アイドル学会連続講座(講師:濱野智史「AKB論」)雑感
知己から「こんなものありますよ」的なお知らせが来たので足を運んでみた。
会場は法政大学市ヶ谷キャンパス内の大きめの教室。
濱野智史と毎週のように顔を合わせていたのが会議室だったので、なんとも懐かしい感じ。
アイドル学会は告知用のツイッターアカウントしか無いので、実態がよく分からないが、稲増龍夫を中心にして「アイドル学会連続講座」を開催し、2019年の設立を目指しているらしい。
受付の氏名などを記入する紙には「所属」という欄が有ったが、それは研究者であれば大学名や研究機関名、メディア関係者であれば勤め先などを書くものだったようだ。
私は何処まで行っても客でしか無いので空欄にしておいたが、何かもっともらしい肩書や組織をデッチ上げておくべきだったかもしれない。
内容としては濱野による私的AKB史という感じ。
関わる以前のこと、離れて以後のことについては語らない姿勢、身の回りで起こったことについて確かなことは確かなこととして、伝聞は伝聞として語る分別は学究としての濱野を良く表していた。
PIPの終焉(と言うか、濱野が投げてしまった訳であるがそれはさておき)以降はAKB48だけて゜なくアイドル全般について情報を更新しておらず、興味の中心が別のところに移ったのが解る。
アイドルに引き寄せられる客の習性として「分類したがる」「やたらと隠語が多い」などを挙げており、それを調べること、知ること、整理することが濱野の興味を惹いたのではないかと思う。
握手会対策についても、初会の失敗から「考える」→「試す」を実践し、得られた情報を知識として再構築している。
そして送り手側にも立ってみて、「或る程度理解の目処が付いた」ことから(他の要因もあったとは思うが)醒めて離れていったのではないか、と、私は考えている。
所謂「地下アイドル」を、濱野は「マスメディアに露出しないアイドル」と定義していたが、アルテミスプロモーションの野間真が「地下アイドル」を広く売れることを目指さない自社の方針に絡めて自虐的に使い名乗ることに依って広まるまでは、高倉文紀が「まだ(メジャーレーベルから)デビューしていないアイドル」として名付けた「プレアイドル」がほぼ同義の言葉として使われていた訳であり、「マスメディアに露出しない」≒「「まだ(メジャーレーベルから)デビューしていない」とすれば、最適解に近いのかもしれない。
握手会及び「総選挙」を僭称する株主総会的イベントについては、私と違って肯定的に捉えて話していたが、それは濱野の個人的な体験に基づいた話であり、考え方としては相容れないが、理解は出来た。
メディアを通して見ると取りこぼしてしまう情報が劇場にはある例として出していた、観に行った初代チーム4公演の終盤、「Bingo!」の間奏部分で花道に来た島崎遥香と目が合った(ような気がする)話などは、劇場公演を体験していない向きには理解しにくいかもしれないが、あの空気を体感したことがある者には大いに頷ける、疑似神秘体験の告白であった。
同じ演目でも同じ公演にならないのは当然として、入場順は運任せであり、毎度同じ席に座れないどころか碌に見えない立ち見の三列目なんて日もある。 それでも劇場内に入れれば何かしら新しい発見や感動の種はあり、それが客も演者も嵌ってしまって抜けられなくなる理由の一つではある。
聴衆にどれだけ伝わったかは分からないが、少なくとも私は腑に落ちた。
アイドル学会そのものには肯定的要素と言うか、私の好奇心を満たすようなものは無かった。
質疑応答の時間にも議論を深めるためのそれは少なく、自説の開陳と混ぜっ返しの独りよがりのものばかり。
稲増龍夫と濱野のやり取りは懐古談として面白く聴けたので、要は持ち札の切り方の巧拙だと思う。
何か興味を惹くテーマが取り上げられれば、また足を運ぼうと思う。
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