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たくさんの失敗を経てたどり着いた夢中の道 『Third Way 第3の道のつくり方』 #362

「フェアトレード」と銘打たれた商品を買ったことはありますか?

コーヒーや茶葉、チョコレートや雑貨など、SDGsへの関心もあって注目も高まっているようです。

全体に品質そのものが上がってきたなという印象はありますが、一昔前までは正直に言って「ビミョー」と感じる製品も少なくありませんでした。少しくらい縫製が粗くても、好みと違っても、「かわいそうだから」という寄付の気持ちで買っていた気がする。

そうした目線に対して、いやいやちょっと待って、途上国だから品質が悪いと決めつけないで!と動き出したのが、25歳で「マザーハウス」を起ち上げた山口絵理子さん。自伝『裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記』には、バングラデシュでのジュートとの出会い、日本での販売の苦労が語られています。

本の出版から10年以上が経ち、「マザーハウス」で取り扱う商品も格段に増えています。「社会性とビジネス」「デザインと経営」「大量生産と手仕事」「個人と組織」「グローバルとローカル」といった、相反する概念をどうやって統合しながら切り開いてきたのかを綴ったのが『Third Way 第3の道のつくり方』です。

『裸でも生きる』で語られた子ども時代は、激しくてイタイものでした。そこから、「矛盾を強みに」と考えるまでになるなんて。「丸くなるな、星になれ」という、名コピーのイメージがそのまま当てはまるような姿でした。

山口さんの強みは、「途上国から世界に通用するブランドを作る」というビジョンがはっきりしていることなのだと思います。自分でつくったものだから、山口さんは夢中になれる。ですが、ビジョン経営の難しさは、すべてのメンバーがビジョンに共鳴して覚悟を決めていること。そこには理想と現実を埋める厳しさも伴います。

デザイナーとしての自分と、経営者としての自分を統合することだけでも大変でしょうね……。

でも、前書を読んだ方はご存じだと思いますが、山口さんはもともとデザイナーでもなく、経営について専門的に学んだわけでもないのです。そのため、第3章の「個人と組織のサードウェイ」や第4章の「大量生産と手仕事のサードウェイ」は特に興味深く読みました。

完全に個人として孤立するのではなく、
「ゆるやかにつながり、他者から学び、自己に戻す」。
これがこれからの働き方、生き方になるんじゃないだろうか。

気難しく、孤立しがちな職人を「集団」のよい部分とかけ合わせたい。たくさんの失敗を経てたどり着いた考えがこれです。

企業に多様性を! ダイバーシティ性を高めよう!なんていう言葉だけの標語を並べるくらいなら、ぜひご一読を。

育った文化の違う人たちと一緒に同じ夢を見るなんて、簡単なことじゃないんですよね。


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