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国立新美術館は、厳密に言えば「美術館」ではないらしい。

 国立新美術館は、国立の美術館としては、一番新しい。
 2007年に開館してから、魅力的な企画展もあり、何度も足を運んでいる。

 国立新美術館は、コレクションを持たず、国内最大級の展示スペース(14,000m2)を生かした多彩な展覧会の開催、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、教育普及など、アートセンターとしての役割を果たす、新しいタイプの美術館です。

 この言葉に対して、開館当時に微妙な違和感はあったものの、それを責任と覚悟を持って継続していくのであれば、「新しいタイプの美術館」を成立させることも、現代アートのような振る舞いだとは思っていた。

あざみ野カレッジ

 横浜市民ギャラリーでは、「あざみ野カレッジ」という名称で、専門家が「美術」について授業を行ってくれる、という有意義でありがたい企画がある。そこに何度か参加したことがあるので、今も「学生証」も持っている。

 少し前になるけれど、2019年の1月19日には、『「現代美術探究ラボ」 Vol.5 美術とコレクション』というテーマで、天野太郎氏(インディペンデント・キュレーター)が、講師をしてくれ、思った以上に興味深い時間を提供してくれた。

 ありがたかった。

 その中で、微妙なひっかかりとともに、今も消化できない思いでいるのが、「国立新美術館」に関する話題だ。

 国立新美術館は、コレクションを持たない。だから、本当は美術館とは言えない。
 それだから、英語表記では、「ART CENTER」となっている。

  天野氏のその話を聞いて、日本名では「美術館」となっているけれど、英語表記で「ART  CENTER」となっているのを初めて知り、家に帰って、国立新美術館のチラシなどを見ると、確かにその通りで、なんだか微妙なごまかしのように思えた。

美術館の歴史

  私の浅い知識であっても、美術も美術館も明治になってから、西洋から輸入された概念であることは知っている。

  そして、美術館の重要な役割として、作品をコレクションして収蔵し、後世に残す、というものがあるはずで、これが欠けていたら、厳密に言えば、美術館とはいえないとされてきたはずだ。

 この記事の中の「美術館の原則」にも、この項目がある。

6. 美術館は、体系的にコレクションを形成し、良好な状態で保存して次世代に引き継ぐ。

 もちろん、今の美術や美術館という概念は、良くも悪くも西洋由来のものだから、国立新美術館のように、コレクションをしないで、収蔵品もないような施設は、西洋の基準でいえば、「Museum of art」とは言えないはずだ。

 おそらく、それを知っているから、国立新美術館の英語表記には「Museum」とは入っていない。ホームページにも「THE NATIONAL_ART CENTER, TOKYO」とある。ただ、不思議なことにチラシには、その後に、「Kokuritsu-Shin-Bijutsukan」というアルファベット表記が続いている場合があった。(見出しの写真)

新しいタイプの美術館

 もし、「新しいタイプの美術館」と主張するのであれば、英語表記にも堂々と、「Museum of Art」と入れて、これに対して、当然起こってくる批判について、正面から説得し、(不可能に近いけれど)コレクションがなくても美術館だ、と納得させることができれば、それ自体がとてもアーティスティックな行為だと思う。

(国立新美術館の前に4番目の国立の美術館として、開館した国立国際美術館も、当然ながら、「Museum of Art」と表記されている)。

 

 個人的な印象かもしれないけれど、海外向けには「ART CENTER」と表記し、国内には「美術館」と伝えるのは、申し訳ないのだけど、そのことを「あざみ野カレッジ」で知ってからは、「ダブルスタンダード」にしか思えなくなった。

 かといって、国立新美術館に行かない。という決意をするわけでもないのだけど、この状態が続くのは、やっぱり残念でもある。


 この大変な時期に、こうしたことを書くのは申し訳ないような気もするが、逆に、生まれ変わるのであれば、今ではないか、とも思い、この記事を書くことにしました。




(他にもいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。


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