見出し画像

Arselectronica(アルスエレクトロニカ)2020をふりかえって。 Digital Community部門を中心に

9月26日にUNIBAさんにお呼びしていただいて、ARSOMOROというイベントに呼んでいただいた。

このイベントは毎年アルスエレクトロニカに社員を派遣をしているUNIBAさんが、アルス好きな人が集まって、デジタルアートの未来や、クリエイティブについてカジュアルに議論を交わす場だ。

当日の様子はYoutubeでアーカイブに残っているので、気になる人は是非見てもらえたらと思う。

不確実性を恐れず適応していく。それは、今年のアルスエレクトロニカから感じる魅力の一つです。小さな町で生まれたアートとテクノロジーの祭典、アルスエレクトロニカ。毎年、既存のアイデアでは解けないような難問が数多く提示され、私たちはそれらに魅了され続けてきました。2020年、祭典はこれまでと異なった形態で開催されます。各国に散らばった"庭"によって。
これまでと異なる体験と魅力を味わうために、私たちはこの祭典について、より多くの探究をしなければなりません。そして、そこで待ち構えている新たな難問たちを、より多くの人と考えたいと思っています。
アルスエレクトロニカを面白がる人種、アルスオモラーたち集まれ。
【出演者】
岡本 拓(Taku Okamoto)
加藤 翼 (Tsubasa Kato)
ノガミ カツキ(Nogami Katsuki)
菊地 玄摩 (Haruma Kikuchi)
村穂 紀成 (Cazunari Muraho)

このイベントに参加するきっかけになったのは、2018年のアルスエレクトロニカに100BANCHから視察に行った時のレポートだった。

これをUNIBAの村穂さんが見つけてくださって、DMを送ってもらえたから、文章に残しておくといいことあるんだなぁと!

そもそも、アルスエレクトロニカって何?って人は上のレポートを先に読んでもらえたら嬉しい。

簡単に言うと、アルスエレクトロニカフェスティバルは、世界でも有数のメディアアートを中心とした芸術・先端技術・文化の祭典だ。

一言で定義づけるのが難しいこのイベントは、トレーラー動画を見てもらうのが一番早いだろう。

今年はCOVID-19の影響があり、通常なら海外から多くの著名なアーティスト、研究者たちがリンツに集結するのだが、今年はそれが叶わずセッションは全てオンラインで開催され、展示は最小限に限られた。

その一方で、今年ならではの取り組みとして世界中の都市に『Garden』という形でのサテライトイベントが120を超える拠点で開催された。

画像1

各都市の様子の動画

東京では、Rhizomatiksの齋藤精一さんを中心に『TOKYO GARDEN』が企画され、文化庁メディア芸術祭と連携する形で展示とイベントが企画された。

特に、トークは日本のメディアアート界を牽引して来た面々のぶっちゃけ話が満載なので、こちらもチェックしてもらいたい。

さて、前置きが長くなったが、今回のトークイベントで僕が焦点を当てて話をしたのが、Prixというアルスエレクトロニカで最も栄誉あるGolden Nicaを争うアワードの中でのDigital Community部門についてだった。

今年のPrix募集部門

Computer Animation
Digital Communities 
Interactive Art + 
u19 – create your world
Visionary Pioneers of Media Art

普段コミュニティをデザインしたり、マネジメントする仕事をしている中で、メディアアートの祭典のテーマの1つにコミュニティが入っている事の意義について考えたい。

Digital Communityでの募集は、新しいものではなく2004年から2014年まであったものが復活した形だ。Wikipediaに掲載されているDigital Communityの受賞作は以下の通り

2004 – Wikipedia and "The World Starts With Me"
2005 – "Akshaya", an information technology development program in India
Distinction: Free Software Foundation (USA) and Telestreet – NewGlobalVision (Italy)
2006 – canal*ACCESSIBLE[18]
Distinction:
Codecheck (Roman Bleichenbacher CH)
Proyecto Cyberela – Radio Telecentros (CEMINA)
Honorary Mentions:
Arduino (Arduino)
Charter97.org – News from Belarus
CodeTree
MetaReciclagem
Mountain Forum
Northfield.org
Pambazuka News (Fahamu
Semapedia
stencilboard.at (Stefan Eibelwimmer (AT), Günther Kolar (AT))
The Freecycle Network
The Organic City
UgaBYTES Initiative (UgaBYTES Initiative (UG))
2007 – Overmundo[19]
2008 – 1kg more[20]
Distinction: PatientsLikeMe and Global Voices Online
2009 – HiperBarrio[21] by Álvaro Ramírez and Gabriel Jaime Vanegas
Distinction:
piratbyran.org[22]
wikileaks.org[23]
Honorary Mentions:
hackmeeting.org[24]
pad.ma[25]
Maneno
femalepressure.net[26]
metamute.org[27]
ubu.com[28]
canchas.org[29]
feraltrade.org[30]
flossmanuals.net[31]
wikiartpedia.org[32]
changemakers.net[33]
vocesbolivianas.org[34]
2010 – Chaos Computer Club
2011 – Fundacion Ciudadano Inteligente[35]
Distinction:
Bentham Papers Transcription Initiative (Transcribe Bentham)[36] (UK). See also the project's Transcription Desk[37]
X_MSG[38]
2012 – Syrian people know their way[39]
2013 – El Campo de Cebada by El Campo de Cebada (ES)
Distinction: Refugees United by Christopher Mikkelsen (DK), David Mikkelsen (DK)
Distinction: Visualizing Palestine by Visualizing Palestine (PS)

2004年にこの部門ができたきっかけは、1990年代のインターネットの登場によりWikipediaやCreative Commonsを初めとしたオンラインを中心にしたネットコミュニティの活動が活発になり、研究対象としての関心が高まったことにある。

2014年で一度Digital Communityの募集は終わり、これまでの活動をふりかえるレポートが書かれているので、興味がある方はこちらも参照してもらいたい。

Digital Communityの分野で募集をされるのは、

「芸術的かつ社会的な活動形式で価値創造をし、
コミュニティの構築と発展に寄与し、
よりオープンでインクルーシブな
市民社会に繋がるプロジェクト」

プロジェクトの形式は問われず、個人でも団体でも企業でも応募が可能だ。

画像2

審査員を務める5人からは、プロジェクトのテクニカルな部分よりも、それ自体の社会的な意味や、それを実施する主体のモチベーションや理由への言及が多く。また形式としてのアート性が大事にされる事が語られていた。

今年の受賞プロジェクトは以下の15のプロジェクトでした。個別の詳細についてはWEBサイトから確認してもらいたい。

画像3

中でもグランプリに当たるGolden Nikaを受賞したのが、香港の民主化抗議活動を扱ったプロジェクト "Be Water by Hongkongers"だった。

画像4

「Be Water」は格闘技スターのブルースリーの有名なことわざだ。形も形もなく、あらゆる状況に適応できるということを指す。この哲学は最近、香港での抗議運動に採用された。抗議の最新の波は、領土の司法的独立を脅かした引渡法案に対応して2019年に始まった。現在、抗議運動は、民主主義の自由を守るためのデジタル活動の利用に関する事例研究となっている。

香港での民主化運動はそれ自体が自立分散的なコミュニティの形をとり、名前も知らずマスクで互いの顔さえ知らない人々同士が協同してムーブメントを起こしていく。

またデジタルツールが多用され、Telegramのような高度に暗号化されたメッセージツールや、アニメやオタクカルチャーのレンズを通じて作られる抗議メッセージ、そこから生み出されるネットミームの数々。

まさに現実世界と仮想世界の融合、リアルな政治へのカウンターとしてのデジタルコミュニティの力がそこにはあった。

画像5

Credits:
All Hong Kong protesters involved in the struggle to safeguard democracy
Foto: Photo lok1126, Designed by Eric Siu


個人的にはアルスエレクトロニカが、ある種の政治的なセンシティブな領域に対しても恐れる事なくGolden Nikaを授与する姿勢にも敬意を感じた。

日本の芸術祭で同じような評価がされるかと思うと、まだ数年はかかりそうだと思ってしまう。

今回のPrixの発表に当たって、審査員からのステートメントが僕には印象的だった。

「大多数の作品がパンデミックの発生前だったとしても、COVID-19の影響による世界規模でのロックダウンは必然的に提出作品への眼差しに影響を与えた」

「意味とは「存在」を共有し合うこと。それ自体である」

「多くのプロジェクトは課題解決への野心を通してではなく、ユーモアや遊び、ありうる未来の形への想像力を通して意義深いものであった」

「特筆すべきことに、技術に関する議論は多くなかった。… デジタルメディアは生活の一部になっている」

「コミュニティが社会変革の原動力であり、コレクティブアクションと変化を導き、我々に世界を異なるレンズを通じて理解し、公への参加、連帯、絆、共通ビジョンの大切さを教えてくれる」

「アートは私たちの社会を進化させる力を宿し、人々を挑戦的で、ドラマティックで、圧倒的なアイデアや課題に取り組む背中を押す」

コロナという形で、私たちは意図せず多きな時代の変革期に落とされた。その中でのコミュニティとアートの意義はますます重要になるのでないか?

ウィルスという形で毒を内在化して、アーティストは入れ子構造になった社会の解決不可能なメビウスの輪に気づき始めている。

アルスエレクトロニカという場は、それに対して新しいシステムを創造できないかと葛藤する仲間が集まる場。

そしてそれはテクノロジーが主導するのではなく、体温が通った人間が中心にある。

だからリンツという街はいつでも帰りたくなる場なのかもしれない。