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1年で77万円かけた私の不妊治療は終わった

最初に伝えておきたいのだけれど、私には今11歳になる息子が1人いるので、やむを得ず子どもを持たない選択肢をした人に比べればなんてことないかもしれないし、私以上に多くの時間とお金をかけた人もいると思う。だから、自分がどれだけ辛いかをアピールしたいわけではなく、今の気持ちをまとめておこうと思っただけだ。
(ちなみに、私は30歳で第一子を出産。35歳で妊娠後稽留流産の経験があります)

1年前の40歳のころから重い腰をようやく上げて不妊治療を始めた。そもそも私は積極的に2人目が欲しかったわけではなく、夫の希望と息子が「弟が欲しい」とあまりにも言うので、「ならばやるか!」と言うくらいの気持ちだった。正直、私自身はどちらでもよかった。

いろいろな検査をしてみて、結果としては、私も夫も年相応によくないことがわかった。11年の月日は、2人の体をきちんと老化させていたようだ。「人工受精まではいいけど、顕微授精はちょっと抵抗あるかも…」なんて言っている場合ではなかった。
医者に言わせれば、「顕微授精しかありません」と言うことだった。

※もちろん担当の先生はこんな冷たい言い方はしないです。ただ、家に帰って夫婦で話しあった結果、つまりこう言うことよねと解釈したのが上記の言葉です。

不妊治療の痛みはネット上にたくさん書かれているので、正直ビビっていたが、終わってみれば耐えられないほどの痛みはあまりなかったように思う。卵管造影検査も元々詰まっていなかったせいかそこまで痛くなかったし、2週間ぐらい毎日病院に通って打った筋肉注射も、日頃溜めていた脂肪のせいかあまり痛くなかった。採卵は思ったより痛かったけど。

ただ、卵を増やす過程で、超音波で見たときには17個くらいあったはずの卵が、採卵では4つになって、子宮に戻せる卵には1個しかならなかった。あんなに毎日注射を打って増やしたのに、1個しか凍結できなかったと聞いたときにはやっぱり悲しくなった。

胚移植から9日目に血液検査をして、着床しなかったという結果を聞いても「やっぱりそうか」程度だった。それなりにグレードの高い卵だったけど、やっぱり無理だったか。
高度医療を使ってもできないものはできない。それが命というものなんだと思う。人間は神様じゃないものね。


そして今、自分では一人っ子でいいと思っていたのに、もやもやしている気持ちはなんなんだろうと考えています。

思えば、私は不妊治療をすれば、いつかこんな気持ちになるかもしれないと最初からわかっていたような気がする。ならば、治療せずになんとなく「気づいたら一人っ子になっちゃったんだ」ってことにしておきたかったんだと思う。治療を始めたら、どうしたって赤ちゃんを無事に産んで抱っこするのがゴールになってしまう。そして、それ以外は全て途中棄権になってしまうことはわかっていたんだ。


フラフラになりながら走る駅伝の選手が頭に浮かぶ。その横で併走しながら棄権をするように声をかけるコーチ。決して選手には手を触れずに何かを懸命に話している。お正月にのんびりみていたあの景色は、今の私の胸のうちを表しているようだ。

選手の私が言う
「コーチ、まだ頑張れますよ。私、そこまで辛くないですから」
コーチの私が言う
「いや、十分頑張ったよ。別の人生もあるんだし、今回はここでストップしよう」
選手の私が叫ぶ
「いやでも、チームのみんながタスキをつないでくれたんですよ! ゴールで私のこと待ってくれてるんすよーーー!」

バサッ(ベンチコートがかけられる音)

そして実況アナが言う
「これはもう、棄権しかないのでしょうか!? 
コーチが今、今、アーーーーッ、選手の肩に触れました!
これは途中棄権です!無念の棄権!!」

そして私は病院から「凍結胚 0」という紙をもらって、自分で自分にベンチコートをかけました。

言い訳はいくらでもある、そして後悔もたくさんある。
でも、それが私の人生。そう思って前を向いて歩こうと思います。

心の整理をするために、今までたまった領収書の計算をしてみました。
(これはもしダメだったら、絶対にやってやろうと思っていたことの1つだ。)
合計772,000円。多いようで思ったより少なかった。
でも、FENDIのピーカブーくらい買えちゃうね。


もし女の子が生まれたら、可愛い洋服を着せてあげたかった。
息子(ひ孫)を可愛がってくれている夫の祖母が喜ぶ顔が見たかった。
年下の子に優しい息子がどんなお兄ちゃんになるのか楽しみだった。
4人兄弟の長男として育った夫にもう1人子どもを産んであげたかった。
もうどれもできないと思うと、ただただ悲しい。


私は「だから早く子どもを産むべきだ」とか、「せめて卵子だけは凍結しておくべきだ」とかを言いたいわけではない。ただ、女性が子どもを産もうが産まなかろうが、1人産もうが10人産もうが何も言われない世界に住みたい。心からそう思う。

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