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「月の石」が象徴するもの
2025年大阪・関西万博で「月の石」を展示する構想があるという。「月の石」といえば、1970年の大阪万博の目玉だった。当時小学生だったわたしも叔父夫婦につれられてアメリカ館の大行列に並んだ1400万人のうちの一人だ。ガラスケースに入った石を見て「月の石も地球の石と同じなんだなあ」とちょっとがっかりしたことを覚えている。
大阪万博前年の1969年、米国の宇宙船アポロ11号は人類で初めて月面に着陸し
書評#8「写真小史」
1930年に書かれた「写真」についてのベンヤミンによる考察。
20世紀は、間違いなく写真の世紀だと思う。しかし、写真は今やあまりにも当たり前の存在になったので、逆にその本質を見失いがちになっている。本書は、20世紀の前半、まだ写真がその誕生の余韻を残している時代に記されたことで、写真の本質をしっかりと伝えている。
著者は、写真の本質は「複製技術」であると同時に「縮小技術」であると指摘する。写真
書評#5「熟達論」為末大(新潮社)
トップアスリートが到達する境地を言語化するとどのような表現になるのか。昔、打撃の極意を「パッときたボールをサッと打つ」と表現した某天才野球選手がいたが、それでは一般人には全く伝わらない。また、よく「ゾーンに入る」と言うコメントを聞くが、そのゾーンって一体どんな場所なのかなかなか想像できない。アスリートが体験する世界は総じて言語化が難しい。(逆に言えば、言語化しなくても超人的なパフォーマンスを実現で
もっとみる「東京2020から未来への伝言」を始めたわけ
このたび、東京2020大会の運営に関わった方や出場したアスリートが集まって、大会での経験を語り合うトークセッション「東京2020から未来への伝言」を始めました。5月14日に開催した第一回は、NHKニュースに取り上げていただきました。
なぜこのタイミングでこのセッションを始めたのか、まずはその想いをお伝えします。
東京2020オリンピック・パラリンピックからまもなく2年になります。ただ、現在も五
「談合」と「調整」の間で
昨日、五輪テスト大会おける談合の容疑で組織委や電通の元同僚が逮捕された。しかし私は一貫して、本件は違法行為としての「談合」ではなく、組織委の取引規定に則った業務としての「受注調整」であると考えている。(実際、昨日の公取委定例会見で小林渉事務総長が「談合が行われたならば、大変問題が大きい」と述べているように、まだ談合と確定されている段階ではない)。
「談合」ではないことの法的な根拠については、郷原
新聞報道で記者の「意図」はどこまで許容されるか
今朝(2月1日)の毎日新聞の一面トップにこんな見出しの記事が掲載されていた。
五輪組織元次長に顧問料
テスト大会落札企業から
「まさか!」とびっくりして本文を読むと、実際に顧問料を受け取っていたのは五輪組織委を辞めた後だとの記載はあったが、見出しだけを読んだ人は、在職中に顧問料を得ていたと勘違いするだろう。あまりに誘導的で悪意がある見出しで、見過ごすことはできないと思った。
公務員だった人が