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法人オーナー「個人」VS「法人」で貯める社長のお金~気になるアノ存在~[2022.5月号]

個人で貯めるお金と法人で貯めるお金
本当の所どっちがいいんだという話を法人オーナーから頂く事があります。

そこで法人オーナーならではの、ある要因を考えると
私は法人をお財布として活用するという事もアリなのでは?という事をお話ししたりします。

但し、個人で貯める資産形成方法も
IDeCoや、つみたてNISA、小規模企業共済など、老後資産を増やす方法として優遇されているものもあります。

ですが、今回はそういった老後資産を作る為の制度や商品の比較ではなく、大枠の部分での
・個人で貯めるお金の特徴
・法人で貯めるお金の特徴

そして、法人オーナーならではの見落としがちな注意すべき「ある要因とは?」を今回は解説します。

詳細な税額計算を入れ過ぎても訳が分からなくなりますので
ある程度、おおよその税率を用いてインスタントにご案内します。

まずは額面と手取りの違いを理解する。

日本という国に住んでいて全ての支払いより優先されるものは、何だとお思いになられますか?

それは各種税金の支払いです。
私達のお金というものは

  1. ・報酬を受け取ってから納税するのか

  2. ・納税をしてから報酬を受け取るのか


場合によって順番こそは前後していますが
誰しもが基本的には税引き後のお金を貯めています。

額面1,000万円の納税後の手残りはどれだけ?

・法人の税引前当期純利益の場合

法人税等の納付をした後のお金が現預金としてプールされていきます。

加えて法人には
法人住民税、地方法人税、法人事業税という3つの税金も課せられます。

法人税に法人住民税・地方法人税・法人事業税をあわせた税の実質的な負担割合を示したものを、実効税率といいます。

法人の課税所得にもよりますが
概ね20%~30%の税金が課せられます。

※例えば資本金1億円以下の中小法人で
課税所得400万円以下の部分に、約20%の税率
課税所得が800万円を超えた部分に、約30%の税率

正確な実効税率や法人税額は複雑な計算です。
それこそ顧問の税理士先生や会計士先生の出番ですので
この記事では、実効税率をおおよそ30%として考えていきます。

すると今回の場合1,000万円が税引前当期純利益として
額面にあったとしてと納税後に自由に使えるお金は
約700万円まで減ってしまう事になります。

・個人の役員報酬(年収)の場合

個人の場合、年収1,000万円では
所得税が約85万円、住民税が約65万円
税金額の合計は約150万円となります。

すると納税後に自由に使えるお金は
約850万円まで減ってしまう事になります。

個人vs法人の納税後の手残り額対決!!

勝者は個人!
結論、法人オーナーは個人で貯めましょう!!
と、一筋縄にいかない要因は各種税額の他にかかる社会保険料の計算をしていない事にあります。
そして、この社会保険料の存在において
法人オーナーならではの、考えなくてはいけない要因があります。

誰しもが当てはまる個人の手取りへの社会保険料の影響

年収1,000万円の社会保険料は
40歳以下では約120万円、40歳以上になると介護保険料も納めなければなりませんから、約130万円になります。

この社会保険料を加味すると
納税後に自由に使えるお金の約850万円の内訳から
社会保険料の約120万円が、そもそも無いものとして
実際に使えるお金は約730万円まで減ってしまう事になります。

法人オーナーだけが当てはまる法人のキャッシュへの社会保険料の影響

法人オーナー特有の問題点は
社会保険料の二重コストという事にあります。
社会保険料の原則は労使折半です
つまり、上の役員報酬1,000万円に対しての社会保険料は鏡合わせのように、法人にも同じだけの社会保険料が掛かる事を意味します。

つまり、個人の年収1,000万円を1円たりとも使わず
丸々、貯金に回していく事が出来たとしても
先ほどの個人の手残りへの社会保険料の影響の話に繋がりますが、実際に貯めれるお金は約730万円

加えて、その為に法人側でも
社会保険料約120万円のコストを支払っている事になります。

分かりやすく一人社長の役員報酬で考えてみましょう。

法人に2,000万円の可処分所得があったとして
法人の利益として1,000万円残し
社長の給与として1,000万円渡す

振り分けた時に目減りするお金の総量は

法人は社会保険料の支払い後に計420万円
個人は社会保険料の支払い後に計270万円

ここで法人側と個人側で
目減りしたお金の差が大きく開きました。
では、やはりお金を貯めるなら
圧倒的に個人の勝ちという事に見えます。

法人を上手く財布として利用するとどうなるか

上記の様に法人と個人にお金を振り分けた場合

目減りしたお金の総量は
合計約690万円にもなります。

ところが法人だけで、このお金を受けようとすると


2,000万円の利益に対するコストは約600万円
つまり、税金の支払いだけで済めば
約90万円もの金額分の差額が出ます。

この社会保険料まで加味した際に生まれる差額が
法人オーナーの場合、見落としがちな隠れコストともいえます。

そもそも個人に払わずお金を貯める方法

日本の税金の仕組みというのは非常に抜け目なく出来ています。個人でも、法人でも現預金などの資産としてプールしようとする場合は、前もってどこかで税金が徴収される事になっています。

しかし、社会保険料の場合は、企業が人に給与や賞与を「払う」行為を引き金に社会保険料が掛かってきます。

つまり、極端な話、貯める為に個人に払わなければ
「払う」金額の約30%を労使折半する社会保険料というものは掛かる事はありません。

だからこそ、企業は全額経費計上可能な
中小企業退職金共済や、特定退職金共済などを駆使しながら
税引き前の経費や、社会保険料発生前のお金を
将来の退職金として後払いする事で
法人にとっても、個人にとっても、「なるべくお金が目減りしない形」で資産を作る事を実現出来ていると私は考えています。

個人で受け取る退職金に関しては下のリンクへどうぞ


そこに対して法人オーナーも同じで
自身の持つ法人の運営の中に、
税引き前の経費や、社会保険料発生前のお金を用いて
自身が確保する役員退職金原資を貯める方法を考えてみてはいかがでしょうか。

役員退職金に関しては下のリンクへどうぞ


勿論、国の年金制度など社会保険料の納付や平均報酬月額などで手厚くなるサービスがある事は大前提で、こういった事を行っていきましょう。
また、個人の年収と、法人の税引前当期純利益で、それぞれ税率は変動しますので、社長にとって有利になる様、税理士や会計士の先生と相談の上、バランスを取りながらやっていく事が大切だと思います。
最近ではインボイス制度の影響か、一人社長のマイクロ法人なるものも耳にします。
また、私のお客様の様に、ご家族で事業をされていらっしゃる会社も沢山あるかと思います。
こういった観点からも、お金の在り方について今回は考えて頂くきっかけになれば幸いです。

ここまで読んで頂きまして、ありがとうございました。
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