわかる。売上総利益の増加することが予想されたとして、そのときに社員数を増やさずに、何かの仕組み(=広義の会社の資産)で回るようにすることで、「一人あたりの売上総利益」を増やせないか、そのために管理部門でできることの仮説は何か、という順番で考えていく。

こんな風に考えているという具体的な事例

・こんな風に考えているという事例を書く。
・ひとつめ。いま働いている会社では、総資産に占める「土地/建物」の割合が結構高い。自社物件を持っている。物件管理は総務部の仕事だ。単なる賃貸ではなく自社物件なので、その物件を活かして「会社の強み」をつくらないといけない。この会社は「建物の周辺に住み、職住近接を推奨」している。ということは、人材獲得、もしくは求める人材が長く働いてもらうために、総務部はその資産(=土地、建物)を活用して、何ができるのか、という観点でひとつ目標設定をしてみてほしい。昨今の状況を踏まえると、テレワークでオフィス不要論という文脈もある。テレワークでもなく、通勤でもなく「歩いて行ける距離にオフィスがある」という職住近接はまだまだ使えるはずだ。ただ、人材面でいくと、人事部側が考えている成果とつなげないと考えることはできない。そこについて2つの部署ですりあわせを行うのは、管理部門の責任者の自分の仕事だな、みたいに考えていく。でもそれだけで自社物件の必要性はあるのか?賃貸でもいいよな。もうちょっと何か必要そうだ。太陽光発電もやっている。エネルギーの地産地消文脈か。これはまた違う軸でどう会社の成果に定義できるのか、掘り下げれば考えられそう。投資家目線でみたときにも、SDGs的な話でなにかありそう。ここと自社物件であることを活かした自由度とつなぎあわせて、何かできないか。これは現状の施策だけだと意味がないから、ロードマップで今後何をするかとセットなら、成果の定義としてOKでそうだ。このあたりを、具体的な「会社の状態をお金で表現した指標」をプロセスの指標として設定しつつ、試行錯誤していくという感じかな。


・ふたつめ。いま働いている会社は上場しているので、売上総利益とか、社員数は公開されている。そこから着想を得た。投資家が見ている数字と、社員が見ている数字を一致させるみたいな目標管理?の方法を人事部と経理部で考えるのどうか。ここから、自分たちの報酬も予想できたりすると面白い。これをリアルタイムに社内で共有するための仕組みは、情報システム部門の人達とか、いろんな人達の連携が必要そうだ。「会社というものは、あつめた資産を活用して、利益をつくるものだ」というのは一緒でも、社員にとっては自分の報酬とのつながりがあったほうがやる気が出るだろう。社員が自分のために頑張った結果が、株主にとっては将来的にお金を稼ぎ続けると確信できる「財務諸表では表せない会社の優位性の源泉となる資産」になっていることが見えるとよい。相反するものを目指しているけど、それが裏側では一体化していて、みたいな状況になっていることそのものが、「広義の会社の資産」か?これは部署単位ではやりにくいから、統合的な役割をする管理部門の成果の定義としては筋がよさそう。実際には、具体的な「会社の状態をお金で表現した指標」の目標設定とその裏側に言葉で表現された会社の成長仮説があり、それを目指すためにこういう仕組みがあるという順番だろう。また、「見える化」という観点から、内部統制とか内部監査ともつながってくるかもしれない。だからこれ単体では意味がない。ここも、曖昧なものがたくさんありそうだから、ロードマップをつくりつつ、関係者と話していくのがよさそうだ。

次のアクション:管理部門の成果の定義を決めるオンラインワークショップをつくるぞ!

何人かとオンラインワークショップをやってみたのですが、面白い。オンラインだから会うのも簡単だし、1対1とかで話した方が具体的な話ができて自分にも気づきがある。なので、同じようにワークショップをつくろう。興味がある人は私のtwitterをフォローしておいてください!




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