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【そのさよなら、代行します テレ東ドラマシナリオ応募】母親と縁を切りたい女と伝える男、「さよなら」を代行する理由

※先日あらすじのみ投稿しましたが、脚本を追記したものを再投稿します。なお、前回の投稿は紛らわしいので削除しました(スキを押してくださった皆様、申し訳ありません!)

登場人物

高木:さよならメッセンジャー業を営む男。
丸尾ミサト:依頼人。「母親を縁を切りたい」と高木に依頼する。
丸尾由紀子:ミサトの母。夫はミサトが幼い頃に亡くなっており、女手ひとつでミサトと妹を育てた。
丸尾アミ:ミサトの妹。非行に走り、未成年時に飲酒運転で事故死。

あらすじ

 依頼人に代わって別れを告げる「さよならメッセンジャー」業を営む高木。
 今回の依頼人は「母親と縁を切りたい」と言う丸尾ミサト。「母とは昔から不仲。この度結婚が決まったが、これを機に完全に縁を切りたいのでその旨伝えて欲しい」とのこと。
 高木はミサトの実家へ行き、母親に伝言を伝える。母からミサトへの伝言をあずかり、家を後にする。
 完了報告&報酬の受け渡しのため、高木とミサトは再び会う。母からの伝言を聞き、動揺するミサト。そこで高木は、「ところで、あなたはあとどのくらい生きられるんですか?」と尋ねた。
 ミサトは病のため余命わずかで、母親にそれを隠すために高木にさよなら代行を依頼した。
 高木は「友人の死をきっかけにさよならメッセンジャーを始めた、ミサトが友人と同じ薬を飲んでいるのを見て、ミサトの病に気づいた」「母親はミサトの嘘に気づいている」と語る。
 「どうせ死ぬなら、残された時間を有意義に使った方がいいんじゃないですか?」という高木の言葉を聞いて、ミサトは母に会いに行くと言い残し、店を去る。
 残された高木は、カバンから薬(ミサトと同じ薬)を取り出し、飲む。
「どうせ死ぬなら、時間を有意義に使いたいもんだ」そうつぶやいた高木の元へ、次の依頼人が現れ、商談が始まる。

シナリオ

シーン1:高木とミサト、カフェにて

 ミサト、コップの水を一気に飲み干し、ため息。そこへ高木が登場。

高木「丸尾さんですか?」

ミサト「そうです。あなたが、さよならを代行してくれる人?」

高木「はい、高木と申します。この度はご依頼ありがとうございました」

 高木は席に座ったあと、「さよならメッセンジャー」と書かれた名刺を差し出す。

高木M「『さよならメッセンジャー』。さよならを言えない事情を抱えた依頼人に代わり、別れを告げるのが俺の仕事だ」

高木「ええと、そちらは?」

 高木、ミサトの手元に目をやる。ミサト、慌てた様子で手元の何かをカバンにしまう。
(※シーン3への伏線。カバンにしまったのは薬。冒頭の水を飲むシーン→薬を飲んでいた。この時点で薬映すとオチがバレてしまうかもしれないのでここでは映さず、シーン3に回想シーン入れて実は薬を飲んでいたことがわかる感じにするのがいいかと思っています)

ミサト「あぁ、これはなんでもないの。ところで、お金を払えばどんなさよならでも請け負ってくれるのよね?」

高木「ええ。今回のご依頼は、『母親を縁を切りたい』とのことですが」

ミサト「そう。これ、実家の住所。ここに母がいるから、私の代わりにさよならを伝えて欲しいの」

 ミサト、実家の住所と母の名前(丸尾由紀子)が書かれた紙を高木に向けて差し出す。

高木「わかりました。ちなみに、差し支えなければ理由をお聞きしたいのですが」

ミサト「今度、結婚するの。相手には、家族はいないって伝えてある。母とは今もほとんど連絡を取ってないんだけど、完全に縁を切りたいのよ」

高木「僕は、依頼人が後悔するような依頼は受けない、というポリシーがあるので、念のため確認ですが……本当に、縁を切っていいんですか?」

ミサト「……母とは、昔から仲が悪くて。幼いころに父親が事故で亡くなったのよ。で、母は女手ひとつで子育て……と思いきや、あの人、一人じゃいられない性格でね。
父が亡くなってしばらくしたら男を家に連れ込んで、そこからはもう最悪。母は彼氏のご機嫌とりに忙しくて、私と妹をほったらかし。生活費も出してもらってたみたい。私はそれが本当に嫌で。母とベタベタして私たちを邪魔者扱いするその男も、一人で生きていくことのできない弱い母も」

高木「妹さんがいらっしゃるんですね」

ミサト「今はもういないんだけどね。死んじゃったの。中学に上がったころに見事にグレちゃって。学校にもろくに行かないで夜中まで遊び歩いてて、何日も家に帰ってこないこともあった。で、飲酒運転で派手に事故って即死。最悪でしょ?」

高木「それは、ご愁傷様です」

ミサト「そしたら、母がものすごく落ち込んじゃって。男にかまけて娘をほったらかしてたくせに、勝手だなって思ったけど、見てたらなんだかかわいそうになってさ。『親より先に死ぬなんて、親不孝な奴だよね』って何気なく言ったの。そしたら、『妹に対してそんな言い方ないでしょ!』ってキレだして。そこから大ゲンカ! そこでもう完全に無理! ってなって。高校卒業してすぐに家を出たの。電話番号もメールアドレスも変えて、住所も知らせてない」

高木「それで、結婚を機に完全に縁を切りたいと……。住所も知らないということは、お母様のほうからは連絡が取れない状態なんですよね? なのにわざわざ、さよならを伝えるんですか?」

ミサト「念のためよ。だから、私の連絡先も絶対に教えないで。もう決めたの。気持ちは変わらないし、後悔もしない。お願いできる?」

 高木、ミサトの目をじっと見つめたあと、うなずく。

高木「わかりました。そのさよなら、代行しましょう」

シーン2:高木と丸尾由紀子(ミサト母)、実家にて

 荒れた家の中を見回しながら、テーブルに座る高木。ミサトの母、丸尾由紀子はコップ(水)を出し、向かいの席について、ぶっきらぼうな様子で高木に話しかける。(由紀子は服装てきとう、髪もボサボサで身なりに気を使っていないようす)

由紀子「それで? ミサトの代理で来たっていうけど、あんたは何者なの?」

高木「わたくし、こういう者です」

 高木は『さよならメッセンジャー』と書かれた名刺を差し出す。

高木「依頼人に代わり、さよならを伝える。それが、私の仕事です」

由紀子「へぇ? まともな仕事じゃなさそうね。まぁいいわ。ミサトとはもうすでに絶縁状態なのよ。連絡先も知らないし、向こうから連絡が来ることもなかった。なのにわざわざ人をよこすなんて、何かあったの?」

高木「ミサトさんは、ご結婚されるそうです。相手方には家族がいないと伝えてあるので、今後あなたとは一切関わりたくない、と」

由紀子「あの子が結婚? 本当に……? そう、あの子がねぇ……」

 由紀子は少し驚いたあと、ぼんやりと無表情で遠くを見つめ、沈黙。その様子を見ながら高木は、

高木「ミサトさんとは、あまり仲がよろしくなかったとか」

由紀子「まぁ、そうね……あの子、あなたにどこまで話したの?」

高木「お父様が早くに亡くなって、お母様とも昔から不仲だった。妹さんが亡くなられた時に大ゲンカをして、そこから絶縁状態だと」

由紀子「あぁ、ひととおり話したのね。じゃあ、私が男を連れ込んでどうこう、なんて話もしたんじゃないの?」

高木「ええ、まぁ」

由紀子「ミサトもアミも……あ、アミっていうのは妹のほうなんだけど、2人とも、あの男のことを嫌ってたからね。まぁ、あの子たちにとっては赤の他人だから、仕方ないっちゃ仕方ないんだけど」

高木「お子さんを2人も抱えて生きていくのは、大変なことですからね。1人じゃ耐えられないことだってあるでしょう」

由紀子「あの時代は、小さい子どもを2人抱えた女を雇ってくれる場所なんて、ほとんどなかった。この辺は田舎だから特にね。
やっと見つけた仕事も、朝から晩まで毎日働いても、自分一人食わせるのがやっと。こんな状態じゃまともに学校にも行かせてやれない。いっそこの子たちを殺して私も死のうか? なんて考えたこともあった」

高木「なるほど。それで、生活費を援助してくれる男性と一緒になった、と」

由紀子「そう。娘を殺すよりはマシでしょ? 非難してくる奴もいたけど、どうでもよかった。だって、そいつらは金なんて出してくれない。私たちのことを助けてくれないのよ。私は娘たちに不自由な思いをさせたくなかった。そのためなら、どんな手でも使おうと思ったの」

高木「でも、ミサトさんはそのせいで寂しい思いもされたようですが」

由紀子「そうね……かわいそうなことをしたと思ってる。ミサトにも、アミにも。アミが不良とつるんで遊び歩くようになったのも、知らない男が入り浸ってる家にいたくなかったなんだろうなって。アミが死んだのは、私のせいでもあるのよ。子どもを守るために好きでもない男に媚売ってたのに、結局そのせいで子どもを失うことになって。
アミが死んでからの私は、精神的に参ってしまってね。そんな私を面倒に思って、男は逃げてった。励まそうとしてくれたミサトとも、喧嘩をしてしまって」

高木「『親より先に死ぬなんて親不孝な奴だ』と言ってしまった、と」

由紀子「そう。アミに対して申しわけないと思っていたから、親不孝な奴、って言葉にカチンときてしまって……」

 由紀子、ふと考え込み、黙り込んで遠くを見つめる。高木、その様子を訝しがりながら、

高木「あの、どうかされましたか?」

由紀子「いえ、あの……ミサトは、元気なのよね?」

 突然話題が変わり、すこし驚いた様子で言葉を返す高木。

高木「え? はぁ、一度お会いしただけですが、特に変わった様子はありませんでしたが」

由紀子「そう……。それなら、いいんだけど。あの子は、辛いことを一人で抱え込むところがあるから」

 由紀子、何かを考えている様子で黙り込む。高木は席を立ちながら、

高木「では、私はそろそろ」

由紀子「あの! ミサトに伝えていただけませんか? あなたのことは、親孝行な娘だと思っている、と。もしもこの先、何があったとしても」

 由紀子の目には涙が浮かんでいる。高木はじっと由紀子の目を見つめたのち、口を開く。

高木「わかりました。必ず伝えます」

シーン3:高木とミサト、カフェにて

 カフェの席で向かい合わせに座る2人。高木は紙を差し出す。

高木「お母様に、さよならを伝えてきました。こちら、完了報告書です。お母様のサインもいただいています」

ミサト「ありがとうございます。じゃあ、報酬をお渡ししますね」

 ミサト、封筒をカバンから出し、高木に差し出す。

高木「ありがとうございます。それと、お母様から伝言をあずかっています」

ミサト「……何?」

 怪訝な顔のミサト。

高木「『あなたのことは、親孝行な娘だと思っている。もしもこの先、何があったとしても』とのことです」

 ミサト、その言葉を聞いて固まる。動揺を隠せない様子で、無言になる。コーヒーを一口飲み、ため息をつきながら、つぶやく。

ミサト「そう……」

 高木、その様子をじっと見つめながら、ミサトに聞く。

高木「ところで、あなたはあとどのくらい生きられるんですか?」

 驚いた表情で高木を見るミサト。しばらく見つめたあと、

ミサト「……どうして、それを?」

高木「あなたと同じ薬を、友人も飲んでいたんです」

(回想シーン・始)
 シーン1の冒頭を別視点で。高木との待ち合わせ前にカバンから薬(見た目が特徴的なわかりやすいもの。錠剤ならシートが赤いとか、粉薬なら包装紙の模様が特徴的、など?)を取り出し、水で飲む。手元には薬の袋or錠剤のシートが残っている。
 高木が現れ、挨拶して席につく(ここはセリフのやり取りなしでいいかなと思ってます)。

高木「ええと、そちらは?」

 高木、ミサトの手元にある薬の袋or錠剤のシートを見る。ミサト、慌てた様子でそれをカバンにしまう。

ミサト「あぁ、これはなんでもないの」
(回想シーン・終)

ミサト「そう……ちなみに、お友達はその後どうなったの?」

高木「……おととし、亡くなりました」

 ため息をつくミサト。少し気が抜けた、ほっとしたような表情になる。

ミサト「そっか。私は、もって一年、早ければ数ヶ月。医者にはそう言われたわ」

高木「結婚するというのは?」

ミサト「嘘よ。もうすぐ死ぬのに、するわけないじゃない」

高木「なぜ、わざわざお母さんに嘘を?」

ミサト「妹が亡くなった時、母はひどく落ち込んでしまったの。食事も食べず、眠りもしないで、一日中妹の遺影を見つめて泣いていたわ。あんな状態には、もうしたくないの」

高木「だから、病気のことを隠すために、嘘を伝えた……」

ミサト「母のことは嫌いだったけど、私や妹のことを大事に思ってくれているのは、気づいてた。母は、『女の幸せは結婚して家庭を持つことだ』って考える古いタイプの人間だから、結婚して幸せに暮らします、だからもう連絡を取らないでって言えば、納得してくれると思って」

高木「本当にそれでいいんですか?」

ミサト「いいのよ。あなたに依頼した時点で、もう決意は固まってたの。私はもう、母とは会わない」

 しばし沈黙。

高木「少し、僕の昔話を聞いてもらえますか?」

ミサト「いいわよ、何?」

高木「僕の友人……あなたと同じ薬を飲んでいた友人の死がきっかけで、僕はさよならメッセンジャーを始めたんです」

ミサト「え?」

高木「友人には婚約者がいましたが、病気のことを隠していました。もともと遠距離だったので、『仕事が忙しい』なんて嘘をついて、会う頻度を減らしつつ、治療を進めていたんです。でも結局、治らなくて。
亡くなる直前、彼に呼び出されました。そして、言われたんです。『彼女に、他に女が出来たからもう会う気はないと伝えてくれないか?』と。」

ミサト「病気のこと、伝えなかったの? どうして?」

高木「僕も彼に聞きましたよ。伝えなくていいのか? って。そしたら、『結婚まで考えた男に死なれるなんて辛いだろ。それなら、ひどい男だと恨まれたほうがいい』と言ったんです」

ミサト「そんな……」

高木「彼が亡くなったあと、彼女にそのことを伝えに行きました。彼女は相当怒ってましたよ。彼をここに連れてこい、連絡先を教えろ! って。当然ですよね。
彼女はずっと泣きながら怒っていました。どうして? と何度も言って。でも、僕は彼が死んだことを言わなかった。彼と約束したからです」

 しばし沈黙。

ミサト「……彼女はそのあと、幸せになれたのかしらね」

高木「さぁ。彼女がどうなったのかは、知りません。僕は今でも、あの時の自分の行動が正しかったのかどうか、わからない。でも少なくとも、友人の希望を叶えることはできた。それは意味のあることなんじゃないかな、と。さよならメッセンジャーを始めたのは、その時からです」

 考え込む様子のミサトに向かって、高木は言う。

高木「さよならを言えない人の代わりにさよならを伝えるのが、僕の仕事です。でも、あなたはまだ生きている。さよならを言えるじゃないですか」

ミサト「でも、私が死ぬことを知ったら、母がまた悲しむことになるのよ? 私まで親不孝な娘になるわけにはいかない」

高木「『親より先に死ぬなんて、親不幸な奴だ』。この話が出たとき、お母様は動揺されてましたよ」

 黙るミサト。ミサトをじっと見つめる高木。

高木「お母様は、あなたの嘘に薄々気づいているんじゃないですか? そして、あなたもそのことに気づいている」

ミサト「それは……」

 動揺を隠せない様子のミサトに、高木は言い放つ。

高木「人はみんな死ぬんだから、親より先か後かなんて大した問題じゃありませんよ。どうせ死ぬなら、残された時間を有意義に使った方がいいんじゃないですか?」

 しばし沈黙ののち、長いため息をつくミサト。

ミサト「……人はみんな死ぬ。たしかに、そうね」

 ミサト、ふっきれたような表情で、

ミサト「母に会うわ。どうせ死ぬんだから、最後にケンカでもしてくるか」

 ミサト、荷物を片付け、立ち上がる。

ミサト「ありがとう」

 そう言って立ち去るミサト。
 高木、ミサトが店の外に出たあと、カバンからミサトと同じ薬を取り出し、口に入れ、ごくごくと水で飲み下す。

高木「どうせ死ぬなら、残された時間を有意義に使いたいもんだ」

 ぽつりとつぶやく。そこへ、次の依頼人が現れ、声をかけてくる。

依頼人「あの、さよなら代行業の方ですか?」

高木「そうです。ご依頼ありがとうございます。どうぞ、こちらへ」

 向かいの席に座るよう促し、依頼人が席につく。2人で会話している(セリフなし)シーンで、<完>

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浅草出身のフリーライター。人物インタビューや店舗取材など執筆|イラスト、読書、純喫茶めぐりが好き|おさんぽWebマガジン「てくてくレトロ」運営→https://tekutekuretro.life |お仕事の依頼は→https://2erire7.com/toiawase
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