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#61 光る鉱石の星と宇宙飛行者のコルク瓶

Francescoの店に着くと
まだ店内には灯りが点いていた。

「こんにちは~」
私はそろりと店に入りながら声をかけた。

店にはFrancescoの姿はなかったが
店の奥には人の気配があった。

きっとまた星を読むのに集中しているのだろうと
私は店内を見て回ることにした。

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店内をぐるりと回り
以前見た、月の降る夜の灯りが置いてある棚に来た。

以前はたくさんの小さな月が
様々な色の光を放っていたが
この時は以前の半分の数もなかった。

代わりに空きスペースに置いてあったのは
いくつかのコルク瓶だった。


その瓶の中では
上空で太陽と月が一体化したモチーフが揺らめき、
底に敷き詰められるように散らばった細かい鉱石
中心に大きな鉱石
やカラフルで大小さまざまなパール
七色に輝くダイヤモンドなどが入っていた。

そして、小さな宇宙飛行士がこちらを見ていた。

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「新商品さ。」

突然背後からFrancescoの声が聞こえて
私はビクッと驚いた。

「あ、Francescoさん!
月の灯りはどこに行っちゃったんですか?」

「あぁ、月が降る丘は100年に1度変わってしまうんだが
先日、変わってしまったようでね。
場所は誰にも予測できないんだよ。
月が降るタイミングで探しているところさ。」

「そうなんですね…」

「まぁ、当分見つからないさ。」

探しているのに、当分見つからないことを
知っているかのような言い方だった。


「それで、その代わりに置いてある
このコルク瓶のは…?」

鉱石の星は知ってるかい?
その星は鉱石で出来ていて
地表はガタガタ、ところどころで大きな鉱石が
突き出しているような星さ。」

「そんな星があるんですね。」

「月ほども無いような、とても小さな星だよ。」

「その星はどのあたりにあるんですか?」

「今はかなり遠いところさ。
でも、よく動く星でね。
数十年前に地球の近くを通ったこともある。」

「へぇ~!地球から見えたんですか!?」

「知っていればわかっただろうね。
闇雲に見ていても見つかりはしない。
場所がわかっている者でも
鉱石の光がなかったら見つからなかっただろう。」

「あ、これってやっぱり光ってるんですね?」


棚の仕切りの影になったところに
陳列されたものは
大きな鉱石がぼんやりと光っていた。

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「鉱石でできた星だからね。
一度入った光は鉱石の複雑な形の中で乱反射して
光を留めておく
のさ。
このサイズでも少しの間ぼんやり光るよ。」

「なるほど!
この小さな宇宙飛行士は…?
宇宙飛行士ってコッチの世界にもいるんですか?」

宇宙飛行シ?
この宇宙飛行者のことかな?

君の世界では宇宙飛行シというのか。」

「あ、はい、宇宙飛行士です。」

「そうか。
彼は前回、この鉱石の星が地球に接近した時に
たまたま辿り着いて降り立ってしまったらしい。
そのまま取り残されているのさ。」

「取り残されている?」

「地球の時間とは概念が違うからね。
彼はまだそれに気づいていないかもしれない。

わけのわからないような壮大な話だが、
私達の世界の宇宙飛行士の1人が
この星のマスコットキャラクターのような
扱いになっているらしい。


「助けてあげられないの?」

「そのままにしておくのが良いのさ。
思いつきで流れに逆らうのは良くない。
ただこうして、瓶の中にその星を再現して見守るんだ。
たくさんでいい方向へ向かうように祈れば
自ずといい方向へ向かう。

「みんなで見守るんですね!」

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改めてコルク瓶の中に目を移し
この宇宙飛行士の身を案じた。



これが光る鉱石の星と宇宙飛行者の
コルク瓶
のおはなし。
続きはまた次回に。


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