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【前世探究の闇】私の黒歴史❷

これは私自身がたどった前世探求の失敗談である。

当時私は故郷大阪に帰りマンションで一人暮らしをしていた。それが前世の記憶を思い出してからというもの、家の中で幽霊を見ることが増えた。僧侶の霊、身分の高そうな武士の霊、たくさんの子供を連れた女の霊。

私は子供の頃からもともと霊感はあったが、前世体験を境にすべてが変わってしまった。

母にもそんな話をしてみた。母や病気の父にも僧侶の霊が見えもしたが、母は父の介護で忙しくてそれどころではない。
他の友人にも聞いてもらったが、「精神病院行った方がいいんじゃない?」と言われる始末。

まぁ、そうだろう。
以前の私なら自分もそう思っていた。
「前世なんかを語るやつはみんな狂ってるんだ」と。
悪いことを思ってしまったものだ。申し訳ない。
誰しも体験しないとわからないことがあると痛感した。
こんなに苦しい体験があるのか、と。

前世の記憶というのは人それぞれだが、私が思い出したのはなかなかしんどい記憶のようだ。
毎日色んなイメージを思い出してとても苦しい。
誰かに話を聞いてほしい。

当時はネットというものが一般にはあまり普及していなかった。
匿名で話す相手もいない。

私はつい、あの時一緒に旅行に行ったときの友人たちに電話することが増えていた。彼らにはずいぶんと迷惑を掛けてしまったと思う。

ある日、私は前世の記憶で思いだしたことをいつものように電話で友達に報告した。私が最初に前世の記憶を思い出した、あの時に一人だけ私の話を首を傾げて聞いていた、霊感のある友達だ。

霊感の強い人に話を聞いてもらうのは安心感があった。
私は思いだした前世の大事なことを友達に話した。

「私、どうやら前世で恋人をすごく傷つけたらしいの。私、ほんとは同性愛者じゃなかったんだけど、お金持ちの彼と出会って、そんな彼の地位を利用するために愛しているふりをしたの!でも、それがあとでバレて……」

すると友達が突然怒り出した。

「ふざけんなっ!言って良いことと悪いことがあるだろっっ……!!」

え?
いや、え?

一瞬何が起こったかわからなかった。

どうやら彼は私が話した前世の話を、自分のことを言われたように思ったらしい。

友達は同性愛者だった。そしてお金持ちの恋人がいた。

そこからは友達とこじれて色々あった。


まぁ、それは置いておいて、ここで賢明な方ならもうお気づきだろう。
そう、私が友達と行った旅行先で思いだした『男同士の恋愛の前世の記憶』とは、私の記憶ではなかった。
一緒にいた同性愛者の友達の前世の記憶だったのだ。

あの日、友達が首を傾げて私の話を聞いていたのは、彼にとって妙に身に覚えのある話だったからだ。

そして彼は現世でもまた、前世と同じカルマを繰り返していた。
金と名誉のために好きでもない人を愛しているふりをしてしまう。
美形だったこの人は同じことをいくつもの前世で繰り返していた。

だから彼は怒ったのだ。
身に覚えのある話が痛かったから。


しかし、この時の私はまだそのことに気付いていなかった。
記憶というのは自分のものしか見えないものだと思い込んでいたのだ。
実際それが記憶というものの常識である。

記憶は自分の脳の中にあるもの。他人のそれとは明確に区別されるもの。
それが記憶の常識ではあるが、魂の世界ではそうではない。

たとえば高名な霊能者の江原啓之さんは、かつてテレビで芸能人の前世を霊視しておられた。前世とは、個人や関係者だけが知っている記憶の世界の話のはずだ。それがなぜ霊能者には他人の記憶が見えるのか?

記憶とは、個人の脳内にある以外に、集合記憶として宇宙か異次元かのどこかに蓄積されていくものだからだ。いわゆるアカシックレコードというものだ。霊能者や霊感の強い人間たちは、そんな集合記憶からいくつかの条件が揃うと、他人の記憶を掘り起こすことができる。

おそらくもともと霊感のあった私は、旅行先の史跡で偶然いくつかの条件が揃ったことで意図せず集合記憶を垣間見てしまったのだろう。


そのことをまだ当時23歳の私は知る由もなかった。
誰も教えてくれる人が身近にいなかったからだ。

同性愛者の友達と喧嘩したあとですら、私はまだ友達の前世の記憶を自分の記憶だと思い込んだままでいた。

「私には、私のことを深く愛してくれた恋人がいたんだ。前世の恋人が……、でも私、彼を傷つけちゃったみたい……」

「また会えるかな?今度こそやり直せないかなぁ……」

私はいるはずもない前世の恋人のイメージを、その後も長きに渡って探すこととなってしまった。


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