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❻23時23分

私の最寄り駅から、貴方のアパートまで行くための上り最終電車の時間。
この時間を超える前に貴方からの誘いが来ることを毎日のように期待していた。

ゲームは終わっても、連絡はいつも私からだった。
それが2人の前提として根付いていたから。
だから私はまだ終電に間に合う22:00頃に、貴方へメールをすることが多かった。

貴方はいつも、私の気持ちを先回りして、会いたい時に、呼びつけてくれた。あくまでも、私が誘われたという事実を作って、私が貴方の元へ行きやすいように誘導してくれた。

「何でそこにいるんですか?」
「そこって…。何処だか分かってるの?」
「ここじゃないなら、どこにいても同じです」

当時はまだ実家に住んでいたから、貴方の家に行くには1時間30分以上かかる。

早朝からバイトを入れている日も多かったので、貴方の家に行っても、一緒に居られるのは5時間くらいしかない時もあった。

それでも、私達は求め合った。
時間が許す限り、幾度も…。

食べることも、寝ることも、貴方と抱きしめ合うためなら平気で犠牲にできた。
決して健康的ではなかったけれど、周りの友達はみんな、綺麗になったと、褒めてくれた。
貴方の瞳に写る自分が、少しでも可愛くいられることを私は切に望んでいたし、実際にあの当時の私は女として1番可愛かったのではないだろうか。

貴方は、私を抱く時、これでもかと言うくらいに
「可愛い」
と、褒める。私を喜ばせようとしているのではなく、本心でそう言ってくれていることが、しっかり伝わってくるから、その言葉の虜になった。
普段、可愛いなんて言われることはほとんどなくて、
どちらかというとカッコイイと褒められることが多かったので、貴方といると、自分が女の子になった気がして、舞い上がった。

貴方がくれる時間も、言葉も、キスも、全てが夢の中のようだった。

もう二度と手に入らないそれらの要素は本当に夢と化してしまって、私は今でもその夢から抜け出せないでいる。

読んでくださるだけで嬉しいので何も求めておりません( ˘ᵕ˘ )