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福祉と社会保障に関する覚書

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記事一覧

読書メモ 図書館で借りた本(2024年3月11日返却)

読書メモ 図書館で借りた本(2024年3月11日返却)

ニール・ソンプソン,杉本敏夫訳. (2004). ソーシャルワークとは何か.

社会保障や社会福祉が、制度としては日本に比較的近い英国でのソーシャルワーク論。2000年前後の英国の状況が理解できるという意味でも有用。詳細こちら。

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ダレン・マクガーヴェイ , 山田 文 訳. (2019). ポバティー・サファリ イギリス最下層の怒り.

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命を救えるのはお金? それとも?

命を救えるのはお金? それとも?

 2020年の年明けとともに始まった日本のCovid問題は、平時なら救われるはずの命が非常時には救われないかもしれないという事実を明らかにしました。それから2024年3月に至る現在までの約4年間、私の人間関係の範囲だけでも、命と生き死にをめぐる数多くの出来事がありました。
 私にとって最も意外だったのは、「世帯の収入や資産が、いざという時の生き死にを大きく左右しているわけではないようだ」ということ

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二本松泰子さん ー 被虐待歴を書籍として世に問い、そして消えたライター

二本松泰子さん ー 被虐待歴を書籍として世に問い、そして消えたライター

「二本松泰子」とは?

 二本松泰子さんという、将来を嘱望されていたライターがいました(研究者の二本松泰子さんとは別人)。被虐待歴と自らの依存症からの回復を赤裸々に記事化し、35歳だった2001年には単著『愛されない愛せない私』を上梓。内容と表現力が注目され、各種メディアに広く取り上げられました。そして、姿を消しました。

両親の願いは「その姓を捨てて」

 書籍『愛されない愛せない私』には、二本

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性的に「不適切な関係」と生活保護の、密接な関係

性的に「不適切な関係」と生活保護の、密接な関係

 2024年2月8日、1本のプレスリリースが、江戸川区ホームページでひっそりと公開されました。

江戸川区:2024年(令和6年)2月8日 生活保護事務を担当する区職員の不祥事

 江戸川区には福祉事務所が3つあり、そのうち1つに勤務する20歳代の男性ケースワーカーが、2024年11月、担当する生活保護制度利用者(女性)と勤務時間中に「不適切な関係」を持ったということです。それ以上の詳細は、現在の

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2023年11月、ネパールで大規模な地震被害が発生しています

2023年11月、ネパールで大規模な地震被害が発生しています

  2023年11月3日、ネパール西部で地震がありました。2015年の大地震以後では最大。死者150人以上、家屋倒壊25000軒以上と、相当の被害のようです。

 翌日の11月4日、翌々日の11月5日は、世界の大手メディア各社の中には、国際ニュースで「ガザ情勢の次」程度の重みをもって報道していたところもありましたが、その後、あまり報道されなくなっています。
 ネパールで活動する旧知の科学ジャーナリ

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車椅子族(18年目)が「トランス身体障害者」に思うこと

車椅子族(18年目)が「トランス身体障害者」に思うこと

 車椅子ゆえの不便をX(ツイッター)に綴っている人物(男性を自称していますけど、性別含め正体は不明)が、「実は歩けるのに車椅子を利用している”トランス身体障害者”」として批判されています。
 本記事では、この件に関する違和感を短めにまとめてみます。

1.「立てる」「若干の歩行が出来る」としても、車椅子が不要とは限らない

 車椅子を必要とする事情は多様です。電動車椅子族歴が18年目になる私自身、

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犬も歩けば棒に当たる。障害者が歩けば何に当たる? 書籍『障害のある人が出会う人権問題』で、だいたいわかる。

犬も歩けば棒に当たる。障害者が歩けば何に当たる? 書籍『障害のある人が出会う人権問題』で、だいたいわかる。

 法学者の杉山有沙さんから、ご共著の新刊『障害のある人が出会う人権問題』をご恵投いただきました。一読してみて「多くの方にとって、けっこう有用かも」と思いましたので、紹介します。平易だし、読みやすいし。
  書籍情報は下からどうぞ(アフィリエイトリンク)。
 なお、本記事において、私は「障害者」「健常者」という表現を使います。

「人権」というものの成り立ちと構成は、どうなっているの?

 人権問題

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京アニ放火事件公判の気になるポイント

京アニ放火事件公判の気になるポイント

 2023年9月、京アニ放火事件の公判が始まり、多数の報道が行われています。最も詳細がわかりやすいのは産経新聞さんかと。

 現在のところは公判であからさまに焦点化されていないけれども、私が気になるポイントを、なるべく簡単にまとめてみようと思います。

0. 前提

 私自身は、京アニ放火事件を起こされてはならなかった放火事件だと考えています。京アニ作品に対する特段の思い入れはなく、直接間接の知り

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私(たち)はどう生きるか ー ただいま、ゆっくり再始動中

私(たち)はどう生きるか ー ただいま、ゆっくり再始動中

 2021年後半以後、広く読まれる媒体での仕事を激減させていましたが、ゆっくり再起動中です。
 本記事では、「今後どうしていきたいのか」「この間どうしていたのか」を記してみます。

私(たち)は、どう生きるか

 これまでと同様、猫たちのワンオペ養母として家庭を維持しながら(維持するために)、執筆と研究を中心に発信するでしょう。
 並行して、他の方々の発信を助けることを仕事にしたいと考えています。

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生活保護の支給に関係する事件を理解するための5つのポイント

生活保護の支給に関係する事件を理解するための5つのポイント

2022年11月、堺市の30歳代男性が同じアパートに住む60歳代男性を死なせた事件は、2人が生活保護を利用していたことから思わぬ展開を見せています。福祉事務所の担当者らが「不適切」を通り越して「不正」な運用や「あってはならない」対応を行っていたらしいことも、明るみになりつつあります。
本記事では、福祉事務所や担当職員が関与した事件を理解するにあたって重要なポイントを、生活保護に関する取材・執筆を続

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2022年9月、国連障害者権利委員会が日本に勧告。そして、またスルー?

2022年9月、国連障害者権利委員会が日本に勧告。そして、またスルー?

 2022年9月9日、国連障害者権利委員会が、日本に対する初の勧告(総括所見)を公表しました。「初」なのは、日本が同委員会から受ける初めての審査だったからです。
 2014年に国連障害者権利条約を締結した日本は、2019年秋~2020年春にかけて、初めての審査を受ける予定でした。2019年9月、初めての事前審査を予定通りに受けました。ところが2020年3月に予定されていた本審査は、新型コロナの影響

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安倍元首相襲撃を受けてのアンケート結果より緊急公開 ~ 日本社会、これからどうなる?

安倍元首相襲撃を受けてのアンケート結果より緊急公開 ~ 日本社会、これからどうなる?

 2022年7月8日午後、安倍元首相が銃撃されたとの報を受けて、拙速ですが簡単な不安共有フォームを作成しました。私自身がえもいわれぬ不安に襲われ、「そんな吐き出口があったら」と思ったからです。
 結果の自由記述欄より、社会が今後どうなるかに関するご回答を紹介します。紹介するご回答は、2022年7月10日午後17時30分までにご記入いただいたもので、時系列です。誤字脱字には最低限の修正を加えています

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和田靜香さん『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』について、今さらですが。

和田靜香さん『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』について、今さらですが。

(2022年4月15日 加筆しました)

 発売後はもちろん発売される前から話題となっていた、和田靜香さんのご著書『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』(左右社)について、私はダンマリを貫いてきた。
 実はKindle版が販売された直後に購入し、読んでいたのだけど。

語れず語りたくなかった理由

 ライターの和田靜香さんと衆議院議員の小川淳也氏の対談から生まれた本書は、読ませる読み物

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ウクライナについて無理はやめよう、先は長い。

ウクライナについて無理はやめよう、先は長い。

 2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻して、そろそろ2週間。
 残虐な話が人一倍苦手な私は、気づかないうちに体調を崩していた。

野菜が減らない 私は、野菜と豆が大好物。厚労省は「1日350g」が望ましいとしているけれど、下手すると1食でそのくらい食べてしまう。
 ところが、2月に入ったころからキッチンの野菜の減りが遅くなっていた。その時は、「寒いしウツっぽいし料理めんどくさいし」という

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