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無意味で惨めな話し合い【無料記事】

妹からのメールには、もう1つ気になる事が書いてあった。


「おばあちゃんが鉄ちゃんにお金を送って欲しいって言ってるらしいんだ」
鉄ちゃんとは叔父である。
父のすぐ下の弟で、同じ市内に住んでいる事もあり、父が祖母を見れなくなったら祖母の今後を引き受けてくれる事になっている。
私は妹からのメールを読んで、祖母が叔父にお金を要求しているのかと思った。
しかし実際は違っていて、祖母が父に
「鉄の所にお金を送りなさい」
と言っているって話だった。
どっちにしても訳が分からない。
離婚届に対して父がどんな反応を見せるのか…
何故父が叔父にお金を送らなければならないのか…
直接話を聞くまでは何一つ分からない。

妹と二人で父の家に行った。
父は妹に通帳を持って来る様に言っていたらしく妹は空になった通帳を何冊か持って来ていた。
継母が持って出たお金がどんな事になっているのか確認したいとは以前から言っていたが、実際にその時が来たのは残高が無くなった今になってしまった。
そして父にとっては悲しい事だがオマケに離婚届が付いて来た。
私と妹は生活の為…って前提で離婚の話を持ち出した。
父の姿が一番惨めに映ったのはこの日だ。
「なんか生きてるのイヤんなっちゃったな…」
と呟いた父に妹は
「そんな事を聞かされる娘の気持ち考えた事ある!?お父さんは寂しいから酒を飲むんじゃないじゃん!私達が居たって飲んでたじゃん!そういう事を言うの本当にやめてよ!」
と叱りつけた。
【でもさぁ、寂しいよね…どうにもならないよね…】
心の中で父を想い私はうなだれた。
今ここで離婚届に捺印出来ないと言う父に
「離婚したくない理由は何?」
って訊いてみた。
父の返事は
「…お母さんの事を愛しているから…だな」
だった…
父のこの言葉は私の今後の行動に大きく影響する。
凄く重大な意味を持つ一言になるのだ。
ただその時は
「いつなら捺印出来るの!?」
と言う妹に
「来週…来週押すよ」
と寂しく答える父を黙って見つめる事しか出来なかった。
愛しているから押せない判子をいつなら押せるとか、そういう事では無いのでは無いか…
愛する気持ちを整理するのに1週間なんてそもそも無理な話である。
無意味な話し合いに思えた。
妹は父がちゃんとに家賃を払っているかを父の通帳でチェックをして、今度は祖母の言っている意味不明なお金の話を父に訊ねた。

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