中国ニューリテールの転換点となった2019年、2020年はサービス産業のDXが新たなトレンドに?

にーはお。毎年恒例の中国のインターネット業界振り返りです。

過去記事

2017年:中国2017年の消費とインターネット45のテーマ 
2018年:2019年の中国:リアルPOS獲得戦争の完成とメーカーを巻き込んだ新小売~ATの総合商社化~

私自身は中国で小売事業を展開している日系企業のデジタル領域の支援を行う会社にて、プロジェクトのマネジメントや新規の提案活動をしていました。そんな小売の視点から2019年の振り返りと2020年の展望を簡単に書きたいと思います。

2018年の記事では「2019年の中国小売はPOSデータを巡った動きがより活発になる、PB元年になる」と書きましたが、実際はよりダイナミックな動きが起きたように感じます。中国小売にとって大きな転換点になったことを感じさせる2019年のニュースをピックアップします。

1:Alibabaの投資先である小売業界最大手のサンアートリテールグループがDXを推進

日本では「中国はとにかくデジタル化がすごい」という漠然とした認識がされていますが、実際はそうでもありません。あくまでスタートアップ(Luckin Coffee)やインターネット企業の新規事業(Hema)でゼロから事業を推進できる企業では先進的な取り組みが見られるものの、多くの伝統的大企業でデジタル化が進んでいるとは言えないです。

確かに消費者側にインターネットが「深く」普及していますが、供給側(例えば店舗内の商品がリアルタイムでECと連動している)のデジタル化はまだまだです。そのような状況にあって、Alibabaが出資してDXを推進していた、サンアートリテールグループの成果は業界にとって大きな意味を持ちそうです。

Alibabaが2017年11月に出資した仏オーシャン系のサンアートリテールグループ(GMSを中心に中国で小売業を展開する業界大手)がDXを大きく推進。フードデリバリー事業の黒字化に成功。480店舗の内、10店舗のデジタル化を達成し、2020年には50店舗のデジタル化を目標に据えることを2019年12月18日公表・宣言した。

2:OMOを代表するHemaとLuckin Coffeeが引き続き拡大。Luckin Coffeeは黒字達成を見込む

Next・OMO~中国OMOの次に起こる小売革新は何か(前編)~」で、「OMO」を「来店を前提としない店舗作りを志向する小売の業態の1種」と定義しました。そのOMOを武器に各市場を席巻しているのが、スーパーマーケット業界のHemaとコーヒー業界のLuckin Coffeeです。日本でも非常に注目を集めた両社ですが、2019年も大きく飛躍しました。

OMOという業態の確立と見ても良いのではないでしょうか。

2019年6月にHemaはAlibabaグループの中で独立した事業部に昇格。2020年1月19日時点で153店舗を展開。2018年12月31日時点で122店舗、2018年時点で97店舗があったことを踏まえると、新規出店数は若干減速しているが、累積出店数は積み上がっている。
2019年10月の発表によると、PB化比率は10%にもなった。中国小売産業全体ではPB化率は1%でしかないので、かなり積極的にPBを推進していることになる。

デリバリーとピックアップに特化したコーヒーチェーンを展開するLuckin Coffeeに黒字化の目処が立った。
配送費がかかってしまうデリバリーの比率は2018年初めには60%を超えていたが、今や20%を下回るまでになった。これによって売上に占める配送費の割合も42%から、20%まで下げることに成功。コーヒー以外の商品(お茶や軽食)も投入し、コーヒー以外の新たな市場をOMOモデルで開拓している。その他数値も大きく改善し、全体的に黒字化の目処が見え始め、来店を前提としないOMO業態の確立の成功に大きく前進した。

参考:「Luckin Coffee 2019年Q3には「戦略的赤字」から「損益分岐点」へ

3:カルフールが中国事業を大手流通グループSuningに売却

外資系小売が中国市場において、主役ではなくなっていることを象徴する出来事もありました。

中国流通近代化に大きく貢献したカルフールが中国で家電小売をメインに展開する大手流通グループのSuningに中国事業を売却することを2019年6月に合意。カルフールは1995年に中国に進出し、ハイパーマーケットという業態を初めて持ち込んだ。中国小売は他国に比べると、メーカーへ取引に対して様々な名目で手数料を要求するが、それを持ち込んだのはカルフールが定説となっている。このモデルは、ウォルマートやイトーヨーカードなど多くの外資企業、そして内資企業に普及していった。まさに中国流通産業を牽引した立役者であるが、それが中国ローカルの小売グループに売却された。

そして2020年からの大きなテーマになるであろう、サービス産業のDXへの布石がありました。

4:ローカルサービスのプラットフォーマーMeituanが黒字化

モノが溢れ、時間価値が高くなるにつれて、「自分の近くに何があるか、そのサービスを受容するのにどれだけ時間を要するか」が大事になってくるのではと思っています。

・そのような時間価値がメインとなる時代に、検索ブラウザに代わる新たなプラットフォーマーが生まれるのではないか?
・中国はコンビニがあまり普及しない(&日本ほど販売以外の付加価値機能を持ちにくい)ことで、オンラインの世界のプレーヤーがその覇権になるのでは?
・そのポジションをMeituanが担うのでは?

そのMeituanが黒字化を達成したこで、ローカルサービスのデジタル化にさらに注目が集まり、資本が集まるのではと見立てています。

ありとあらゆるローカルサービスの口コミ情報を提供するMeituanが2019年度Q2,3と連続して黒字化を果たした。Meituanは共同購入サービスとして2010年に誕生し、2013年にホテルやフードデリバリー、映画館の領域に参入。2017年には配車にも参入している。

5:Alibabaが「新小売」に続き、「新サービス」を提唱し、サービス産業のDXを推進

11月19日、Alibabaローカルサービスの総裁王磊氏がAlibabaローカルサービス・システムを発表した。「新小売」に続き「新サービス」戦略と命名している。新小売が小売産業のDXと捉えると、新サービスはサービス産業のDXと言える。新小売と同様にAlibabaがM&Aも行いながら、業界の先陣を切っていく宣言だろう。小売ではモバイルペイメントによってオフラインとオンラインの世界を繋げDX推進の要としたが、サービス産業ではどのような打ち手を打ってくるだろうか?

しかし、小売と違って、サービス業はデジタル化が難しいです。サービス業は以下のような性質を持ち、デジタル化以前に業務・提供価値の標準化が難しい。そのようなサービス業でAlibabaがどのような打ち手を打ってくるのかに注目しています。

・サービスには形がない
・生産と消費が同時のため、在庫にできない
・顧客ごとにサービス内容が異なる
・顧客も参加する(フィットネスなど)

2020年の展望~小売(モノ)のDXからサービス(無形価値)のDXへ~

2019年をまとめると以下のような1年になりました。2020年は以下の動きがより加速すると共に、消費者側のデジタル化ではなく供給側のデジタル化が進み産業の効率化がより浸透する1年になるのではないでしょうか。

・外資が中国小売を主導する時代は終わりに近づき、内資が新たな業態を創造する時代に
・Alibabaが推進したニューリテール(小売産業のDX)が大企業で成果が出始める
・HemaやLuckin CoffeeなどOMO業態が定着の兆し

一方、小売産業でデジタル化が浸透していくことは、別の産業でデジタル化が始まるタイミングでもあります。それがAlibabaが宣言したサービス産業におけるDXではないか。


そんなわけで私は、2020年からはヨガ・ピラティス・介護事業を展開する日系企業で中国事業を推進します。中国も日本と同じく高齢・人口減少社会と向き合う中で、「介護」「医療」産業を中心とする新たな課題に直面します。上述の通り、小売産業は内資企業がスケールを追求し外資が対抗するのが難しくなっています。一方サービス産業はその構造上、規模の経済を追求するのが難しく、それが故にまだ外資企業が中国市場で勝てる領域でもあります。

と小売の経営者は思っていたのではないでしょうか(上の文章の「小売」を「製造」に、「サービス」を「小売」に置き換えても意味が通じます)。店長を置かずに・店舗内で消費させずに、デジタルでサービスを完結させるLuckin Coffeeが一気に主役に躍り出ました。

サービス産業は小売よりもさらにヒトに依存するため、スケール化は難しいですが、Alibabaらがその常識をぶっ壊すサービスを出してくるのが2020年になるのではないでしょうか。

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というわけで、サービス産業×デジタルでディスカッションできる友人を探しています。相手してもいいよという優しい方はTwitterFBBosyuからご連絡していただけると喜びます。(初めての方は簡単な自己紹介を記載していただけると返信がしやすく助かります)

2010年代中国でアプリとモバイルペイメントが一気に普及し、小売産業のDX、そしてサービス産業へのDXという一連の流れを「中国デジタル化通史」として出版できるよう思考を深める1年としたいです。出版先も探しています。

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ピラティス・ヨガ・訪問介護を運営する日系企業で中国事業とデジタル化の推進。 ←小売企業の中国×デジタル領域の支援 ←モバイルペイメントの会社でPM ←ECアプリの会社でPM