あしかのスジなし短編集

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スイッチが押された時

歯車が狂い出したのはいつからだったのだろう。
いや、そもそも今ここに存在している現状は「狂った結果」なのか。

今日もいつもと変わらない一日が始まろうとしている。
駅へと続く細い歩道に収まりきれない多くの人たちが、車道を覆い尽くすかのように群れをなしている。

それらは、サバンナに住む動物たちが命を繋ぐためにおこなっている大移動のような様相を呈している。我々も生きるために移動をしているのだ。

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もし思っていることがすべてが叶うなら

もし思っていることがすべて叶うなら、不安になる必要なんてない。
もし思っていることがすべて叶うなら、心配することなんてない。
もし思っていることがすべて叶うなら。

「思っていることはすべて叶うんだよ」

酔いが回ってきたのか、ノゾムは唐突にそう話し出した。

「おい、なんだよ急に。そういう自己啓発系の話はいらないよ」

俺はノゾムの言葉に身構えて、とっさに返事をした。

「自己啓発じゃねえよ。本

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雨音が奏でるセレナーデ(1)

雨の音が心地よい。

嘘だ。本当は嘘だ。

雨の音は孤独をさらに掻き立てられるから嫌いだ。でも、雨は好き。

窓の外を眺めながら、ヨウコはそう考えていた。

「どうして休みの日に雨が降るんだろう」

部屋にはヨウコしかいないのに、そうつぶやいた。

雨の休日。もともと予定などないのだが、ヨウコは窓の外を降りしきる雨に嫌悪感を感じていた。

洗濯物を外に干すことができないから?いや、普段から部屋干し

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