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銀河フェニックス物語 <恋愛編>  第二話(3) 麻薬王の摘発

レギ星からレイターが帰ってくる。ティリーは時間より早く迎えに行った。
銀河フェニックス物語 総目次 
<恋愛編>第二話「麻薬王の摘発」まとめ読み版 (1)(2

 帰ってきたフェニックス号の前に立つとマザーがドアを開けてくれた。
 操縦席、というか居間へ向かう。

 話をするアディブ先輩とレイターの姿が見えた。

n39ソファー真面目アディブ大

 思わず足を止める。
 まただ、レイターが普段見せない真面目な面持ちをしている。
 船の話をしている時とも違う。わたしには見せない、アディブ先輩にだけ見せる表情。

 せっかく久しぶりにレイターの顔を見たというのに、心が黒いペンキで塗りつぶされていく。 

 麻薬王、というワードが聞こえた。二人は今回の出張の話をしているだけだ。なのに、わたしったら、ひがんでいるんだ。どうせわたしは聡明じゃない。

「あら、ティリー、レイターのお迎えに来たのね。遅くなってごめんなさい」

横顔逆一文字

 アディブ先輩がわたしに気付いた。

「お帰りなさい。ご無事でよかったです」
「う~ん、そうね」
 どうしたんだろう。歯切れが悪い。
「じゃ、レイター、いろいろとありがとう。私はお邪魔なようだから、これで失礼するわ」
「お邪魔だなんて、すみません」
 わたしの顔に出ていたのだろうか。出ていたのだろうな。どす黒い感情が。

 アディブ先輩が船を降りていった。

 レイターと会うのは、一週間ぶりだ。もっと長く会っていない気がした。ずっと心配していたのだ。やっと二人きりになれた。

「お帰りなさい。会いたかった」
 わたしはレイターに思いっきり抱きついた。

テーピング ティリー抱きつき

「っつつうう」
 レイターが痛そうに顔をしかめた。
「ど、どうしたの?」
 わたしはあわてて身体を離した。

「油断した。俺としたことが、この熱烈歓迎は想定してなかった」
「ケガしてるのね? どこをケガしたの?」

n38 @4スーツやや口

「ちっ、せっかく、アディブさんに黙っておいてもらったのに」
 アディブ先輩の応対がどことなくぎこちなかったことを思い出す。口止めしたんだ。レイターは、ケガをわたしに隠すつもりだったんだ。

「大丈夫なの?」
「大した事ねぇよ。ちょっとドジって、レーザー弾がかすったんだ」
 袖をまくるときれいに右腕に包帯が巻いてあった。これはかすり傷じゃない。わたしったら、この上から力を込めて触ってしまったんだ。

「痛む?」
「平気平気、アディブさんがすぐに手当してくれたから」
 アディブ先輩は医師免許を持っている。
 レイターの腕に包帯を巻く先輩の姿が頭に浮かぶ。

 レイターを治療してくれたのだ。アディブ先輩に感謝しなくてはいけない。
 なのに……イライラがさらに募ってきた。

「ティリーさん、何て顔してんだよ。折角の再会だぜ」
「突入したの?」
 詰問のような口調になる。
「あん? 突入?」
「麻薬王のアジトに」
「しねぇよ。突入したのは銀河警察さ。ニュースでやってただろ」
「じゃあ、どうしてこんなケガするのよ!」
 もう自分が抑えられない。
「目の前でドンパチやってんだ、流れ弾も飛んでくるさ。俺は死んでもアディブさんを守んなきゃなんねぇし」

n28下向き@4やや口

 レイターはアディブ先輩をかばってケガをしたんだ。仕事なのだ。仕方がない。けれど、鼻の奥がツンとして、涙が出てきた。これは、悔し涙だ。

「死んでも守る、なんて言わないで!」
 レイターが本当に死んでいたら、わたしはアディブ先輩を恨まずにいられない。

 レイターの仕事は死と隣り合わせだ。わかっているのに、わたし以外の女性をかばってレイターがケガしたことが許せない。そして、それを隠そうとしたことも。

 いや、わたしがこうやって怒るからレイターは隠すんだ。
 わたしは心が狭すぎる。      (4)へ続く

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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」