能登に向かって③

今日は3日ぶりに外に出た。人の多いところを歩いてしまったせいか、とても気疲れして、なんだか気持ちが重たい。親知らずを抜いた後の右奥もまだずきずきと痛む。なんだか近頃疲れてばかりだ。

前回の続きから。猪谷から1時間ほど電車に乗って、富山駅に到着した。本当に失礼なのだが、富山駅は小さいだろうなと勝手に思っていた。しかし、実際はめちゃくちゃ新しくて大きかった。大変申し訳ない。
さて、ここ富山駅からは「あいの風とやま鉄道」と「IRいしかわ鉄道」といういわゆる第3セクターの路線を利用しなければ、津幡駅まではいけない。つまり、JR線ではないので、18きっぷ以外に別途運賃を支払わなければいけないということだ。しかし、青春18きっぷを利用する際には「通過利用特例」というものが適用される。これはJR線からJR線へ乗り継ぐ場合、その間に通過せざるを得ない「JR線以外の路線」を利用する際の運賃が免除されるという特例の事だ。ごく簡単に例をあげていうなら「滑走路」をお貸ししますよ、という事に近いかもしれない。しかし、この「滑走路」を使えるのはJR線から飛んできてJR線へと旅立つ場合のみ。それ以外は認められない。
今回の旅行で言えば、「JR高山本線」から「JR七尾線」へと乗り継ぐ場合に限り、「富山~津幡間」は特例的に追加の運賃なしで乗車できるという事なのだ。言っていることはたぶん単純だ。しかし、私はどうも最後までこの仕組みが理解できなかった。簡単なはずの数学の問題が私だけずっと解けないような感じに似ていた。今回の旅行でちゃんとこの特例をつかえたことは1度もなかった。

スケッチブックより「津幡」

津幡にて

津幡に到着したのは、朝からわかっていた通り0:17だった。そう、「通過利用特例」は高山本線から七尾線へと乗り継ぐ場合のみ使用することができる。この時間だと七尾線の電車はもうない。おそらくルール的には「富山~津幡間」は通過利用してはいけなかったのである。(津幡駅も一応七尾線の駅ではあるが、おそらく津幡駅は第3セクターの駅扱いとなっている。)私は正義に満ち溢れた人間ではない。しかし、そのくせ罪悪感に耐えられるタイプでもない。ずっとこの旅行中、通過利用特例に関してモヤモヤし、罪悪感と悪い後味が残った。よくないことをしたという思いが今でも残ってしまっている。もっと念入りに調べていくべきだった。後悔が尽きない。
もんもんとする中、私は今夜の宿である「快活CLUB金沢福久店」へと向かった。津幡駅からは徒歩でおよそ1時間40分かかる。長丁場の1日の疲労が一気に押し寄せる。途中コンビニで5個入りのミニクリームパンを買いなんとか気持ちを立て直す。ダイソー(懐かしすぎる看板タイプ)の店内が怪しく光っていて怖かったなどはあったが、不思議と真っ暗な道は無く、ナビが決めた道の中には、「This is 名家」みたいな家がずらりと並んだ通りもあった。友達が電話をくれ、またなんとか力を振り絞る。しばらくすると、大通りらしきものが見えてきた。もう少しだ。

快活CLUB金沢福久店様

見えた!やっとの思いで本日の最終目的地に到着した。貧乏人間の私は、昨年の東北旅行の際にも快活クラブ様にはお世話になった。本当にありがとうございます。そして、この快活CLUB金沢福久店様はなんとナイト12時間パックがオープンシートの場合、期間限定で1,140円という破格の安さで提供してくださっている。これが金沢駅近辺の快活クラブにはいかず、津幡駅から1時間40分歩くことを選択した理由だ。ブース席も同様の条件で1,800円とこちらも破格なのだが、後々の事を考えて今回は節約することにした。正直この選択が正しかったのかは分からない。
今晩、私が使わせていただくことにしたオープンシートというのは、簡単に言えば、自習席みたいな席だ。椅子と机と隣との衝立(ついたて)がある。横になれないのが難点だが、何より充電器がついているのがありがたい。ジョルダン(乗り換えアプリ)の奴隷である私は、充電が0%になることは旅行における「死」を意味することに近い。私の旅行において、悲しいかな、携帯とモバイルバッテリーの充電は夜の必須作業なのだ。
私自身も身体を休めておきたかったが、オープンシートは入り口付近という事もあり、時折騒がしい声が響いた。オープンシートを選んだ時点で、もう今日はきっと寝ることはできないなと薄々感じていたので受け容れようという気分だった。夜の内は、大好きなソフトクリームが調整中なのでカルピスをコップに注いで飲む。漫画コーナーを少し歩いて、せっかくなので『スキップとローファー』を読むことに決めた。5~9巻、お気に入りのシーンやコマがいくつもある。ページをめくりながらぼんやりと明日の事も考える。明日は始発ででようか、それともゆっくりしようか。とはいえ、始発がでるのはもう2時間後とかのことであった。

つづく。





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