見出し画像

C大阪vs鹿島 〇2-1 9/19



・キックオフ~31分(鹿島先制)

序盤、試合の主導権を握ったのは鹿島だった。

その最大の要因となったのが「鹿島の持つ、2種類のボールの奪い方」の作用であり、これによりセレッソは自分達のペースに持って行けず難しい試合展開を強いられた。


鹿島のボールの奪い方 その①:サイド誘導からの狭さ創出

まずセレッソはボールを持って後ろから繋いで組み立てる際、藤田を最終ラインに降ろし最終ラインを3枚にしSBが高い位置を取る事でピッチの横幅を最大限活用できる配置にしてからボールを前に運ぶ。

それに対し鹿島が素直に初期配置の4-4-2で守ろうとする時、ピッチ上の構図はこのような状態となる。

ダウンロード (1)

しかし鹿島は、「素直な4-4-2ブロックをどう崩すか?の絵」をセレッソが持っているという事はまず把握していたと考えて間違いないだろう。狙い所のハッキリしない相手に合わせた出たとこ勝負な4-4-2守備では、容易に清武・坂元という高い質のSHを活かしたサイドからの侵略と奥埜の間受けによるピッチ全体を使った攻撃を受け、自分達がセレッソ7連勝目の餌食になってしまうという想定はあったはずだ。


そこで鹿島がとった奪い方が、サイド誘導からの狭さ創出だ。具体的には、4-3-3的な立ち方で守る事により「セレッソの攻撃のスタート」となるサイドが常に片一方になるように最前列の動きで誘導し、相手の選択肢が1つか2つになった所を待ち構えて一気にアタックを仕掛けて狭さを作る というもの。

まず相手が攻撃を始めるサイドを能動的に主導するために、守る際の配置を変化させる。


ダウンロード (2)

これにより藤田→ヨニッチへのパスを「出させる」

ダウンロード (3)

そしてそのパスをキッカケとし、全体がボールを奪うための前へのアクションを起こす

ダウンロード (4)

この立ち方の変化によって、狭い(相手に時間と場所の余裕が無い)状況をサイドで局地的に作る事ができていた。

具体的に言えばまずは3:20。相手の最後尾(3枚)と自分達の最前列(3枚)を同数にすることで前進を防ぎ、GKにロングボールを(奥埜-犬飼の所に)蹴らせてボール回収。次に7:30には相手CKという事で前3枚の並びが変則的になるが、人が変わっても、ここでも立ち方は同じ。このケースは、この4-3-3可変サイド限定守備自体が、個人単位の判断ではなく組織単位での守り方であるという裏付けにもなっている。さらに8:20にも同じく。今度は和泉とアラーノの場所が変わっているが、ここでも守り方は上に同じ。和泉がヨニッチに対して中から外に追う事で松田へのパスを誘導し、それを「待ち構えてた」アラーノが即アタック。あまりの寄せの早さに慌てタッチを乱した松田からボールを回収し、すぐにカウンター移行。15:10も同じく今度は限定に参加する前4人の並びは図とはバラバラだが、守り方はここも同じ。ヨニッチが先ほどと同じ奪われ方をするのを嫌がり、強引に中に縦パスを入れ、ズレた所を永戸が回収。全部は書いていけないのでもう最後。19:20、これは並びも図の通りだけど坂元の降りに対応して、松田の所に永戸がアタックする形。

こういう形で守り方は効いてました。ま、この形から失点するんですけどね!それはまた後で


鹿島のボールの奪い方 その②:奪い返す迫力

これはもう今季のアントラーズを継続的に見てる人ならすぐにピンとくるだろう。ボールを失ってからの守備の1,2人目の高い強度によって、そこからの相手の選択肢を削り、それ以降の3,4人目がその限られた選択肢目掛けてアタックする事で即時奪回を狙うというもの。とてもよくできてました。

特に前半の先制するまでの時間、両チームがそれぞれ「相手陣地でボールを奪った回数」が

鹿島:7回(8:20,11:00,13:10,15:00,15:45,21:15,31:00)

セレッソ:1回(1:50)(だけどこれも厳密に言えば相手陣地ではない)

という数値に如実に表れてるように、この試合の序盤の鹿島は「前で守る意識」と「前で守る技術」が兼ね備わっていた。

※集計の定義は『相手陣地内で、相手選手同士が1回以上パス交換を経てからのモノを「相手ボール」として扱い、それを敵陣内で「完全に自分達のボールとして」奪った回数』です。ファールで潰すとかタッチラインに切るとかだともっと1:50,5:30,11:15,22:40,34:30と良いプレーがありました。


鹿島のファンも、試合を重ねるごとに「失った瞬間ボールに1番近い選手の、守備意識の高さ」は実感しているところだろう。

ここの前進を支えたのは、やはり、結果が大きい。前で奪い返す事自体は開幕当初からある程度はできていたのが、それがいかんせん結果に繋がらなかった。しかしここ1ヵ月で、ようやく、ようやく「前で奪い返すととても得点に繋がりやすいしとても守りやすい!」という事実が内容に、スコアに、勝ち点に影響するようになってきた。これによって選手達は自分達の目指すモノを信じれるし、信じれるので頑張れる。ここがずっと結果にならなかったのがしんどかった。春先の広島戦だって、名古屋戦だって、前では奪えてた。ただその前で奪って作ったチャンスをことごとく決める事ができなかった。たらればを言っても仕方ないが、あれらのうち1つでも、1つでもゴールという「形」になっていたら、もっと鹿島の上昇気流は早く訪れていただろう。

話を戻して試合へ。清水戦に続いてこの試合も敵陣でボールを奪い、それをゴールに繋げる事に成功した。30:45~、相手PA付近でボールを失うも、すぐに1人目(アラーノ)が行く、そしてまたすぐに2人目(土居)が行く、3人目(レオ)、4人目(再びアラーノ)、が行くことで、敵陣の半径7~8mの空間にセレッソの選手が3人に対し鹿島の選手が5人集まっている「狭さ」の創出に成功。犬飼智也・三竿健斗・レオシルバ・小泉慶・ファンアラーノによる集団狩りによってボールを前で奪い返し、そのまま攻め込んでゴール。難しい状況からシュートまで持っていった和泉も素晴らしいが、「失ってからの切り替え+奪ってからの切り替え」が抜群だったアラーノにここはやはり拍手を送りたい。この選手は本当に求められている事に忠実で、こういった日本人的な良さもありつつ、ブラジル人特有のアイディアや技術も兼ね備えてる。本当エヴェラウド+アラーノってエグい。エグい…



で、そこから3分後くらいに失点。形は先ほど紹介した4-3-3型サイド限定守備からやられてしまった。

この失点の原因を鹿島側に求めるとするならば、まずは「第一の矢」となる土居の寄せが間に合ってはないかなという所。ここの1拍の遅れが響き和泉は坂元の降りを警戒する立ち位置を強いられたし、永戸は松田の所に釣りだされたのちパスで飛ばされ無効化されてしまった。ただ、寄せが「間に合っていない」と表現したように、個人的には土居の寄席が「甘かった」り「遅かった」とはあまり感じない(先制する前はもうちょっとタイトに行けてたようなとは思うが)。というのも、100点の、完璧な守り方が無い事が証明してるように、「穴の無いやり方」などは存在し得ない。なので、このセレッソのゴールまでノンストップ無駄ゼロワンタッチサイド攻略ゴールは、「もうそれはしょうがないわ」なのだ。あれはしょうがない。でもその代わりあんな攻撃やそんな攻撃に対応できたのがこの守り方であり、ドンピシャで鹿島の3の脇→3の脇をスムーズに動かし一寸の狂いなくゴールまで行かれたらもうそれはセレッソの技術に拍手なのである。拍手!


最後ので察していただけるかと思いますが、疲れたのでおわります。

あと気になったのは5バック守備移行にスパッと切り替えたのはとても良い判断(ここでいう良い判断とは、失点をしなかった事への評価ではなく、もしあそこから失点してしまったとしても納得し得る判断だったという事)だったと思うんですけど、そういえば清水戦では最後おやおや大丈夫かコレ??な展開でもやらなかったのを思い出して、ザーゴ監督のゲームクローズの意識が垣間見えたかなと感じました。あくまでピッチ上の状況に合わせ、「得点する方が近ければそう、失点しない方が近ければこう」なんだなと。50分あたりに荒木を読んでユニフォームに着替えさせてから、木本の交代を見て一旦保留にし、60分にも荒木を呼びながらも再度直前のセレッソの二枚替えを見て保留して様子を見てから投入したあたりは冷静さと頼もしさを感じました。


おわり