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エッセイ⑧ 世の中には、「面白くない小説」というものがある。しかし、それが悪いとは限らない。

☆写真はカルガリーのイベントスペース、cSPACE。初雪の今日。

世の中には、面白くないけどいい小説もたくさんある。しかし、私は小説だけでなく、あらゆる芸術表現はある意味で、エンターテイメントであって欲しいと思っている。だからなるべく読者を私の小説に引き込もうとする。

日本の歴史上一番売れた小説は、夏目漱石の『こころ』であるらしい。あれは学校の読書感想文の宿題になったりするから、それで売れるということもあるかも知れないけど。でも、あの小説は面白い。謎解きの意味合いが強いから、読者がハラハラしながらページをめくる。

私の小説には精神病の患者がたくさん出て来る。そんなに楽しい小説ばかりではない。でも興味深いモチーフやディテールを散らばせているつもり。それらに登場人物達の普通でない感情と行動が絡み合う。

あんまり当たり前の物事や出来事が続くと、面白くない小説になるのかも知れない。それでも、なにか主張のような、言いたいことがあって、結果として全ての辻褄が合う、いい小説ができ上ることもある。たまにだけど。

よく悪い小説やエッセイの例にあげられる、「朝起きて、朝ご飯を食べて、学校に行って、どうのこうの……」というのだって、それがどうしても書きたい冒頭なら、書いてもいいんじゃないか、と思う。そもそも、よっぽど度胸がないとそんなつまらないことは書けない。逆になにか、とてつもなく言いたいことがあるに違いない、と読者は思うかも知れない。そんなことはないか?

面白い筋を書け、と言っているわけではない。冒険小説や推理小説みたいにストーリーで読者を楽しませろ、とも言っていない。読者を次のページに進ませるなにかが必要だと言っている。魅力のある世界観みたいなもの。その小説の中にひたって気持ちがいいと思わせるもの。

面白くない小説はなぜ面白くないのか? 作者が本当の自己をさらしてない。どこかに嘘がある。書きたいことを書いてない。登場人物に魅力がない。無意味な繰り返しが多い。設定が意味もなく地味で、しかもそれが活かされてない。頭に鮮やかなビジョンがない。そのビジョンを言葉にできない。小説は映画に負けてはならない。読者の頭に場面を描かせるものでなければならない。

これは全部、私自身に言っている。次の小説を書くにあたって、これらのことを忘れないようにしようと思う。




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小説書き。生きづらかった日本を脱出して単身カナダへ。恵まれた自然の中でプロを目指して執筆中! 書いた作品は80作以上。短編はマガジンにまとめました。長編はこちらから⇒ https://ehappy888175296.wordpress.com/

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