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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二話(24/25) 緑の森の闇の向こうに

<これまでのあらすじ> 環境保護テロ組織は森の奥にアジトを構えていた。レイターの時間稼ぎによって連邦軍の特命諜報部がテロ組織を摘発しテロリストのリーダーを逮捕した。(1)~(23) 

「ただいまぁ」
 フェニックス号の居間にレイターの間延びした声が聞こえた。
 わたしは大急ぎでタラップへと走った。レイターとダルダさんが二人そろって帰ってきた。

「よっ、約束は守ったぜ」
 レイターの笑顔を見たら涙がでてきた。よかった。本当によかった。

「あれ? 今度は熱烈歓迎はなしかなぁ」
 レイターがハグする格好をした。
「バカ」
 そう言いながらわたしは笑っていた。

「ガハハハ。なかなかのロマンとスリルだったよ」
「あんたが軍用ヘリと熱デギ放射砲を見つけてくれたおかげで助かった。ありがとよ」
 レイターがわたしに礼を言った。
「どういたしまして」
 わたしは少し誇らしかった。留守番だったけど、わたしはわたしの仕事をやり遂げたのだ。

 だから次のレイターの言葉には納得いかなかった。
「ティリーさんは運がいいよな。あんなに早く見つけられるとは思わなかったぜ」
「運がいい? 違います」
 わたしは即座に否定した。

「あん?」
「ちゃんとアルバ関数を概算して、怪しい数字をピックアップしたんです」
 つい、ムキになってしまった。わたしだってがんばったのだ、運だけじゃないことは伝えておきたい。
 でも、言ってから後悔した。子供みたいってまたレイターにからかわれるに違いない。

「へぇ、そうだったのか。あんた凄いな」
 レイターが素直に感心した顔でわたしを見た。いつものようにちゃかさない。
 レイターの声がドキッとするほどいい声だった。変な感じだ。照れてしまう。

 ダルダさんがレイターのわき腹を突っついた。
「ガハハハ。ますます『愛しの君』に似てるじゃないか」
『愛しの君』って誰のことだろう、と考える間もなく、
「うるせぇ」
 いきなりレイターが銃を引き抜いた。

「レイター! 止めて」
 わたしはあわてて叫んだ。
「おっととと、間違えた。猛獣には鞭だった」
 そういいながらレイターは電子鞭をしならせた。

 ニュースでは環境テロ集団NRのパキ星支部長が逮捕され、基地から大量の武器や兵器が押収されたと伝えていた。

 これだけの武器の押収は初めてでNR本体にもかなりの影響を与えるだろうということだった。
 NRの摘発にダルダさんとレイターの二人が噛んでいるのは間違いないと思うのだけれど、どのメディアにもその話はでていなかった。

 ダルダさんはテレビに出たのがうれしかったらしく、何度も繰り返し同じ話をしてくれた。「ロマンとスリルだ」と言いながら。
 でも、肝心の摘発のことはよく知らないようだった。

 そしてレイターは、

「ふああ、きのうさぁ、徹夜だったんだ」
 とあくびをするとそのままソファーに倒れ込み、眠り続けていた。

 眠っているレイターを横に、ダルダさんがわたしに話しかけた。
「こいつ、すごいだろ?」
「ええ」
 素直にわたしはうなづいた。
 テレビに映っていたレイターは、いつもとは別人のように格好よかった。
「だから俺は心配してないんだ。ガハハハハ」     最終回へ続く

ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」