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オーケストラ における フィジカル・ディスタンシング

物理的距離の意で「フィジカル・ディスタンシング」としましたが、いわゆる「ソーシャル・ディスタンス(ディスタンシング)」が、オーケストラ公演でも意識されています。飛沫距離云々は他の記事に譲るとして、フィジカル・ディスタンシングの【効能・効用】【メリット】を意識したことはありますか?

オーケストラの “配置” は、その歴史とともに型が決まってきて、奏者間を1.5m 空けるなどやはり異常なことなのです。異常と思うけれど、それが不正解と一概には言えません。なぜなら、今まで試してこなかったから。

実は、コロナ禍以前から「フィジカル・ディスタンシング」に近いことを実践していたオーケストラがあります。デア・リング東京オーケストラ(以下、DRT)です。

どうです? 常識から逸脱した配置でしょう?

この DRT は、「お互いの音を聴く」ことを特に意識しています。こうして半円形(馬蹄形)ではなく横一列に並んだら、いつも使えるはずの視覚情報は頼りにできません。だから、お互いの音を聴くようになり、奏者全員が “指揮者の耳” で演奏できるようになります。

色々なオーケストラを録音した経験から言えることは、「奏者は、お互いの音を聴いているようで実はそれほど聴いていない。もしくは、物理的に聞こえない」ということです――異論はあるでしょうが、例えば目隠しで合奏する場合、いつもと違う感覚が花開くことを実感するはずです――視覚情報に頼るとお互いの音を聞かずとも演奏できるので必要以上の音量で演奏してしまい、結果として他の音が聞こえなくなる……もし、物理的距離を確保することによって、お互いの音をもっと注意深く聴くようになったら?

――「フィジカル・ディスタンシング配置」から生まれる新しいオーケストラの響きに、ちょっと期待しているのです。


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