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赤い眼鏡の女の子



中学の頃にクラスメイトだった、ある1人の女の子のことを最近思い出した。

あまり口数の多くない、大人しくて、人柄の良い優しい人、という感じで、掛けていた赤い眼鏡がよく似合っていたのを覚えている。
その当時、僕は女子と全く話せなかったので、勿論その子ともほとんど会話することなく中学校生活は終わった。

高校は割と近くの適当な所に行ったので、同じ中学の人も7〜8人ほどいた。その中に、あの赤い眼鏡の女の子もいた。

クラスは違ったのであまり会うことはなかったが、入学してから数ヶ月後、久々にその子を見かけて驚いた。見た目がめちゃくちゃ変わっていたのだ。
中学の時は膝下まであったスカートが、太ももが半分見えるくらいまで短くなっていた。履いているソックスも、長い物から、その時流行っていたくるぶしまでくらいの短い物に変わっていた。前髪で隠れていたおでこも出していた。そして、赤い眼鏡を外して、コンタクトにしていた。

いわゆる“高校デビュー”というやつだろう。
恐らく彼女は、それまでの真面目で大人しい感じが嫌で、明るくてハツラツとした女の子に憧れていたのかもしれない。いや、憧れていたというよりかは、本当の彼女は実はそんな感じの人で、高校で初めてそれを公にしたのかもしれない。

いずれにしろ、彼女は変わった。
部活も、中学の時は文化部だったが、高校ではダンス部に入っていた。

ダンス部は、僕の高校の中では、いわゆる“ギャル”みたいな感じの女子の巣窟で、“明るくてハツラツとした女の子”がたくさんいた。

彼女は、そのダンス部の女子とよく連んでいて、中学の時よりもずっとよく話すようになり、ずっとよく笑っていた。

それはすごくいいことなはずなのに、僕はなぜか少し悲しかった。

恐らくそれは、彼女が凡庸な人間になってしまった気がしたからだ。

ダンス部に所属している女子は、大抵スカートとソックスが短く、ノリが軽くて明るくてうるさい、典型的な“女子高生”というような人ばかりで、僕から見ると、みんな同じように見えていた。

そして彼女も、ダンス部に所属し、同じようにスカートとソックスを短くして、ノリが軽くて明るくてうるさい女子高生になった。

確かに中学生の頃の彼女は大人しくて目立つ存在ではなかったかもしれない。でも、それはそれで良かったというか、その当時でも十分魅力はあったと思う(ちなみに別に好意を抱いていたわけではない)。しかも、学年で赤い眼鏡をかけていたのはその子だけだったし、いや、別にそれだけが彼女の個性というわけではないんだけれど、大人しくても十分存在感はあった感じはするのだ。

勿論、これが余計なお世話だということはよくわかっている。彼女がしたいようにするのが1番だし、そこに僕が何かを言う筋合いはない。ただ、感想だけ言うとすれば、なんか寂しかった。

あの赤い眼鏡、まだ持ってるのかな。まあ、流石に捨ててるか。

そういえば、僕が中学の頃読んでいたおもちゃ情報誌の“クアント”という雑誌があって、7、8年前に廃刊になってしまったんだけど、最近思い出してまた読みたくなった。でも、当時買っていた雑誌は全て捨ててしまったので、たまに出先で古本屋に寄って探してみたりするけど、未だに出会ったことはない。
なんで捨てちゃったんだろうなあ。あれ、面白かったんだよな。いつかまた読めるといいなあ。




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