銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十六話(1) 将軍家の鷹狩り
・第一話のスタート版
・第一話から連載をまとめたマガジン
・第二十五話「正しい出張帰りの過ごし方」
あすの仕事は、星系外航行船グラードを購入して下さる取引先との契約。
「ティリーくん、明日は、フェルナンド君の船で行ってもらうことになった」
と課長に言われた。
フェルナンドさんの名前を聞くのは初めてだ。
*
ベルが近づいてきた。
「ティリー、フェルナンドと行くんだって?」
「フェルナンドさんって新しい人かしら」
「社長のボディーガードよ」
驚いた。
「どうして社長のボディーガードが、わたしに?」
「社長が長期休暇を取るんだって」
ベルは社内の事情に詳しい。
「社長のボディーガードだなんて、緊張しちゃうわ」
ベルが驚くことを口にした。
「大丈夫、フェルナンドはあたしの従兄弟だから、ティリーのこと頼んでおいたよ」
「ええええっ?」
「前に言ったでしょ、従兄弟がボディーガード協会のランク3Aで、社長の護衛してるって」
「社長って、うちの社長のことだったのね。ねえ、フェルナンドさんってどんな人?」
不安になって聞く。
「仕事もできるし、フェル兄は誰にでも優しいから心配ないよ。それに、かっこいいし、わたしが代わってほしいぐらいだわ」
*
フェルナンドさんから事前に打ち合わせをしたい、と連絡をもらった。
レイターは出発前に打ち合わせなんてしない。フェニックス号に乗ってから話せばいいという態度。
やっぱり、社長のボディーガードは違う。
少し緊張する。警備担当控室に約束の時間よりより早く着いた。
部屋の前まで来ると、嫌な予感がした。部屋の中から聞き慣れた声がする。
「てめぇ、何たくらんでいやがる」
レイターの声だ。
わたしが部屋にはいると、レイターが男性の胸ぐらをつかんでいた。
「何してるの?! 止めなさいよ!」
レイターがちッ、と舌打ちしながら手を離した。
「ティリー・マイルドさんですね。初めまして、フェルナンド・ネフィルです」
服を整えながらフェルナンドさんがあいさつをした。
美形だ。
きりっとした目元がベルに似ている。
髪の毛を一筋の乱れもなくピシッっと後ろで束ねている。整ったその姿はまさにボディーガード。
だらけた格好のレイターとは大違いだ。
「レイターさん、言っておきますが、僕は会社の指示でこの仕事を担当することになったんですから」
レイターが不機嫌そうな顔をしている。
「ったく、俺のティリーさんに手を出すんじゃねぇぞ」
「レイター、その言い方止めてって言ったでしょ!」
自分でもびっくりするほど大きな声を出してしまった。
「ふんっ!」
レイターは怒りながら部屋から出ていった。
「ごめんなさい。レイターが失礼なことをして」
わたしは頭を下げた。
「あなたが謝ることではありませんよ」
フェルナンドさんが、にっこりと笑った。 (2)へ続く
・第一話からの連載をまとめたマガジン
・イラスト集のマガジン
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」