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ディスクレビュー: Perpetuum / Raein (LP)

 イタリア激情の生ける伝説Raeinによる2015年音源。メンバーがDIYで組み立てているシルバージャケット故に、メンバーの指紋が結構ついてしまっていますが仕様ということでお願いします。
 前作が出たのは既に4年前の2011年、その当時と同じ様に今回もオフィシャルサイトでは無料DL可能な形で音源が公開され、リスナーは好きな額を寄付(無料も可)できるというシステムを採用している。彼らはbandcampは持っていないのでストリームさせることはしない。必ず自分達のサイトからダウンロードをさせた上でその価値を問う。なかなかRaein程の実力がなければ成立しないシステムだが、彼らはこのやり方で実際に活動ができているのが驚愕である。そして前回同様、今回も自分達でプレスしておりレーベル無しのレコードである。
 さて、気になる内容のほうだが以前よりRaeinの動向をチェックしているリスナーは既に音源を耳にしていると思うが、改めて言っておくと「欧州激情ハードコア」のひとつのスタイルを打ち立てた彼らのピークは既に過ぎ去っている。活動を再開した2008年のアルバムからその表現は既に初期衝動などを捨て去った洗練された大人の音楽、若かりし彼らが作り上げた音楽の、その更に向こう側を表現したものである。
 本作アルバムのタイトルは日本語にすると「常動曲」、wikipediaによると「常に一定した音符の流れが特徴的な、通常は急速なテンポによる楽曲ないしは楽章を指す。」とのことで、イタリア語だと「永久機関」を指すこともあるらしい。また「何回も何回も繰り返されるように作曲されており、旋律の「動き」を止めることなく、曲の終わりから始まりまで戻ることができるような作品」であることも説明されており、そのタイトルから受ける印象はBaton Rougeの『Totem』のように彼らの人生観が反映されたアルバムのようである。
 実際にアルバムの内容は、詩的な表現のため抽象的ではあるけれども愛や別れについて歌っている。各楽曲のテンポはわりとミドルめに近く、疾走曲もあるけれどもバンド初期のようなカオティックさのあるハードコアでは無い。そういう作品は彼らはもう作れないし作らないだろう。哀愁のある音使い、演奏のソリッドさ、ツインギターによるコンビネーション、起伏に満ちた楽曲の展開は相変わらずだけれども全体でひとつの作品と言える様な統一感があり大人ならではの落ち着きと、いまでも消えていないパッションを融合させている。この雰囲気を味わいたくて今でもRaeinを聴いているんだなぁというのを再確認させられる。
 たぶんRaeinのメンバーは豊かな人生を歩んでいるんだと思う。そんなアルバム。

tracklist:
A1. Salvia
A2. Tutte Parole D’Amore
A3. Drvenik
B1. Giovanni Drogo (Requiem)
B2. Polline: Pensieri Generosi Delle Donne
B3. Senza Titolo

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Text by Akihito Mizutani (3LA -LongLegsLongArms Records-)
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