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#29「寄生獣」スキスキ倶楽部

 「一番好きな漫画はなに?」と問われると、即答で「寄生獣!」と答えている。もちろん、他にも数えればキリがないほどあるのだが、至高の一冊は寄生獣以外考えられない。

 漫画に詳しい人からすれば、また王道を行ったものだと思われようか。しかし、なんとも意外に、そして遺憾にも若い世代に寄生獣という作品は馴染みのない漫画となっているのである。実際、周りにいる私と同世代の人に聞いてみると、アニメや実写映画でしか知らないというのがほとんどだ。

 私は、そう言われる度に、絶対に寄生獣を読めと口うるさく勧めている。そしてその度に、なぜこの魅力が伝わらないのかと不思議に思っている。どれだけ煙たがられようと、私は全人類が寄生獣を読むまでこの勧誘行為を意地でもやめない。

フフ・・・・・・はずかしくて・・・・・・とても人に言えない夢・・・・・・

 寄生獣という漫画が若い世代にあまり浸透していない理由として、その絵柄と長年の非メディアミックス化があげられると思う。若干グロさがあり、かつお世辞にも柔らかいと言えないタッチの絵と表紙は、たしかに好き嫌いの分かれる画風であると思う。また、ハリウッドとの権利契約の事情などもあり、90年代前半の連載でありながら、アニメ化、映画化は2014年になってようやく実現し、およそ20年間漫画でのみの展開だった。
 連載当時学生、社会人で読んでいた方々の子供世代に当たる我々にとって、生まれる前でかつアニメになっていない漫画作品に馴染みがない事は当然かもしれない。

 しかし、時代が移ろうと、名作と言われる作品には色褪せない魅力があることは間違いない。我々、アニマックスで「らんま1/2」の再放送を見ていた、明日花キララ世代の心にもきっと刺さることだろう。

フフ・・・・・・勢いあまって2周しちまったぜ

 寄生獣は、数ある漫画作品の中でも異彩を放っている。前述のとおり、ハリウッドとの契約の関係上、20年メディアミックス化がされなかった。にもかかわらず、2013年時点での累計発行部数は1100万部と文句なしベストセラー作品であった。何度も言うが、非メディアミックス化であるにもかかわらずだ。2020年現在では、2400万部を突破するほどに至り、もはや読んでいないことの方が恥ずかしいまである。いや、実際はずい。読んでいない種は食い殺されてしまえ。

・・・・・・この前人間のまねをして・・・・・・鏡の前で大声で笑ってみた・・・・・・なかなか気分が良かったぞ・・・・・・

 寄生獣の魅力は、全10巻という短さで展開される、あまりに濃厚なストーリー。これに尽きる。今の時代で人気を博している、名作といわれている漫画。思い浮かべてみると、大体が30巻をこす巻数となっている。なんなら30巻前後でまとめてもらえていたら「短くて良いな」と感じるくらいだ。

 長い作品がどうというわけではない。人気があるからこそ長期連載出来るわけだし、読者からすれば好きな作品は終わって欲しくないと思うことは必然だ。しかし、せっかく面白いのに、長々と続いたせいでだらけてしまうと感じる人もいるだろう。

 その点、寄生獣はコンパクトに上手く風呂敷を畳んでいる。キャラクターそれぞれの成長や変化がサクサクと、しかし濃密な内容として読み取れる。例えば、主人公・新一の精神面での変化、ミギ―に徐々に芽生えていく感情のようなもの、パラサイト田村玲子の考え方など、読了後「え......これで10巻......?」と驚きのあまり、また初めから読んでしまうほどだ。断じて嘘ではない。

おれはちっぽけな・・・・・・1匹の人間だ せいぜい小さな家族を守る程度の・・・・・・

 私には何も無い。ごく普通の家庭に生まれ、人に褒められるような特技も無ければ、自慢できる武勇伝も無い。まだまだ短いとは言え、振り返ってみても華やかに色づけられた人生ではない。
 しかし、これだけは確かに言える。肌の色や目の色、言葉や信仰の違いなどほんの些細な違いにすぎない。みんな地球で生まれてきたんだろう?そして何かに寄りそい生きている。だから、みんなで寄生獣を読もう。大丈夫。一人じゃないから。悲しくなったら、私の胸を貸してあげよう。嬉しいことがあったら、一緒に笑っていたい。寄生獣を読んだら、その感想、教えて欲しいな。

地球上の誰かがふと思ったのだ。「寄生獣」を広めねばと・・・・・・。

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