やらされ感なく仕事する


 こんにちは、スカーレットです。高校で英語を教えながら、個人でバックパッカーをするように旅して世界の人と深く語り合うための英会話、を教えています。

 また、昨年出会ったタイムウォーリアーという英書が、自分の仕事観と生き方とを変えてしまったので、その衝撃を日本の多くの人たちに届けたくて、翻訳書を出そうとしています。和訳をしながら、出版をどうしたらできるんだろう、と模索しています。

 さて、外出制限が緩和され始めてひと月近くが経ち、形態はどうあれ日常の仕事が戻ってきた人も、多いのではないでしょうか。中には、そうでない人もいるかもしれません。きっと、このパンデミックを通して、世界の在り方がそれまでとは違った形に、大きく舵を切っていることは確かだから。

 いずれにしろ、私たちは仕事を通して社会と交わっていくことで、エネルギーを自分の外界から吸収し、また自分から外へ放って、生きていくことになります。

 その仕事は、いわゆるサラリーマンやOLとしてどこかの誰かの作った仕事の枠組みに貢献していくことかもしれないし、個人事業主として仕事を請け負ったり、また何らかのサービスを消費者に直接提供する店舗の経営のように、勤労の報酬として金銭的な対価を得ることかもしれません。もしくは家族などの枠組みの中で身近な人にケアを提供するという、金銭的には対価の発生しないことかもしれません。

 いずれにせよ、私たちは、他者と仕事を通してエネルギー交換しながら、生きていきます。

 先日、「人の求めに合わせて働く」という記事を書きました。

 他人の求めるものに合わせたサービスを目指すのは大事だけれど、必ずしもその人や職場がその人やカスタマーの「本当の望み」を突いているとは限らないのではないか、そうだとしたら私たちはどう働いたらいいのか、という問いについて書きました。

  「やらされ感なく仕事する」は、私なりのその答えかもしれません。

 6月からばたばたと再開した学校が、期末テストの時期を迎えている。今回の考査は休校中の自学部分も範囲に含まれるから、一つのテストでカバーする量としてはいつもに比べて多い。そこは自学、と割り切ってしまえば良かったのかもしれないが、そうは言っても自学で理解をすすめられる生徒は限られている。――と言った時に、老婆心でテスト前の「教科書の内容を、一方的に」的な講義を、最後の数十分、やってしまった。授業後、いや、一方的な講義を始めたあたりから、生徒の瞳を曇らせてしまっていて、失敗した、と思った。

 教科書「を」教えるか、教科書「で」教えるか。教職課程を取ったことのある人であれば一度は考える機会のあるテーマだが、それは言い換えると、「教科書の情報をダウンロードするための授業」を行うのか、「教科書の情報の持つ背景の理解やその生活への活用に重点を置いた授業」を行うのか、ということだと思う。いわば、前者は基礎知識で、後者はその応用や、深さを求める。「間」のない一方的な講義は「教科書を教える」の代表的な例である。

 もちろん、基礎知識なしに応用はあり得ない。文法事項を1時間に10も20もやらなければ終わらないようなカリキュラムになっているのは、制度にも問題がある。

 だけど。

 私は考える。

 テストのために教科書の情報をさらわなければならないと考える教員の私は、テストで生徒が上手くやれるようにという一見全うな動機からそうしている。けれどもそれは彼らの「表面上の求めること」ではないか。授業のどの時間でも、授業は英語に対する彼らの好奇心や興味を萎えさせるものであってはならない。英語という教科の持つ面白さや可能性を媒介することに、私はもっと責任を負っているのではないか。それがこの職業が私に求めていることだ、と、少なくとも私は思っていていいんじゃないか。

 ――そんなこと言っても受験英語をしなくちゃ、は、高校で仕事をしている限りは、当面の間は、あるだろう。もっと、教科書という素材を吟味して調理方法を工夫して、美味しく生徒に出せるようにしよう。

 その一方で、本当に必要だな、と思える英会話を教えて、そのレッスンでしっかり対価をいただけるようになりたい。それは、「やるべきこと」で多少なりとも薄まってしまう指導要領に基づいた1時間、よりもずっとパワフルで、学習者を助けるはずだから。

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 あなたはあなたの仕事が、雇用主やお役所やそのほかのあなたの仕えている人に「やらされている」と感じている部分がありますか?仕事でなくても、きっと同じ。生き方、選択、もろもろです。


 それを「自分のやりたい」に転換していくことが、たぶん、自分も周りも幸せに生きていくための、秘訣かもしれません。

 言うは易し、行うはきっと、リスクが伴う。

 飛べますか?

 飛べるかな、わたし?






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