戦う男はムダな争いをしない

戦う男はムダな争いをしない

大城あしか

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今朝、関東地方は大荒れの天気に見舞われて、首都圏の通勤電車のダイヤを混乱へと巻き込んだ。

僕は今朝、所用で都内へ出かける予定があり、なかなか「引きが強いな」と自分の悪運を憂いた。

しかし、どうしたものか家を出る数十分前には雲から晴れ間がのぞき、みるみるうちに天候は回復。

日頃の行いのおかげかな。と妻に言いたくなる気持ちを抑え、出発の準備をする。

こういうことを言うとラッキーが逃げて行ってしまいそうな気がしたからだ。

しかし、テレビのワイドショーでは各方面の鉄道遅延情報がテロップで流れていたので、予定より20分ほど早く家を出た。

最寄駅に着くと、通常なら通勤ラッシュは過ぎている時間にもかかわらずホームには3列で4、5人の列ができていた。

この光景を見るのも久しぶりだな。

そう思いながら、私も電車を待つ列へと並ぶ。電車がホームへ流れ込んできた。やはり、たくさんの乗客を乗せていた。

満員電車に乗るのは、1年ぶりくらいになるだろうか。案の定、次の駅で乗客はさらに詰め込まれる。おしくらまんじゅう状態。

何駅過ぎた時だろうか。
右後ろの方からサラリーマン2人の怒号が聞こえた。

A「足踏んでんだろ!」
B「ああん?@#$%(もう一人の声は聞き取れず)」
A「オマエ、次の駅で降りろよ。」

ああ、久々に乗った通勤電車でケンカ車両に当たるとは。
やっぱり僕は引きが強い。

チラ見をすると、少しガタイの良いマスク姿のAさんは40代くらい、もうひとりのBさんは眼鏡をかけた白髪混じりの50代くらいでお互いスーツを着ている。

大体こういうケンカは次の駅に着くまでお互いが言い合って、周りの人から止められて収まるものだけど、この2人はまったく言葉を交わさずに、次の駅に着いた。

どうせ悶着して電車から降りないだろう。

と、僕は高を括っていたのだが、サラリーマンのふたりはホームへ降りた。

A「オマエ、オレの足踏んだだろ!」
マスクを外して怒鳴る。

B「しょうがないじゃないか、混んでいるんだから」
Aさんより声量は小さいが声を張り上げる。

A「足、踏んだじゃないか!」
なんか同じようなことを言っている。とにかく文句が言いたいようだ。

B「それは、悪かったよ、ごめんなさい」
会話にならないと思ったのだろう。すぐに詫びを入れた。

驚いたのはここからだ。

B「さあ、電車に乗ろうや」
なんと、サラリーマンBさんはAさんの肩を組んで、電車へと歩を進めたのだ。

A「なにすんだよ」
怪訝な表情を浮かべながら少し抵抗する。

B「乗ろうよ、急いでるんだろ?」
満面の笑みを浮かべながら、Aさんの肩を組んだまま電車の中へ乗り込んできた。

電車に乗った二人は無言になり、電車のドアは閉まり何事もなかったのように電車は走り出した。

僕はAさんの真後ろに陣取ることになり、因縁を吹っかけられたら面倒なので、体を少し反らしてぶつからないようにしていた。

そのため、視線は彼の後ろ姿に釘付けになったのだが、外したマスクを持っていた手が心なしか震えていた。

弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものだ。興奮していたであろうし、相手の堂々たる態度に、心の底では敗北感を感じていたのかもしれない。

それにしても、Bさんの対応は素晴らしかった。

喧嘩を売られて無視するのでもなく、その場から逃げもせず、堂々と真っ向に立ちはだかった。

そして、真っ正面から謝った。実に肝が座っていた。

それは、社会で戦っている企業戦士の姿であった。あの笑顔を見た瞬間、Bさんの器の大きさが垣間見えた気がする。

そして、なんだか輝いて見えた。戦う男はムダな争いはしない。

これから会社へ向かい、与えられた使命が待っているのだ。職場という戦いの場へ急がねばならない。

命をかけて戦う(働く)彼の生き様を、あの笑顔が語っていた。

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大城あしか
2021年9月にゼロから立ち上げた出版社、株式会社西葛西出版の副社長 初の自社出版書籍「〝サッカー旅〟を食べ尽くせ! すたすたぐるぐる 埼玉編」販売中! 役員xライターのパラレルワーカー。機嫌良く、人にやさしく/OWL magazine/アビスパ福岡ゆるサポ/埼玉西武ライオンズ