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①:脱フュージョン


「思考」を「言葉」と「イメージ」の組み合わせに過ぎないと認識する。


「脱フュージョン」とは、「思考」は「ただの思考」に過ぎないと、しっかり認識することです。

「ACT」「マインドフルネス」の考え方がベースになっています。

「6つの基本行動原則」
①「脱フュージョン」〜④「観察する自己」
までは、マインドフルネス瞑想を行う際に心がけることと共通しています。


「思考」と「言葉」と「イメージ」でつくられる


では、「思考」は「ただの思考」に過ぎない、とはどういったことでしょう。

私たちの「思考」は、「言葉」と「イメージ」で成立しています。


そして「言葉」と「イメージ」よって、様々な「感情」がわきおこります。



例えばですが、会社で失敗をしてしまい、嫌いな上司に叱られたとします。
家に帰ってお風呂に入っている時、叱られた過去の出来事を思い出しています。

「また失敗してしまった、なんてダメなんだ」と、自己否定する人もいれば、
「まったくウザイ上司だ。あんな大きな声、出さなくてもいいだろ」
と、他者攻撃する人もいるでしょう。

そして、人によっては、頭の中で未来へと時間は進み、
「あ〜明日も、また、あの上司の顔を見るのか、あ〜ホントやだな〜、会社、行きたくないな〜」
と憂鬱な気分に支配されるかもしれません。

こんな風に、
「今ここ」で起きていない「過去」や「未来」のことを思い出して、今、実際に体験してるかのようになることを、心理学で「再体験」といいます。

思考が「今ここ」から離れ「過去」「未来」や「他の場所」へと「さまよう」ことから
「マインド・ワンダリング」
(mind wandering)

ともいいます。
「ワンダリング」(wandering)は、
「さまよう」という意味です。

 また、嫌な目にあって、ネガティブな出来事を思い出せば、実際に
「今、それを体験」
してるかのように、体は感じとり反応します。


私はこれが結構多い気がします。


嫌いな上司の顔を思い浮かべて、
「嫌だな〜」
と嫌悪感がわきおこれば、 目の前に嫌いな上司がいるわけではないのに、ストレスホルモンが分泌されてしまうのです。

ストレスホルモンが分泌されると、体に様々な影響が出てきます。これが「ストレス」の正体です。


「フュージョン」と「脱フュージョン」

でも、よく考えてみてください。もし、まったく思い出すことがなければ、つまり「思考」しなければ、ストレスにはなりませんね。

それに、ストレスになっているのは、
自分の「考え」(思考)
があたかも現実に起きているかのように、あるいは、これからの未来でも、実際に起きるかのように思考してしまっているからです。

頭の中にあるのは、
ただの「言葉」と「イメージ」だけなのに…です。

「言葉」と「イメージ」で作られた
「思考」が、
あたかも「現実」「真実」であるかのように認識している状態が「フュージョン」(融合)です。

「フュージョン」は「融合」という意味ですね。


反対に、自分の考えていること、
つまり「思考」は、現実に起きていることでもないし、それは真実でもないし、間違っている可能性だってあると、


「ただの思考に過ぎない」と、「切り離せている」状態が「脱フュージョン」です。


ここからは結構自分に置き換えたら「あるある」な話です。

「自己否定」「自己批判」の癖も直せる。

自己否定傾向のある人は、小さな失敗でも、「私はダメな人間だ」
「なんて自分は無能なんだ」
と頭のなかでつぶやき、自分を責め続けます。

そして、それが「現実」「真実」だと思い込んでしまいます。
するとストレスホルモンが分泌され、憂鬱な状態へと導かれていってしまうのです。

でも、
「私はダメな人間だ」
「なんて自分は無能なんだ」
と考えることは、ただ、頭のなかで
「言葉」をつぶやいているだけです。
頭のなかで言葉が流れていっているだけです。ただ、それだけのことです。

脳が生み出した「ただの言葉」を、あたかも「現実」の「真実」だと認識してしまうから、憂鬱になり疲れ果て、時には、鬱状態になってしまうのです。

だから、


「脱フュージョン」


なのです。


思考はただの「思考」であり、ただの「言葉」や「イメージ」に過ぎないと、それは「現実」でもなければ「真実」ではないと、しっかり認識するのです。


「脱フュージョン」の技法


では、「脱フュージョン」の代表的な技法をひとつご紹介します。技法はたくさんあります。日々、マインドフルネス瞑想をしているのあれば、確認の意味を含めて…。


例えば、
「私はダメな人間だ」と頭のなかでつぶやいた、つまり「思考」したとします。
ここでミニワーク。


実際、「私はダメな人間だ」と、10回、頭のなかでつぶやてみてください。


いかがだったでしょうか。嫌な気分になったかもしれませんね。


では、次に、「私はダメな人間だ」と、考えた後に、すぐ、頭のなかで、こうつぶやいてみてください。


私は今、「私はダメな人間だ」という考えをもった。


どうですか。少し違った感じになったのではないでしょうか。


この技法はマインドフルネス瞑想で
「ラベリング」
と呼ばれるものです。


瞑想は基本的に呼吸に意識を向けて、何も考えない「無念無想」を理想とします。

お腹の「ふくらみ」と「へこみ」に意識を置き続ける手法もあります。

とても簡単そうですが、熟練者でなければ、瞑想を始めると、
「雑念」(思考)が浮かんで、
「呼吸」に向けていた意識は、あっという間に、雑念(思考)に巻き込まれていきます。

そして、ふっと「あっ、雑念に巻きこまれている」と、「気づき」の瞬間が訪れます。

この「気づき」の瞬間に、その
「考えていたこと」
を言葉にして、

「私は今、〜と考えた」

とつぶやき、意識を呼吸へと戻します。


「雑念」(思考)に「気づき」、認識できればいいので、
シンプルに「思考」「雑念」「妄想」と、自分にフィットする短い言葉をつぶやくのも「ラベリング」です。

雑念(思考)に巻き込まれている自分に、自分が「気づく」ことで、「切り離し」が起きます。


それは、「雑念」と「無念無想」の「違い」を感覚的にクリアに理解していくことです。


これを繰り返していくことで、マインドフルネス瞑想では、「無念無想」の何も考えない状態へと近づいていきます。


そして、考えること(雑念)とは、結局のところ、ただの「思考」に過ぎないわけであり、言葉とイメージが連なっているだけであって、それは現実でもなければ、真実でもない、

「取るに足らないもの」

という感覚が、腹落ちしていくのです。


これが「脱フュージョン」の状態ですね。


瞑想をしなくても、日常生活のなかで、トイレでもお風呂でも、どこでもいいので、何かネガティブなことを思い出したら、


「私は今、〜と考えた。でも、それはただの言葉」


「今、〜が思い浮かんだけど、それはただのイメージ」


などと、実際に、頭のなか、胸のうちでつぶやいてみてください。


その時、自分のもった思考を否定しているのではないことを、必ず、覚えておいてください。

「そう考えた」と「気づく」だけです。

否定も批判もしません。


それが「アクセプタンス」(受容)です。


自分の思考を否定しないことは「ACT」の大事なポイントですので、胸に刻みましょう。


この点については、次の②拡張で、お話しします。



すると、思考にふりまわされて、嫌な感情を味わうことも少なくなっていきます。

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