見出し画像

おすすめの曲②:モーツァルトのK.10-K.15

  「おすすめの曲」の第2弾を書きます。以前、「レッスンで出会った珍しいフルートの曲」という記事で(リンクがはれずにすみません)、「普通にフルートを習っている人でもめったにやらない、超珍しい曲」を一気に紹介してしまいました。このシリーズでは、私がやったフルートの曲で、「フルートをやる人たちの間ではよく知られているけれど、一般のクラシック音楽ファンは普通は知らないような曲で、いい曲」を紹介していきたいと思います。もっとも、第1弾では、イベールの「2つの間奏曲」という、フルート、ヴァイオリン、ハープ(またはピアノ)の曲を紹介してしまい、これはレッスンで習ったわけでもありませんでしたが、今回からは、レッスンで習った曲を中心に、少しずつ、ご紹介できれば、と思います(いわゆる「フルート業界曲」というやつですね。どの楽器にも「業界曲」があります)。

 モーツァルトに、K.10-K.15という、ケッヘル番号の小さな、6曲のフルートソナタがあります。私がレッスンで習ったのは、変ロ長調K.10でした。(人前で吹いたことはありません。)これらは、モーツァルトが8歳(!)のときの作品です。きっと、よほどのモーツァルト・ファンでないと、知らない曲ではないかと思い、しかしフルート業界ではけっこう有名な曲なので、紹介する次第です。

 なんか、小さいころの記憶を思い出しますね。モーツァルトが15歳くらいのときのオーケストラ曲を、大の大人がみんなで演奏しているさまが、なんとなくこっけいだったのです。でも、今はわかります。この8歳のときのモーツァルトの作品も、非常に魅力的であります。

 ここで、いきなり演奏論に入ります。ここでは、私が、この6曲の魅力をよく伝えていると思う、かたよった(?)趣味の演奏を披露することになります。(しかし、「かたよっている」ってなんですか。「少数派」ということだけではないのですか。たとえば私の脳は「生まれつきかたよっている(発達障害)」と言われます。しかし、私みたいな脳のつくりの人が多数派ならば、私の脳は「かたよって」おらず、これが標準となり、あなた(失礼!)の脳が「かたよって」いることになります。というわけで、「かたよっている」と言っても、それは少数派であることしか意味しないので、かまいません。そもそもモーツァルトのK.10-K.15を紹介する時点で、じゅうぶんに「かたよって」いますし。)

 すなわち、オーレル・ニコレのフルートと、小林道夫のピアノによる演奏です。もちろん、これは、いまとなっては「時代錯誤な」演奏なのでしょう。あまり詳しくないかたにご説明申し上げますと、ニコレの時代から、バッハやモーツァルトの時代の音楽の演奏スタイルは、だいぶ変わりました。時代考証がなされるようになり、従来型の演奏が見直されるようになってきたのです。その意味では、ニコレは「従来型」の演奏家ですので、この演奏は「古い」のでしょう。(チェンバロじゃなくてピアノで演奏してますしね。)しかし、これらの曲を愛するニコレの「愛」はずばぬけていて、私はどうしても、これらの録音を無視できないのです。この録音よりも、さらにニコレの真価が出ている演奏があります。いまYouTubeで聴けますが(リンクがはれなくてすみません)、ニコレとゾルタン・コチシュ(ピアノ)のリサイタルのアンコールで、ニコレがハ長調K.14を吹くのですが、その名人芸、羽のはえたような軽やかさ、どう聴いても魔法みたいなので、もうこの魅力にはあらがえません!

 とにかく名曲です。とくにモーツァルトのお好きなかたには、「新たなモーツァルトの作品に出会えた」という喜びがあるのではないかと思います。もちろんニコレの演奏以外の演奏で聴いていただいても結構です。たしかに、後年のモーツァルトのような「すごみ」は、まだない曲と言えるでしょう。たしかに8歳の子どもが書いた、ちょっと「幼い」曲です。しかし、たしかに名曲なのです。どうかお聴きください。6曲あわせて1時間くらいの、短い曲集です。おすすめです。

 以上です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?