マガジンのカバー画像

34riの「みんなのフォトギャラリー」を使ってくださった記事

155
「みんなのフォトギャラリー」にアップした、私(34ri)のイラスト・写真を使ってくださった方の記事です。数ある中から選んでいただき、ありがとうございます!
運営しているクリエイター

#小説

あのね

4歳になる次男は話かけるとき、 「あのね」 というのが口癖だ。 「あのね、お父さん、あのね」 なんとも可愛いらしい。 会話は続く。 「あのね、お父さん、今日ね、幼稚園でね、 「あのね、お友だちと遊んでたらね」 このまま眠りたくなる、 心地よい響き。 何を伝えたいかはわからない。 でも一生懸命伝えようとする 気持ちが見えて愛おしい。 子どもにとって、一日は長い。 その日にあった出来事は 大人にとっては些細なことだが、 子どもにとっては真新しい大きなこと。 凝り固ま

【ショートショート】「奇跡の裏紙」

「またやっちゃった」 印刷した大量のコピー用紙を見て、ため息をつく。明日の会議で配布する資料に、ページ番号を入れるのを忘れてしまった。ページ番号が振られていないと主任がいちいちうるさいので、データを修正して再度印刷をした。ミスコピーとなってしまった大量のA4用紙は、裏紙として使うことにした。 裏紙の束を自分のデスクの一番深い引き出しにしまい、ひとつかみほどクリップバインダーにはさんでデスク上に置く。思い浮かんだことを書きとめるときは、メモ用紙よりもこれくらいの大きさのほうが

赤い蓋のコーヒー|ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレスの物語

(※この記事は、筆者が暮らしの中で出会ったすてきな物を、独自に短編小説の形でレビューする試みです。PR記事ではありません。) 叔父の慎一郎は母の年の離れた弟で、ぼくと8歳しか年が違わなかったので、ぼくはいつも彼を「叔父さん」ではなくて「慎ちゃん」と呼んでいた。 慎ちゃんは隣町の古いアパートに一人暮らしをしていた。パン工場に夜勤でつとめていた。小学生だったぼくは学校帰りによく慎ちゃんのアパートに立ち寄って、夏でもずっと置いてあるコタツ机で漫画を読んだり宿題をしたり、時には慎

鮭おにぎりと海 #77

<前回のストーリー> しばらくすると、ご飯と一緒に魔法のランプのような入れ物に入ったカレーが運ばれてきた。ご飯の上には、少しだけチーズが乗っていた。 「相変わらず神木さんはカレーが好きなんですね。」 「おう、そうだな。海外旅していた時も、カレーがあったらその土地土地のカレーを食べて回っていたよ。」 「どこが一番美味しかったですか?」 「うーん、、一番と言われると難しい。でも、やっぱり東南アジアだろうなあ。どの国も香辛料の使い方がやたらめったら上手いんだ。中でも特にネ

午前1時の喫茶店 ~ショートショート~

 しとしとしと。  音はしないが気配がする。  時刻は0時50分。終電を逃した私は、喫茶店に身を寄せた。昭和を通り越して大正とでも言えるような、レトロな香りがするお店。きらきらしたカフェやカラオケなんぞには行きたい気分になれなかったから選んだ、ひっそりとしたお店だ。  「お好きなお席にどうぞ」と言われた私は窓際の席を選び、まず濡れた鞄をハンカチで拭いた。  黒とグレーの間の色をした革の鞄。丁度掌が収まる持ち手は金。ぱきっとした絶妙な柔らかさを気に入って、今日のために購入した特

山中千尋さんの小説

文學界11月号に山中千尋さんの小説が掲載されるそうです。 Twitter での情報では、アドリブがまったく出来ないピアニスト「わたし」が主人公のジャズ小説のようです。タイトルは「フェイシング・ユー」。 合わせて、岸政彦さんとの対談も掲載されるようです。 さっそく予約しました。今から楽しみです。

頭に映像を浮かべれば「文章」は誰でも書ける!?

ここのところいつも原稿を書いている。本やSNSやこのnote。原稿が進むときもあれば、まったく進まないときもある。その違いはどこから来るのか考えてみると、ひとつの結論にたどり着く。 「頭に映像が浮かんでいるか」 これに尽きるように思う。昨日の夜はレストランで「海の幸のスパゲティ」を食べた。言葉で書くと単に「海の幸のスパゲティ」なのだけど、その映像を思い出しながら書くとこんな感じになる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 少し青みがかかった白い皿に 盛られたパスタが運ばれ