百万ドル

海外エンタメ小説の魅力満載 『百万ドルをとり返せ!』 #151

海外小説や映画に触れる時、日本語しかわからないわたしと作品をつないでくれるのが「翻訳」です。映画の場合は「字幕作家」と呼ぶ人もいるくらい、「文字」と「映像」は別世界です。

あれは高校生の頃だったのかな。日本の小説ばかり読んでいたわたしに、海外のエンタメ小説にもいいのがあるよと教えてもらい、たぶん初めて触れたエンタメ小説がジェフリー・アーチャーの『ケインとアベル』でした。いま考えると、なんでこんなヘビー級から勧めちゃったのかなと思いますが。笑

わたしならデビュー作の『百万ドルをとり返せ!』を押しますね。

詐欺師のハーヴェイ・メトカーフに、百万ドルを巻きあげられて無一文になった四人の男たち。「1ペニーも多くなく、1ペニーも少なくなく、返してもらおう」と、詐欺師を相手に詐欺を計画。天才数学教授、医者、画商、貴族がそれぞれの専門を生かしたプランを持ちより、自分たちのお金を取り戻していきます。

なんといっても詐欺の素人ですから、不足の事態にオロオロしっぱなし。冷や汗をダラダラかきながら笑顔でだます手口が本当に絶妙なんです。イギリス式のいわゆる「ウィットに富んだ会話」ってこういうの?とドキドキしながら読みました。

もちろん原作(英語)を読んだわけではないので、あくまで日本語になった翻訳です。『ケインとアベル』から始まって、『百万ドルをとり返せ!』、『大統領に知らせますか?』など、ほとんどのアーチャー作品を読んでいます。

でも、ある本から、プッツリ読むのを止めてしまいました。理由は翻訳者が変わったからです。

アーチャー小説すべての翻訳を手がけてきたのは永井淳さんという方で、残念ながら『誇りと復讐』を最後にお亡くなりになりました。

翻訳者は亡くなっても、作家は生きているので新作がでます。新しい翻訳者が担当した新刊がでます。もちろん、プロです。悪くはないのです。

これはドラえもんの声優が変わった時の違和感のようなものかもしれません。あまりにもなじみすぎていたんですよね……。

わたしが楽しんでいたのは、アーチャーの作品なのか、永井さんの翻訳なのか。

ということを考えてしまったきっかけは、自分がいま韓国小説の翻訳をしているから。昨日ようやく初稿ができました。ここからが大変ですが、おそらく初めてこの作家の作品に触れるであろう読者に、いい出会いを提供したい。次の作品につながる道を拓きたい。

子どもの頃のわたしと永井さんの出会いのように。

永井さん訳のアーチャー作品で新刊で読めるのは、『百万ドルをとり返せ!』と『ケインとアベル』のみだそうです。お試しあれ!

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