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Behind Design「中毒性のある料理に通じる格式と狂気性を内包させたレストランVI開発」

9月に四ツ谷にオープンした「ab restaurant」のロゴとショップカードのデザインを301が担当しました。
店名の由来となった「アブサン」は食前酒として口にするのがフレンチのクラシックスタイルとも言われており、名だたる芸術家たちが酔いしれたとか。そんなアブサンがもつ狂気性を内包させたロゴデザインの裏側を担当ディレクター兼デザイナーの宮崎からお話します。

ーー今回のチームにはどのようにして参画することになったのでしょうか?
インテリアデザイナーとして活躍している大学時代の友人から内装を手がけるレストランのロゴデザインを依頼されたのが最初。
彼とは長い友人関係であっても、今まで一緒に何かをするチャンスはなかったから。純粋に、今回一緒に仕事したら面白いだろうなと思った。考えただけでワクワクできたんだよね。
その後、紹介されてレストランの方々にお会いした時も、とても良い人たちで、世代も近いし、力なりたいなと思えた。何よりシェフが名付けた店名に深い思いが感じられたかな。

ーー「AB」ですか?
そう。僕が参画したとき、店名はすでに決まっていて、由来は「アブサン」。これは古くから、ピカソやロートレックをはじめとした芸術家が愛した禁断のお酒の名前で、食前酒として出すのがフレンチのクラシックスタイルのひとつらしいんだよね。それで、このアブサンが「魔性のお酒」と呼ばれているように、中毒性のある料理を自分たちも提供したいという彼らの思いが「AB」に秘められていた。
そんな話を聞いて、芸術家たちが愛したクラシックなお酒を店名に掲げるこだわりと、シェフたち自身のアートへの興味を感じでいたので、レストランとしての格式を保ちながらも、ちょっと狂気性を内包している方がいいなっていうのがファーストインプレッションだったかな。

ーー中毒性のある料理。料理人の方のこだわりを感じます。
そうだね。そのためにも、僕が感じた狂気性を内包させるのは崩しすぎないバランスが大事だった。「奇をてらったもの」ということではなく、価値を担保しながらもどこにそれを感じさせるか、は最初からイメージがあったかな。
「液体」をテーマとして、アブサンの特徴的な飲み方である、アブサンスプーンに角砂糖を置いて、そこに給水機のコックをひねって水を一滴一滴垂らして砂糖を溶かし、下のグラスに入っているアブサンとの濃度を調整しながら楽しむ、という要素を表現したくて、この垂れる雫を表現したロゴタイプを発想したんだ。

ーー垂れるイメージが狂気性に繋がる、ということなんでしょうか?
「何かが歪む」という事象が狂気性をはらんでるんだよ。漫画とかでもよくあるけど、精神的に追い込まれると世界がぐにゃっと歪んで感じるとか、平衡感覚がなくなるとか、酩酊感とか、人間の感覚の中にもあって。それを表現するのに液面のような歪ませ方を入れ込むのが有効なんじゃないかって考えた。

ーーなるほど!実際皆さんにロゴをお見せした時はどんな反応でしたか?
二つ返事で喜んでくれたよ。さすが料理の人だな、と思ったのは意思決定が早いこと。僕の中でイメージが固まっているとはいえ、パターンをいくつか持っていったんだけど、彼らはその場で即決してくれるんだよね。それは、彼らにも理由があって、「どれも気に入っているから、考えるほどわかんなくなる。なのでファーストインプレッションで決めます」って。直感を大事にする人たちなんだなって思った。

ーー301は、料理関連の方達とお仕事する機会は多いですよね。
うん。だからコミュニケーションの部分では特に苦労はなかった。年齢も近いし、フラットに考えを言い合える関係性は作りやすかったんだ。301のスタイルは、「クライアント」と「発注先」という関係性じゃないから。相手の希望を叶えるために意見に従うってことではなく、デザインの部分では自分も意見を出して、お互いに自分の意見に対してもう一回考える機会を作ることに301がチームに入る意味があるんじゃないかな、と思うんだよね。

ーー「直感」と「考える」は対局のような気もします。
僕の場合は、そのふたつは対局ではなく、ロジックが必ずあって、そのロジックで足切りをした上で感覚や直感を大事にしている感じなんだよね。パッとつくっているようで、かなり俯瞰したレイヤーから見極めているから実は結構理屈っぽいかもしれない(笑)

ーー実際ABに来てくださるお客さんからも何か反応はありましたか?
ショップカードを手にしたお客さんも気に入ってくれた人が多いって聞いてる。アブサンは鮮やかな緑色のお酒なんだけど、その緑をキーカラーにしたいって要望があって。そこに原料のニガヨモギを感じさせる少し渋さのある緑と手触りのある素材の紙を選んだ。
あとは、今回一緒に仕事ができたインテリアデザイナーの友人は、ロゴの見え方や看板の位置もロゴのパターンに合わせて空間全体を演出してくれたから、僕自身とても自由にやらせてもらったかな。アート表現を取り入れたいっていうのは元々レストランのみなさんからの希望だったので、その空間も含めて、これからたくさんの人がお店に足を運んで感じてもらえたらいいかなと思う。

301 では、クリエイティブ組織の常識を超え、仕組みや関係性を設計したプロジェクトデザインを行なっています。ご興味を持っていただけた方はお気軽にご相談ください。


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