銀河フェニックス物語<恋愛編> 第一話(最終回) 居酒屋の哲学談義
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銀河フェニックス物語<恋愛編> 第一話(最終回) 居酒屋の哲学談義

48ノ月(ヨハノツキ)
代金の支払いをめぐってティリーとレイターは口げんかのような状態になってしまった。
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<恋愛編>第一話「居酒屋の哲学談義」まとめ読み (1)(2)(3

「どうしてティリーが謝るの?」
 チャムールの優しい声で、さらに申し訳ない気持ちが増幅する。

「折角、楽しい会を開いてもらったのに、雰囲気壊すようなことになっちゃって、ほんとごめんなさい」

n13ティリー3s@泣きそうむ

 下を向いたまま再度謝る。

「ティリー、みんなの顔を見てごらんよ。楽しんでるから」
 ベルの明るい声に誘われて顔を上げる。

 見回すと、みんな笑っている。
「お、お前ら、何、面白がってやがる!!見世物じゃねぇぞ」
 レイターが一人ずつ指をさしながら、怒った声を出した。

ミニ顔口開けて怒る

 アーサーさんが落ち着いて応じた。
「ひじょうに興味深いやりとりだった。それで、レイター、おまえはティリーさんに何て答えるんだ」
「ったく、別れるわけねぇだろが」
「おまえがそう言っても、それには二人の合意が必要だ」

 レイターがわたしの目をじっと見つめた。

「わかった約束する。もう、悪いことはしねぇ。だから、さっきの言葉、撤回してくれ」
「違法なお金儲けもしない?」
「しない」

 断言するレイターを見て、わたしは小さくうなずいた。

 アーサーさんが付け足した。

n31アーサー軍服にやり横顔

「ティリーさん、こいつは法は破っても自分で決めたことは破らない奴ですから。信頼して大丈夫です。これは冗談ではありません」

 フェルナンドさんが、ベルに何かささやいていた。

ベルとフェルナンド横顔カラー

 ベルが店長を呼んだ。
「お会計をお願いしたいんだけど、きょうは、この二人の分をただにしてくれる? 二人の門出のパーティーだから」
 そう言ってわたしとレイターを手で示した。

 店長がうやうやしく礼をしながらたずねた。
「他の皆様方の分も、今回は結構ですが」
「いいのよ。きょうはみんなからのお祝いなんだから。ここでただにされると困るのよ。おいしかったから、また利用させてもらうわ」
「恐れ入ります。今後とも、ごひいきに」

 店長が深々と頭を下げて伝票端末を操作した。
 割り勘って言ってたけど、ほんとはおごってくれるつもりだったことをその時知った。

 申し訳なくて恐縮する。
「いやあ、悪りぃね」
 レイターはうれしそうに笑った。

 思わずため息が出る。
 こんなに価値観の違う人と、この先つきあっていけるのだろうか。

 帰り道、レイターに自宅まで送ってもらう。
 横に並んで歩きながら考える。どうしてこんな面倒くさい人のことを、好きになっちゃったんだろう。

 レイターがわたしの顔をのぞきこんだ。
「厄介なことになった、って顔してる」
「わかる?」
「わかるさ、俺も同じこと考えてたから」
「同じこと?」

n27 シャツ@微笑バックなし

「どうして、理解不能なあんたじゃなきゃダメなのか」
「その通りよ、どうしてレイターじゃなきゃだめなのか。わからないわ」
「しょうがねぇんだ」
「しょうがない?」
「恋は落ちるもんだ。自分の意思じゃねぇ」

 そう言われても、レイターとつきあう前、わたしは相当悩んだ。
「わたしは、自分の意思で選択したつもりだけど……」

出会い34ティリー横スーツ逆

「恋の始まりに理由はねぇ。理由を探すから動けなくなる」
 腑に落ちる言葉だ。
 色々悩んで考えたけれど、結局、最後は勢いだった

「そうね。レイターの好きなところと嫌いなところを数えたら、嫌いな方が多いもの」
 わたしは指を折って見せた。

「なんじゃそりゃ。ティリーさんが別れると言っても、悪いが、俺は粘着気質だぜ」
「知ってる」
 この人は、七年前に亡くなった前の彼女のことを今も想ってる。

フローラお姫様抱っこ結婚式バックなし白黒

「だから簡単にはあんたのことを手放さねぇ」
 さらりと歯の浮くようなことを誰にでも口にする。
「不特定多数の女性が好きなくせに」
「そうさ、銀河中の女性が大好きさ」
 女好きな点は素直に認めるんだ。軽く不快感が湧く。

 わたしの目をレイターがじっと見つめた。
「その中で、ティリーさんを特定したんだ。俺の彼女って」

 レイターの瞳に、わたしの姿が映っている。
 うれし過ぎて、恥ずかし過ぎる。顔にすべての血液が昇ってきた。
 口元がにやける顔をレイターに見られたくない。

「バカっ」
 わたしはくるりとレイターに背を向けた。

 レイターは肩をすくめて空を見上げた。

「バカ、って言われる理由がわかんねぇんだよな。ったく理解不能だ。俺の可愛い彼女は」

 ポーーーーー。

 汽笛とともに宇宙空港から深夜便が飛び立った。
 航行灯が光の筋となって夜空へと吸い込まれていく。

星空見上げて@

その美しい光を、二人は無言でしばらく見つめていた。         (おしまい)

<恋愛編>第二話「麻薬王の摘発」へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ)

ティリー「がんばりますので、よろしければ、サポートをお願いします」  レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」          ティリー「あなたの分じゃありません」

48ノ月「ほんとにうれしいです。ありがとうございます」
48ノ月(ヨハノツキ)
ヨハノツキです。舞台は宇宙。恋あり、笑いあり、アクションありのイラスト付き小説「銀河フェニックス物語」書いてます。20年1月1日から毎日更新中。目標の源氏物語の百万字を達成。フォロー0の理由は→https://note.com/48nomoon/m/m0c988bdc307d