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心臓

冷たくなった自分の指先を
温めてくれる人がほんとうに誰一人としていないから
神様
私は
あなたからもらった自分の心臓の上で
凍えそうな指先を温めることにしました

夜は
誰かと身を寄せ合って眠りたいけれど
誰一人私の部屋にはいないから
神様
私は
あなたがまだ動くのを許している自分の心臓を
抱き抱えるようにして丸くなって
眠るのです

疲れ果てて帰宅しても
どんなに耳を澄ませても
『おかえり』も『お疲れ様』もなんにも聞こえてこないから
まだ仕事の延長でドクドクと速い拍を刻む
自分の心臓の音を
子守唄にして眠ります

あなたが与えてくれた
ちいさなぬくもりだと
勝手に解釈してます
この心臓が トク、トク、トク…と
動き続けていることが
あなたからの唯一の愛の証拠だと
勝手に解釈してます
そうでもしないと
私は気が狂いそうです
哀しくて 哀しくて
しんどくて つらくて…
でも愛を注げる相手がいなくて
手っ取り早く手に入れようなんて思ってない
それなら死ぬまで孤独でいてもよい
神様
あなたが手を繋いでくださっているという
確かな感触があれば
まだ
生きていけるのに
それすら…わからないよ
勝手な解釈をするしかなくて
本当に勝手でごめんなさい

この音が
途絶えるまで
共にいてください

死にたいけど
死ねないから

どうか 最期まで共にいてください

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