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映画『騙し絵の牙』

原作の時点で大泉洋さんへのあてがきとして作られたと話題の『騙し絵の牙』を劇場で見て来ました。久しぶりに邦画を劇場で見た気がします。

以下は映画の内容を踏まえたうえでの記事です。ご了承ください。

出版社を舞台とした騙しあいバトル

出版社の権力争いを中心とした騙し合いです。これといった専門用語や知識は出てこないので出版業界である意味は感じずらかったですが、派閥や構図はわかりやすく、楽しめました。

当然ながらそれぞれに思惑があるので、騙していたと思ったら次は騙される立場に...と、休む間もなく目まぐるしく立場が入れ替わっていくのが面白かったです。

クールで飄々としている大泉洋

この作品は7年かけて作られたというだけあって、大泉洋演じる速水は大泉洋ぴったりのキャラクターでした。物語中でやっていることはスレスレだったり、同僚からの信用を無くすようなことも多かったですが、大泉洋が醸し出す独特の人柄や演技のおかげでそれらがマイルドになっていると思いました。またそれでいて普通に会話していてもすべてのセリフが嘘っぽく、含みがあるようにも感じられました。

速水は廃刊目前の雑誌の編集長ですが、同じく大泉洋主演のドラマ『ノーサイドゲーム』のように熱い物語ではなく、登場人物のほとんどがあくまで自分の利害のために行動していて、主演が同じでも仕事のリアルを見たような気がします。

フリーの人間の強み

「トリニティをおもちゃにしないでください。」
「おもちゃにしたっていいじゃない。みんなで使えば。」

これは速水と部下の印象的だったやり取りです。(トリニティとは速水が編集長を担当する雑誌)速水はあくまで「面白いこと」のためにトリニティを使っていて、部下はトリニティの売り上げを伸ばして守ろうとしています。同じ「売り上げを伸ばす」という目的があっても速水と部下ではそもそも考え方や立場が違っていて、(速水自身が自らのことを「根がフリー」だと言っていましたが)そのおかげで大胆な策を打つことができるとわかりました。

舞台となる薫風社が100年の歴史がある会社だということもあるかもしれませんが、似たようなことは全国の会社で起こっていて保守派はこうして出し抜かれていっているんだろうということ、最終的に何のために働くか、どこに自分のアイデンティティを置くかで同じチームでも働き方が変わってくることを感じました。

「思っているより時間は早く過ぎる。時間に追いつかれないためには難しい道を行くしかない」

これも速水のセリフ。長い期間をかけて根回しをしてきたプロジェクトの中止を言い渡された社長への言葉です。今の時代を表しているようだと思いました。いろいろなプラットフォームで日々コンテンツが増え続けていて、リアルタイムで更新されていきます。今までのスピード感では成立しないので速水のように多少強引でも奇抜な作戦に出るか、どこかを切り捨てる覚悟が必要だということですね。

そんな速水のめざすところは「面白いこと」。確かに雑誌としては苦しい局面だとしてもクールで、どこか面白そうにしていたような印象があります。

まとめ

誰が騙していて騙されているのか最後まで予測できないストーリーで面白かったです。大胆な作戦はフィクションチックではあったものの、現代のエンタメ業界のコンテンツ作りを思わせるリアルなシーンもありました。

映像作品ならではなポイントとして表情や細かい伏線などがあると思うので、ストーリーを踏まえたうえでもう一度見たいと思いました。

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