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防災のデザイン

【クリエイティブリーダーシップ特論レポート】
武蔵野美術大学
造形構想研究科造形構想専攻
クリエイティブリーダシップコース

7月13日(月)18:10-19:40
クリエイティブリーダシップ特論 第9回 佐伯潤さん

 今回の講義は市ヶ谷キャンパスで生で拝聴していたのですが、佐伯さんの容姿や迫力に圧倒されました。その道のプロということで常に防災グッズは持ち歩き緊急事態に備えているよう。私たち一般人にできることは限られますが「備えあれば憂いなし」と言われるよう、講義を受けて災害時にどのように行動するべきか考える良い機会となりました。

判断力と訓練の重要性を説く

 今回の論点ポイントは主に2点に集約できると思います。

判断力
 佐伯さんの講義の中では補助ノートを使用しながら進行をしていったのですが、それぞれ考える時間が非常に短かったのが特徴でした。「XXについて考えてみてください」「○○について思い浮かべてみてください」という問いに対して制限時間は20〜40秒程度です。これも佐伯さんの災害時の思想によるもので、それはとにかく素早く判断をすること。別の言葉では災害対応における失敗とは判断をしないこととと言っておられました。判断に悩んでしまい無駄な時間を1分1秒でも要してしまえば、その間に本来救えるべき命を落とすような事態にもつながるため「できない」「やらない」という判断でもいいので瞬時に判断できる力を身につけることが重要ということです。優柔不断でLast minutesまでなかなか決断ができない私には耳が痛い話ですが、決して災害時だけの話でもないので、素早く決断を下すことを日頃から意識しておきましょうと再認識させられたような感覚です。

訓練
 平時ですらしたことがない特殊なことを、有事の際に適切に実施できるかといえば明らかに”NO”です。自分の命が最優先であると繰り返し仰っており、自分を守るためにも、被害を拡大させないためにも訓練を受けたこと以外はしないというのは別の大きなポイントです。逆に緊急時に人助けをすることを望む人に対しては訓練を受けるよう説いていて、その際には失敗を経験しておくことを強く推奨していました。今もニュースを見ると、「想定外の事態」などという言葉が政府や専門家からも頻繁に出てきていますが、完璧なシュミレーションを机上で弾き出すのでなく、実際に体で感じて、実際にそこで失敗を経験してこそ本来の有事に役立つ知識や知恵が得られるのでしょう。


デザイン × 法律 × 災害

 今回は佐伯さんの普段提供している「災害対応力講習 基礎訓練編」の短縮版ということでしたが、最後のQAの際におっしゃっていた経歴がとても興味深かったです。もしまた来てもらえるような機会があれば、もう少し経歴を詳しく伺いたいと思いました。佐伯さんのスタートはデザイナーのようですが、現在は国士舘大学で法律・知財を教えているということ。そこに東日本大震災をきっかけが加わり、防災のスペシャリストになっていたということです。私も学部時代は法律系に属する政治学が専攻であり、今年からデザインの道に踏み出していったため親近感が湧くとともに複数分野の組み合わせによって新たな価値観が創造できる可能性を感じました。

 佐伯さんのプレゼンのビジュアルや伝える力は妙にリアリティがあり、いつも以上に伝わってくる感じがありましたが、これもデザインの力なのでしょうか。どうすれば人を引きつけるプレゼンになるかという、内容とは全く異なる観点でも勉強になりました。


■佐伯潤
国士舘大学 防災・救急救助総合研究所 嘱託研究員/教官、鉄道系サービス会社BC研究センター 主任研究員/人命安全研究会・座長。災害対応に必要な技術、知識の訓練設計と訓練指導を専門分野としている。実学として、主として企業防災を手掛け、鉄道系サービス会社では、同社が管理を手掛けている駅、商業施設、オフィスビル等に関連して、鉄道系グループ各社の災害対応訓練を統括している。またその他、民間企業向け自衛救助隊訓練のインストラクターや防災顧問、スポーツ用品メーカーの製品開発支援などを務めている。



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