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侵略者 第二章

"Wake Me Up Before You Go-Go"

目が覚めた時、まだ旭日は登っていなかった。
枕元のスマホに眼を移すと、4:20 と大きな文字が現れ、あまりの眩しさに眼を逸らした。すると、なんだが眼球が突っ張るような感覚があって、ビリビリと瞳が裂けるような音がした気がした。恐ろしくなって、急いで鏡の前まで駆け込んだが、ちゃんと自分の顔はこの目で見えた。
「よかった、失明しなかった」 と、ひとまず安堵した。

最近、私疲れてるな。
こりゃ、よふかししてまでしてドラマを見過ぎたなって。
そう、自分に言い聞かせた。
本当は自分の体がどうなってるかなんて知る由もない。
自分の生理がどのタイミングで来るかすら未だによく分かっていないような私だ。自分の家のルーツだってよく分かってない。それに比べて、あのジャックは自分の家系のルーツについてすごくよく気にしている。ちょっとヒステリーなんじゃないかと思うぐらいだ。なぜ、あの地域の人達ってこうも民族意識が強いのだろうか。私には分からない。
そりゃ、私だってバイトの給料の低さについて社会に対して文句を言ってやりたいことだってある。未だに男女の格差はあると思うし、それを社会に対して大きな声で言ってやりたい気持ちもわからなくもない。ただ、それで人様に迷惑をかけるのはやっぱり違うよ。
自己主張のために他人に危害を加えてまでして自分を通す、あのジャックの生き様には多少の憧れを感じつつも、やっぱり共感はできない。いざ自分が当事者になって、同じことをやれだなんて言われても、私には絶対できないという自信がある。そんなしょうもない自信、無くてもいいんじゃないのなんて思ったりもするけれど、でもそこは少し誇ってみたい。私の自分が思う唯一の長所でもあるからだ。

謙虚な心はアジア人女性の美徳だ。なんて言われても、そもそもアジア人という響きがなぜだかピンと来ない。私は自分がアジア人の一部であるなんて言われても、心の底では理解できない。アジア人という枠組みに共感することができない。説明されても、それは到底受け入れることのできない概念だよ。意味が分からない。

そうこう考えているうちに、ジャックからLINEが来た。

12月の24日、高田馬場で会いたい

だそうだ。

24日。24日ってなんだっけ、と少し考え込んで、やっとその意味が分かった時、私は久方ぶりに高揚して、
ベッドの上で放尿をした。


To be continued…→


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